記憶の糸をほどく
風景や音や肌触り
縫い合わされていた
いくつもの欠片が
ふたたび熱を取り戻して差し出される
思い出は語られたがっているのだろうか
子供の頃ひと夏を過ごした祖父母の家
....
まだ心拍を確認できていないから
小さな豆粒
あと10日後に確認しにいくね
小さな豆粒
今日は雨が降っていたんだよ とても落ち着く音と控えめな曇り空
一日中眠気が取れず 半 ....
■■■
■■■ 電車の連結部で
■ ■ シュノーケルの音
■ ■ 渚が車窓から消え
つり革の人々は
相変わらず揺れ
■ ■ 大波小波が
■■■ 電車内の人々の足を濡らして ....
131015
弾み車の振動を枕に
愉快な楽団員は眠る
ガラパゴス号に乗り込んだまま
帰ってこなかった男もいたが
射殺されなかったのだから
昔 ....
楠
■くすのき
■■くすだま
■■■くすりのたま
■樟■かわかして箪笥へ
■脳■箪笥からお天道さんへ
■■■悪い虫が来ないように
■■■お日様のほうを見ていると
■■■それは
■楠■ ....
色紙を折って
六角形の船をつくる
水が入らないように
縁を高く折る
かわいいお雛様を折るときに
見えない不安を
そっとつつみこむ
これから
どうなっていくかわからないのに
想えば ....
よこみちにそれようと
おもえばかんたんな
この夏
タンスの中を整理して
要らない服を捨てるように
増えてしまった思い出だけ
要らない記憶を棄てなければいけない
自販機のコールドドリンクが
いつの間にか半分
....
来る日も
来る日も
最前線の風に吹かれながら
じっとそこに居続ける者あり
笑われても
罵られても
渇ききった砂塵を噛みしばきながら
じっとそこに立ち続ける者あり
戦っている風でも
....
だれかが楽しそうなら
きみはそれがいちばん嬉しい
きみは秋の午後のひかりのなかで
だれかが楽しそうなのを見つめている
ぼくもこころでそれを見つめている
黄金いろの土を ....
記憶の扉の鍵は締めないほうがいい。
綴られた思い出に机上のペンは饒舌で、
蘇る風景は良質な硬石のようだ。
不変の美が穏やかに語りかけることもあるだろう。
共に生きた証は残したほうがいい ....
健全な夕暮れに秋の冷たい風が吹く。
私は人生の喜びを一人の詩人に教わっている。
心の師は人生を達観している。
そのため私は私の境地を再確認出来るのだ。
疲れた頭に師の言葉の数々が染み渡る。 ....
雲海に沈む太陽に心が沸き立つ時、
私はもはや一人ではない。
この道はあなたも通った道。
過去に飛翔する魂を私は許した。
生への鼓動がこの道をゆく。
私の視点の先には常に未来が横たわる ....
若気のいたりを老いても続ける
ひとつの恋愛が始まると
いくつかの虫歯が
できてしまう
歯医者に行くのを
忘れてしまうこともあるけれども
夜中に眠る前に
歯磨きもせずに
お互いの話をすることに
夢中になってしまっ ....
朝焼けと茜空の間に
彩(いろどり)が溢れ
茜空と朝焼けの間に
暗闇が横たわる
少女はその秘密を知りたくて
彩の一つ一つを呼び出しては
新しく命名し昼の詩を
暗闇の底を探っては
言葉で照 ....
風が運んできた花の匂いにまみれたら空想に囚われて
飛行船で七つの海を制覇する旅を始めてしまうけれど
真夜中に目覚めた時のあの浮遊感が忘れられないから
雷雨の中を駆け抜けて迷い込んだ街で君を思 ....
とんぼをみない秋
あの
まっすぐでもなく
ふらふらでもないとんぼの泳ぎを
真似てみたい私の歩み
目的が
ありそうな顔をしてゆくこの道
噂をしなさんな
だれかがささやく
....
雛菊をみていた
毛氈のような緑に
ところどころ陽に照り映えてある白
海をおもいだしていた
流木の漂白された肌が
曇天に無色をそえる
時間の重さをはかる
手のひらの中の一握りの ....
高くなってきた空が呼ぶので
机から飛び出して学ぶことにした
何かに追われ、足早に過ぎ去っていた道
今日はゆっくり歩くとしよう
見飽きたはずの街路樹
瑞々しい緑が弾け
時間を宿した幹 ....
四年京都に住んで
今でもよかったと思うのは
はる を覚えたことだ
生まれ在所に戻ってからも言っている
開けてはる居てはる植えてはるえづいてはる起きてはる
噛んではる切ってはる ....
秋に扇なんて いったい今何月だと思ってるの
もう10月よ
夏の名残を惜しみたい気持ちは解るけど
そろそろ仕舞わないと
変な人だと思われるわよ
雲泥の差ってさ
空に浮かぶあの雲と地面 ....
カーテン開けたら 外は雨降り
こんな日は決まっていつも
君が残していった古いレコード盤に針を落す
心地よいノイズに混じった美しいピアフの歌声に
気だるい気分で僕はもう一度ベッドの中にもぐりこむ ....
現実の壁 理想の枷
解釈を誤るところから築き始める
一途は暴挙だ
途方無き循環だ
不可解が新世代の鍵なら
扉を扉と認識出来るだろうか?
現実の壁 理想の枷
本当は ....
そそられる
そそられる
珈琲の匂いって
そそられる
そそられる
そそられる
給食の匂いって
そそられる
そそられる
そそられる
雨の匂いって
そそられる
そそら ....
「ねえ、これは骨?」
チキンナゲットを食べ慣れているお前達に
フライドチキンを与えたら
飢えたライオンの子供のようにそれを貪りながら
何かを思い出したように下の娘が訊く
「そうだよ。 ....
ただただ夜が
石畳のうえで時を数えていた
ささやき声のような星が
いくつか浮かんでいた薄曇りの零時
駆け抜けて行ったモーターバイクが
どんな行先を目指しているか賭けてみ ....
貴方の祖父は画家
貴方の父も母も阿蘇山を駆け上がる 馬の姿を描いていた
貴方の弟も絵をふすまに残していた
でも貴方は描かない
すぐに脱いでさしあげるのに
私のささやかな夢の ....
蚊を叩いて折れた骨がある
最後に続く 黒丸の群れは
猫の落とした 不思議な能力
にゃあ でも
にゃにゃあ でも
にゃあにゃあ でも ない
聞き取れぬ程の 呟きと
爪に残された 皮膚片で
ご主人様を 特定す ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115