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秋の虫たち るうるう
無残に刈られた草むらの
最果てみたいな端っこで
透明になる身体
開いた扉の
まっくらやみの先を
眼をつむったわたしは見ている
....
草原を 少女が スカートの両端を持ち上げて
走っていく
いちじくの うすい皮のような
スカートの重み おかげで おパンツまる見え
いちじくの皮を 細心の注意で むく
なかから やわ ....
あー
ギター弾いて歌ってると
空っぽになるなあ
あたしの身体にサウンドホールが空くんです
寂しかったら
ここに飛び込んでおいでよ
鮮烈な響きに身を震わして
泣けばいいよ
君のこ ....
遠くまで行く事にどんな意味があるのかは知らない
知る必要もないことがたぶん僕の人生を埋めていたって
愛の不毛に踏みだす為の飛翔でさえ
保障の無い冒険のはじまりだったり
誰もぼくのじゆう ....
いのちがありすぎる
言葉はひしめきあい
ぼくは
茎のねじ曲がった花になる
おぞましい受粉をして
土を黒く染める
あなたへ
あなたへ
いま
あなたへ
寄りつけるなら
まだ見ぬ地平へ ....
東の国の光が
樹々のさやさやに濾過されて
薄いカーテンにまるく形作られる
あれらは宇宙から帰ってきた魂
風が吹くたび
わずらいから放たれて踊ってみせる
おばあちゃんのことで覚えてい ....
気がつくと
またちんちんをさわっているよ
さみしいからだろうよ
何がさみしいかというと
あらゆる人の記憶から
おのれを消し去ってしまいたいから
あらゆる人の記憶から
消え去ったあ ....
ぼくたちはいつも何処かに落ち着こうと
ぼくたちはいつも誰かに愛される為に
莫大なエネルギーをつかいながらも
それでも
せめて自分だけでも保持しようとしている
腸内フローラと循 ....
銅、リチウム、カリウム
これらの金属は
ある種の状態で
炎に炙れば燃え盛るが
緑、紅色、薄紫という風に
それぞれが、違った色合いの
火を吐き出す
情熱が
その上昇気流が
人の ....
{引用=蝶の行方}
レモン水の氷が鳴った
白い帽子に閉じ込めた
蝶はどこへいったのか
太陽が真っすぐ降る
眩い断頭台から眺めていた
あの蝶の行方
自殺した詩人
現実を消去して残 ....
何かおかしいと思うことのひとつは
庭の紫陽花のことだった
八月を迎えても その子たちは
いまだつぼみのままである
長すぎた梅雨のせいで
ウエハースはたちまち湿気り
紫陽花は許容力をはるかに ....
肩幅で生きる
肩に幅があって良かった
夏は草の履歴と
雲の墓場
ただいま
おかえりなさい
言葉が影になる
初めてできた影だ
子供たちに見せてあげよう
昨日いた犬にも見 ....
うちの取引先の
小さな町工場の社長さんは
うちの職人さんと古い友人で
入院先のベッドの上で
手書きの伝票を書いてくれる
おそらくはただ
その職人さんのためだけに
自分が書いているのだろう ....
去年の夏
海沿いの古い集落の
小さな宿に泊まった
窓から見えた自販機だけが
灯りらしい灯りで
ジュースを買いに出たとき
本当の夜を知った
すぐ近くなのに
宿の灯りが届かない
夜がこん ....
この星の何人かは
ちいさめの正方形の紙を見かけると
戦争が終わった後だというのに
戦争のせいで病み 快癒を折り紙に託しながら
亡くなった少女のことを思い出す
紙の角と角を 合わせて
鶴 ....
獲物を狙う豹のように
ギリギリで生き延びる自分で居続けたい
積み荷を待ち構える
フォークリフトのように
ボー ....
目を閉じて眠りなさい
死なないように
願いを掛ける時は
まつ毛の一本ずつを
短冊にしてみよう
流されて天に届く気がする
美しい寝顔のままなら
毒を飲むこともない世界で
明日が来るのを前 ....
{引用=散歩道}
彼女は二つの嘘を連れ歩く
いつも同じコースで
一つの嘘は人懐っこく誰にでも尾を振った
一つの嘘はところ構わず吠えたてる
どちらも夜のように瞳を広げ
油膜で世界を包んでいた ....
本当はアホのくせに
気難しい顔ばかりしてた
ああ優しい人
何も言わないで
ごはん美味しいねって言う
美味しいねって返事したら
すごい幸せそうに笑った
私なんてつまらない人間
もう生きて ....
懐かしい場所に
行きたい
ただそれだけだ
この街で
この場所で
日々遠くなっていく景色を
一目見たい
それだけ
海と
山の神社と
坂の階段にいる狐と
その角の魚屋の匂い
灯台
....
迷路のような
思考の洞窟
雨が流れ込む
蛇の目
邪なものが降ってくる
指を鳴らすと
洞窟ごと落ちるのかも
蛇腹になる
私は
指を
鳴らされるもの
でも
水は
....
どうにも目がさえて眠れないので
今日の夢をゴミ箱に捨てました
今日の夢は泣いていましたが
何も言わずにゴミ箱に蓋をしました
ひとは残酷ないきものです
ティン・マシーンを聴いていてふと
....
人にかける言葉の
優しいひとを選びたい
選んでどうするのかと
問われても明快な答えもないが
そうなんだ僕たちはそんなには曲がってはいないはず
規定するあなたがたの定規はどこまでも ....
「きょうのあなた」
昨日は 自動販売機
今日は ミルクせんべい
毎日変わる お気に入りを
クリームパンのような手で
かかえながら
まんまるくなっ ....
細かな砂利と一緒に寄せ
滑り落ちてゆく
向こう側へ
くるぶしまで濡らしては
かえすゆらぎ
見上げれば
三角形の
それぞれの頂点が
数万年の誤差で
瞬いている
土塊を捏ねる
指先に気を集め
煮え立つ熱を流し込み
ゆっくりしっかり力入れ
未定形の粘る分厚い土塊を
思い思いのまま捏ねくり回す
捏ねくるうちに不思議なこと
土塊と指先は拮抗しながら ....
海鳥の鳴く午後、羽を広げた大海はその背に輝く日差しを浴びている。
やがて訪れる闇から逃れようと必死でもがく人々が街路樹の影に潜む。
闇を好む人々が公園通りに群れをなす時、
しもべのカ ....
星屑のそれこそ屑だらけの海を泳いで
ようやく海から這い出たような
じんわり、と、重い。
私を裏返してでてきたものを
両手でかき集めて
ひとつひとつ灯の光に透かして見てみると
とてもきれいで ....
いつか街を出ていく
それはいつかわからない
いつか街を出ていく
この街を出ていく
遠いむかし
産まれ
育った
故郷を離れた日みたいに
いつか部屋を出ていく
この部屋を ....
通りすがり
とある中学校のフェンス越し
昨日からの雨で校庭は
ぬかるんだり
小さな川が流れたり
片隅に植えられた
紫陽花の葉っぱの上では
雨粒たちが
青瑪瑙の勾玉みたいに
一 ....
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