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{引用=水辺の仮庵}
月は閉じ
口琴の瞑る仕草に川の声
白むように羽ばたく肌の{ルビ音=ね}の
ふくらみこぼれる光は隠れ
ふれて乱れたこころの火の香
探る手をとり結んだ息に
ふりつむ{ル ....
この裡はとっくに爛れて
痛みのない恋をしている
来ない春
燃え上がるほどの心が残っていない
寒寒と炎が
蒼く上っている
雪は身じろぎもせず降っていた
無人駅のホームはすでに雪で埋め尽くされ
その明るさはほんのりと
ともし火のように浮かんでいた
ストーブを消し、鍵を閉める
無人駅の除雪番からの帰りしな
積 ....
{引用=冬の髪の匂い}
雪の横顔には陰影がある
鳥は光の罠に気付かずに
恐れつつ魅せられる
歌声はとけて微かな塵
雪はいつも瞑ったまま
推し測れない沈黙は沈黙のまま
やがてとけ
かつて ....
つらつらと つららのことをおもってみていた
軒先に根をはやし
重力に逆らいながらも
きりりと尖ってうつくしい
冬がこしらえた期間限定のその造形は
猫とじゃれたあと
うつらうつらしているうち ....
晴れた日に
息子と二人で海を見にゆく
私の背などとうに追い越して
何食わぬ顔をして
乱反射する水面の光を
キラキラと浴びているやつだ
いつの間にか
通過する季節を跨いできたね
海に突き ....
水を入れ替えるのを忘れた
花瓶だったろうか
金魚鉢だったろうか
お仏壇の茶湯器だったかもしれない
いずれにしても罪深く
自己嫌悪を覚える
最近はこんなことばかり
やることなすこと ....
空に湖のある場所に引っ越してから
薔薇は世話が大変だと知った
この土地は気にいるかな君は雨が好きだから
素直な枝と同じに左右に分かれる道があった
僕たちはやがてはなればなれになり
優しく ....
でも わたしたちは
見たかった
泡の果て
像の裏
種子のはじける刹那
言葉も 体も
役目を終える
意味も理由もなく
世界がやって来る
やって来て 去っていく
必然の ....
明日
空は雪と一緒に
枝は小さな蕾と一緒に
冬の指は
いつかの冬の指と一緒に
夜明けを待っている
ピアノ
女の子が帰ったあとは必ず
ピアノの蓋が開いて ....
時折
君の身体から星が発生した
君はいつもそれを
無造作に僕にくれた
――君は星が好きだから
そう云って微笑っていた
何故身体から星が発生するのか
君自身も知らなかった
――何故だ ....
美を探ることは、ときに醜を暴くことになる
だが、自然の中でその両方は抱擁し同化している
落葉が積もり
雑草が生い茂る
自然の中では鳥獣の糞さえ風趣の一つだ
それは人の心も同じかもしれない ....
命を結ぶって
素敵なこと だけど
つないだ手と手はいつか離れる
永遠に
キミはもう
このさみしさのトンネルを抜けて
違う世界の違う野原で自由にやすらかに駆け回っていることだろう
これ ....
もっと散歩にいきたかった
もっと抱いてあげればよかった
もっと話しかければよかった
もっと贅沢させればよかった
もっと遊んであげればよかった
もっともっと一緒に
朝に夕に
百万回名前 ....
ちいさな、迷いの、
みえない、
硬い、戸惑いのプラスチックを、
決断の、とがらせた指さきで、
突きやぶって、
それから、送信の、まるで火災報知機のボタンを、
ほんとうに、
押してしまった ....
素晴らしい朝は
岬の鴎たちが啼き交わす言葉までわかる
遠い希望は持たないほうがいい
ただ一瞬の充実が幸福論のすべてならば
そこに集力してそれが結果になる方がいい
それからが始まりだと ....
から だった
前進しようと思えば未だできたが
から だった
寝ても覚めても
あんまりからからと鳴るばかりで
もう嫌気がさしちまった
(なのに夢の空はまた
淡い淡い紅に染まり
何 ....
秋の雨が窓を打つ
静かな音の中
君の寝顔を間近で見ていた
冬の厳しさがすぐそこにあり
空気は冷たく
一向に縮まらない距離に悩んでいた
近付けば逃げるのに
留まると残念そうな顔なのは何故
....
{引用=声の肖像}
どこかで子どもの声がする
鈴を付けた猫がするような
屈託のないわがままで
なにもねだらず行ってしまう
風がすまして差し出した
果実は掌で綿毛に変わる
ぱっと散った ....
たった1。Cの寒暖差で
きみと僕のこころの隙間が
埋まらない
君と僕は似ていても
1。Cの差をゆずらない
修辞学を駆使しても水溶性の会話は
多様性の海に拡散してゆく
ノルウェ ....
寒さがやさしく悪さして
濃い霧がおおっていた
蜂のくびれにも似た時の斜交い
あの見えざる空ろへ
生は 一連の真砂のきらめきか
四つの季節ではなく
四つの変貌の頂きを有する女神の
....
寒さは
指の先から入り込み
肩へ
背中へ
そして足先へ
もう何も燃やすものがない
闇の他にはなにもない世界で
やがて闇と同化する
薄くて透けそうな
パラフィンカーテンよ
....
朝
僕たちの半分は 燃え残り
がらくたを 集めはじめた
不完全なまま 笑ったり
食べたり 愛した
頂点の すこしだけ手前で
自我をもった がらくたが
誰かのかわりに 泣きはじめた ....
{引用= 我が友、田中修子に}
時折西風が吹く
そして天使が笑ふ
するとさざ波が寄せ返し
沖を白い帆が行き過ぎる
砂に埋れた昨日の手紙を
まだ浅い春の陽ざしが淡く照らす ....
その瞳のなかに
黒と茶色の毛並みをもつ
活発な
栗鼠でも飼っているのかな?
好奇心がつぎつぎに
樹から樹へと
跳ねまわっているよ
とてもかわいらしく
とても目まぐるしく
かが ....
十月になっても初夏みたいな日が続き
小さな畑でおくらの収穫をする
母は
穏やかでなんのわずらいもない日よりだと言う
この小さく可憐で柔らかなおくらの花が
せめて実になるまでそれが続きます ....
休日は地獄耳
落下する電車の静けさ
天井からぶら下がっている
こめかみの光 カミキリの声
傾斜し続ける 声の影
ぶどう酒色に濁った季節
腕をひねり上げる
自由――自己への暴力
....
不思議であった
私の前にはいつも道があって
そこをしずしずと歩いている
ホウの葉とサワグルミの、落葉の上を
ソフトに足を進めている
まったくなんの期待もない山旅に向かったのだった
ただ、歩 ....
{引用=胡桃の中身}
感覚と本能の間
奇妙な衣装で寸劇を繰り返す二人
台詞を当てるのは
土台無理なのだ
虎はいつだって喰いたい
馬はいつだって逃げたい
やがて波打ち際
血まみれの馬は海 ....
在ることの
謎に触れたとき
ウォーターと
手のひらに
書いてみる
初めて地球を生きた日のように
その鮮烈な霊気に貫かれ
ウォーターを
感じて、感じて
独り大地を
舞い踊る
....
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