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夜空から落っこちた
手作りの翼は
壊れてしまった
膝小僧を擦りむいた
もう風を遡ることは出来なくても
もう雲をつかむことはできなくても
もう衛星軌道にはのれなくても
膝小 ....
悲しいほどの平和
それでも 涙は流される
カラスの鳴き声は 相対的に風に流れて
歌になったり 罵声になったり
鉄の扉を閉ざして
こころを磨いている
金属の鏡のように 水晶の玉の ....
僕はワンカップを片手に
車窓に体寄せていた
電車の外は雨らしく
ぱたぱたと打ち付ける雫が
声なき声の模様を描き僕を飾る
ざわめきの静寂に叫びを埋めて
引きずる体の亀裂を紐で縛って
....
青い空に
浮かぶ雲は
他にやることもないから
特別にゆっくりしている
なんの充実感もない
無益な時間を消費してるだけだ
一瞬は永遠につながっている魔法
雲よ
あなたは
い ....
小さな掠り傷だらけの心は
胸にしまうには息苦しい
白日へ晒すにはとうてい醜い
何度もごみ箱に捨てかけた
なにも感じなくなればいい
心に{ルビ彩=いろ}などいらない
その度に悪 ....
曖昧な態度のままで察し合うのが自然
と言葉で明示することもなく
顔や声音
目線や肢体の所作で流動的に日常をやり過ごすこと
に疲れもせずあなた烏賊のよう
嫌い
大嫌い
烏賊は好きだけどあな ....
うすらさむい肌に
あなたがのったとき
わたしはまだ女ではなかった
寝返りの襞に言葉が沈み
朝陽に産毛が焼かれると
夥しい嘘が
たった一枚の真実に包まれて寝転がっていた
あかる ....
とぐろを巻いていた竜が
私に向かって来たとき
私は、白いガーベラの束を右手に掴んでいました
空は白く濁っていて
地面は、乾燥し、砂の美しい模様が遠くの方まで続いていました
左斜め上の方から、 ....
チクタク チクタク 柱時計が
ゆがんだ時を刻み
マネキン人形が ほほえみかける
枯れた花一輪が テーブルの上に
何気なく置かれ
リモージュの コーヒ ....
早すぎた朝の向こうに夜があるように
遅すぎる夜の向こうに朝があるように
光に狂った雪街の景色を
僕たちはビルの屋上から見下ろしている
それは何の不幸でもなかったのに
苦い思い出としていつの間 ....
子供たちはそれぞれに武器を手にして、頭を押さえつけてきた街の中に飛び出していった、程なくいくつもの銃声がこだまする、男の声、女の声、年寄の…さまざまな悲鳴がビル街を跳躍して夜空の黒の中へ消えて ....
冬の光に抱かれて
こくり と 眠るように
夢の浅瀬を渡るように
用事はすっかり忘れ
身ひとつ
見知らぬ風景
懐かしい街を往くかのように
身を切る冷たさ
かじかむこころ魅かれるま ....
痛む目頭を押さえ
溢れそうな感情を抑えている
救いは目に入らない
意識が捕らえたがるのは
真面目に選ぶ事も無い悲しみや焦り
何故?
どうして、
繰り返され ....
糸をつむぐ
それはかつて
繭だったものたち
それを産んだものは蚕という虫
それを育んだものは桑の葉
それを繁らせたものは桑の木
ふるさとを発つ時
小さなかばんに
宮沢賢治の詩集と
....
大樹が葉を落とした夜に
大地は不在だった
葉は一斉に宇宙の広がりの彼方へ
解き放たれていった
神が啓示を下した朝に
人間は不在だった
鉱物たちは啓示に共鳴し
正しい解釈で構造を置 ....
もちいくつ?
{ルビ価値可知=カッチカチ}の表面が割れて
どろり中身があふれ盛り上がり膨らんで――
あといくつ餅を食べるのか
あといくつ正月を迎えるのか
一生分の餅をざっと数えて
....
ストロベリーショートケーキな
エクトプラズム
ムキムキに割れた腹筋の
エクトプラズム
ネバネバ挽き割り納豆な
エクトプラズム
全身餡子で覆った伊勢名物の赤福な
エクトプラズム
重症の潰 ....
祈りと願いに摩耗した
己の偶像が神秘の面持ちを失くす頃
始めて冬の野へ迷い出た子猫は瞳を糸屑にして
柔らかくたわみながら落下する鳥を追った
薄く濁った空をゆっくりと
螺旋 ....
金木犀の花を瓶に入れ ホワイトリカーを注ぐ
ひと月ほどして 香りも色も酒に移った頃
金木犀の花を引き上げる
その酒は 甘い香りをたぎらせ 口に含むとふくよかな広がりを持つものの まだ ....
庭の柴木の陰に
たくさんの夜がこぼれていた
薄い産毛の生えたまだ若い夜から
硬く曲がった血と血の夜から
とりどりの夜が
折れて重なる か細い枝の隙間に
埋まっていた
空の低いとこ ....
帰るべき土地などあったのだろうか
求めるべき栄光などあったのだろうか
いま一年が黒い太陽のように
水平線に沈もうとしている
呼び止める声など一つもないのだから
黒い太陽とともに沈んで ....
祖母の喫茶店では
スティックコーヒーを客に出す
食事のメニューは
近くのベトナム料理店のものだし
自慢の紅茶はどこか酸っぱい
ゲートボール日の店番は私
お客さんは足の悪い染吉さんだけ
....
捨てられた枕木の朽ちた裏側
温かく湿った光の無い世界で
無数のイキモノが暮らしていた
姿は見えないが互いの蠢く気配を感じながら
ある日ひとりのナメクジとひとりのミミズが行き当り
互いの粘 ....
忘れ去られた思い出を戸棚の中から取り出してじっと見つめる。
淡い色に変色したノートや書籍。
どこの国の物か分からない人形。
出し忘れた葉書。時を刻まなくなった時計。
遠い記憶 ....
手で
顔を覆って
神に祈りたくなる
Oh my God
私は二人いる
犯して
裁いて
気が狂いそうだ
捨てられた猫のために
いったいいくつの嘘が必要だろう
きみが飛んでいくほど風の強い午後
覚えたてのからだに
バターのようにしみた嘘
ひと晩じゅうかけて
愛をはがしていく
....
胃が強い前田は
葛西と対決するために
山道へ向かった
ロバを乗りこなしても
山道は遠かった
前田のルーツは鰓で
魚かもしれなかった
渋い顔をしながら
葛西と対決するために
ロバに乗っ ....
壊れたテレビが電波を送る
黒い雨は誰が降らせたの?
白い涙は何て言っているの?
幸せそうな笑顔ばかり見たら
トラブル心に繋ぐ物が無い
スイッチが届かなくなったのは
世界 ....
本と話をしている女性が居た。
約束の時間まではまだ時間がありあまってる。
暇つぶしに何となくの気まぐれで入ったお店で、段ボールにトゲトゲした字で書かれた横書きの「大森靖子」の文字がなぜ ....
生活のどんな些細な道行きにも
液状化した死者の本質が流れている
俗なる生活が聖なる死者と
次元を超えて互いを平均しようとする
人は墓参や供養という形で
聖と俗との架け橋を往来する
人はまた ....
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