ナゲットがひとつ
コンベアから落ちた
その瞬間
心の箍が緩んだ
自分から
ナゲットを手に取り
思い切り
床に投げつけた
目の前がパッと
明るくなった気がした
もうひとつ手に取り
....
廻廊を二つもやり過ごすと以前の記憶は戻ってこなかった 。奥まった待合室には先着が何人か居て、そのうちの何人かは連れ添いの家族のようだ。しかし誰が患者で誰がそうでないのか、わたしには特に気にはならな ....
スーパーでサツマイモを手にとったら
品の良い老婦人と隣り合わせになったので
「何が美味しいですか」と尋ねると
「だご汁がよかよ」とにっこり答えてくださった
その夜に六畳間で食べた晩ご飯は
....
新しい家族見つめる守宮の眼
玄関に守宮いるからまたにしよう
大統領に投げられた靴を打ち返そうとして空振り
あますことなく陽気な容器にはい!ってわたしたち足し算、ひかないで
ミミにキレた理由をきくひともいないから、いくつものきそ(く)をやぶる
うるうるっとたてたクチビルとんでもないと ....
工場の裏に生えた草を抜いていて思った
この国は何て豊かな国なのかと
何もしなくてもこんなに沢山自然に草が生える
知らない名の草が生える
1ヶ月でこんなに生えるなんて凄い生命力
しゃがんで ....
パセリってなんであんなに残すひとが
多いんでっしゃろな
れっきとした野菜でっし栄養だって
野菜のなかでもトップクラスなんでっせ
嫌いでっか
飾りもんと勘違いしてはりまへんか
もしかして ....
はきつぶされた靴は
あなたの手にひろいあげられ
鳶の影は 青い空を円の形に縫う
午後、けれども其処彼処の綻びから
光は果物のように落ちてくるのだろう
清水を昇る魚の群れに ひどく、眩暈がする
私は今日も 獣の肉を食べる
鳥の、豚の、牛の、或いは、ナニか、の。
理不尽にして一瞬に殺されたモノたちの
肉を焼き 血を焦がし
日 ....
種を蒔く人よ
太陽が目覚める前から 満月が挨拶するまで
私を耕してきた人よ
私は情けない文字でした
いつも 対角線から汚いコトバで罵り
そして 平行線に並べられた
多種たち ....
眠れない
夜の遊びは一つだけ
寂しい沼地
孤独な塔
幸せ探し
夜更かし
ここは海の底
アパートのすぐ傍を
誰か横切るよ
とても大きなもの
じゃらじゃらと
宝石 ....
気心の知れた仲間に
まだ友人とも呼べない人に
身も知らぬ赤の他人に
それこそ
前触れもへちまもなく
君って、 だね。
て言われ
しばらくはただ
狐につままれたみたく
信じ ....
すごく綺麗な声がしたので
見上げると
すぐ近くの
電線にとまっていた
小首を傾げては
同じリズム
同じ音程
同じ歌詞で
繰り返し歌っている
私には
聞き取れなかった
何て言ってる ....
道で猫がひかれている
内臓をぶちまけた姿でよこたわる
そこは子供たちの通学路で
水泳にでかけてゆく子供たちがいた
猫を横目で確認した子らは
ひそひそと話しながら立ち止まらずにあるいた
....
尻尾
普段は隠している
尻尾のことが
気になります
眉を上げて
小首を傾げて
舌を出す仕草
大変
大変…だわ…
私の夫は
実は
犬なので
8年前
拾っ ....
遠く離れた
名も知らぬ君に対して
愛を感じるための
口実なんてない
人類みんな
兄弟、姉妹だから、なんて
そんな標語も、白々しいだけで
だって
兄弟げんかも度 ....
〈誕生〉
生きるために産まれてきたのでも死ぬために産まれてきたのでもない。
目的がないのではなく目的を作るあなたが産まれたのだ。
あなたは自由でもなければ不自由でもない。
自由を作るためにあな ....
むかしある女の娘に
なぜ私にそんな義務が
あるのですか
と 言われた
ただデートに誘っただけなのに
イイヤそんな権利は
僕にはありません
と 答えて
僕は
下宿に帰って泣いた
川の終わりの
影ふらす樹に
最初の光が
瀧のようにそそぐ
ふかみどりの霧が谷を呑む
雨粒が土を齧る音
煙の十字
かすかに かすかに名を呼ぶもの
空と径が ....
掛け軸の中に残された想い
夜が十分に闇であった頃
月の柔肌に立ち昇る香の煙より
しろくあわく
現世を離れた囁きを運ぶ
ぬるい風を孕んだ柳のように
し ....
左右
右なのか左なのかと言えば
娘の通信簿の○は 右に寄っている
よくできる できる もう少し
○
○
○
....
北に向かって高い 炎天下の坂道を 登り続けると
頂は、遠くからは見えていたはずなのに近くに来ると てんで見えない。
とほうもない時間を歩いたはずだよ ほら もう頂が見える‥‥きがした。
五 ....
サイレンを塞ぐ手のひら 許された騙りを口に含み 流した
「過去ノコト気ニセズキミヲ愛シマス」 「キチント知ッテ出直シトイデ」
終わらない 誰かのための美しさ 立ち居振舞い ....
夏
母が自分の年と変わらない少女の顔をし
祖母と写真を撮ってくれと言った
今も見直すその写真に二人の入れない絆や愛情
を見る
その何とも言えない暖かさが何だか悲しい
何だか苦しい寂 ....
田楽や屋台の隅に伊賀忍者
古井由吉が芥川賞を取った作品と同じ名前
それが本当に女の名前だったかはもう朧だ
苗字も聴いたか聴かなかったかで分からない
よく行く馴染みの飲み屋で働いていた女
ただその女が注文を聴いたりし ....
おかあさん覚えていますか
私が生まれた夏の夕暮れ
たった一枚残る写真に
疲れ果てやつれた様子の
寝巻の母に見守られ
同じように疲れた顔の
小さな赤ちゃん
夏のお産は大変だったことでし ....
海のある町 そこに港はひろがり鉄の船がわきでる
川のある町 そこに田畑がひろがり豊かな実りがわきでる
山のある町 そこに道ができ巨大な木がわきでる
人のいる町では鉄とい ....
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