それは 透明な砂だった
すこし おおきな石は ふたつあわせて叩くと 火花が散った
そんな 透明な砂の上に
あなたの フィンがあった
瑠璃の穴を飛ぶ鳥のように
泳いだ証の あなた ....
海を埋め尽くす無数の海獣
その移動に海はおののき
激しく毛羽立つ
逆巻く海鳥の交尾
海獣の胴震いに振り落とされもせず
雌鳥は厚い皮膚の皺の狭間に産卵する
そして独身ものは空中を埋め尽く ....
秋の言葉を山盛りにした籠には
色とりどりの付箋が貼ってある
坂道の先の赤トンボが群れている辺りに
配達する家があって
どんな挨拶を交わして
玄関を入るべきかを考えている
素肌に纏っ ....
はじめて情事を体験したときそれは情事じゃなかった。情事と交尾はちがうことだとすぐにわかったし、わたしの体験するそれが情事ではないこともすぐにわかった。だから早く子供を作ろうと思った。交尾ならば結果をつ ....
浅皿を覆うよどんだ水面は
つい今しがたまで命があったのです
それは固形物に味を与えていました
役割を終えて今にも
捨てられようとしているのです
いつ命が失われたのでしょう
それは最後の ....
夢でみたキスの湿度
もうすこし感じていたい。
子供の必死さで
鼓動が上がり息が出来ない。
このまま息の根を止めてほしいと懇願している。
鼻の頭の汗、おでこの汗。
湿った唇でくれるキス。 ....
僕には何かが見えている
例えば
ときどき視界の隅を横ぎる
小動物の残像
虫たちの群がり
風の色
人々の悪意
悪魔の顔だ妖精の舞いだ
僕には聞こえるのだ
内なる声の
閉じこめ ....
わたしたちのあいだには
うたが、ながれている。
あ、過去がいきてる、っておもった、しゅんかん、
こどもがくれたCDのなかから
浅井健一の声を聴いたとき
あの日
なにもかもが ....
わたしが死んだら
なるべく生き物がたくさんいるところへ
なるべくそのままの状態で
置いておいてください
土にかえったり
誰かの一部になったりして
わたしはわたしの
いのちを分解したい ....
きみをたべたい
しゃくしゃくっと
たねはぷぷっとだして
そしたらそこからめがでて
またきみがはえる
ぼくはそのあいだにつちにかえるから
きみはそのえいようでおおきくなるんだ
きみにとりこ ....
かってに
時間をとめて
うごかないものたちの
うごかない肌のうえをなぞる
あなたの詩ってそういう感じよね
と
彼女は言い、
かぶってい ....
悪い風も良い風もない
風は
放射性物質だけを運ぶのではないのだから
悪い波も良い波もない
波は
津波だけを起こしているのではないのだから
悪いお日様も良いお日様 ....
ぼくは鷹のように悠々としていて
コアラのようにぼーっとした少年だった
あるとき町に楽団が来た
ぼくは楽団のあとについて町中を歩いた
手拍子しているのは最初ぼくぐらいのものだった ....
フクロオッサン(袋おっさん、Fukuro ossan)は、神奈川県横須賀市に生息していた、
哺乳類・フクロオッサン目の小心者雑食獣。2011年のとある日曜日に絶滅。
有袋類ではないものの陰嚢が異常 ....
夜の声の中で
俺が帳を開ける
・・・人々はもう眠っている
もう死んだ者達を想って
神様が風を広げる
「もう誰もいないのだ!」
「もう誰もいなくなったのだ!」
....
どんでん返しの日常の繰り返しで
あわてて僕は
鍋から落ちそうになったこんにゃくを拾おうとする
わかっているのかな
この僕を
こんにゃくはぬゆりと簡単には掴めない
のっぺらぼうで無愛想
角 ....
序―夜を歩く
私がつむぎだした言葉たちは、果たして私を救うのだろうか。暗鬱の底にある私の精神をそれらは果たして白日のもとに連れ出すのであろうか。私は語り出す。ゆるやかに、徹頭徹尾、あざや ....
窓辺に置いた
籐の椅子(エマニエル夫人みたいな)にもたれ
あなたはM字開脚してた
挑発的でエロエロな気配を
全身に漂わせ
わたしの視線は
当然のことながら
その部分に注がれ
目を凝 ....
冷たく懐かれた
幾星霜の旅をさまよってたどり着いた
流れ星の
ふる夜は
君の面影をやさしく
思い出すだろう
この世が無常な
仮の宿りだとしても
僕は永遠に
手紙を書き ....
それから
すこしだけはなしをした
核心の
すこし手前をうめていくように
ほんとうは
言葉も
いらなかったけど
なんとなく
そうしたほうがいいような気がして
す ....
ねえ、あなた
おい、きみ
なあ、おまえ
よびかけてはみたけれど
こたえる声は なかった
ナイフとフォークで
白い雲を少し切り刻むと
青い空がするりと落ちてきた
傍らに小奇麗な色で衣替えした
収穫の時間を置くと
秋の形が出来上がった
味覚を一つずつ競うように
....
いしきのないところが
はがれていた
まるでせかいに
あながあいたように
そのすきまを
たましいでうめていく
つぎはぎだらけのきものきて
うつくしくおどる
....
やっと連休か
これで二人で
海に行けると思ったのに
『たまの休みだから』と
あなたは
実家に帰っていった
日曜日のこと
わたしは今日、
豊浜まで釣りに行った
....
水の吐息
水のしらべ
ながれにそって
そっとさみしさを
うちあける
きらめいて さざめいて
どこまでも すきとおるほどに
きよらかに ながれゆけ
水のうたごえ
水のはなうた
どこへ ....
粗食・外食続きでスタミナを欲する体が
ずぼらでストイックな私のマインドに
今日はカレーを作らせた
大量のみじん切り玉ネギを飴色になるまで炒め
コリアンダー、カルダモン、クミンシードを挽き
ニ ....
吐き出したいきでつくる
まあるい世界があって
けわしい亜熱帯のまんなかを
半ば溶けた自動車が走る
虹に飾られたハイウェイ
信号はすべて青
彼女はリンゴを ....
額ぶちを
ばさりと
鳥が斜めに横ぎった
びくりと
骨ばった視線の止まる
瞬間
空腹も満腹も
傷口もかさぶたも
窓の光に
照らされる
額ぶちの
向こうからの光に
....
手を広げ、伸ばして
指は五本ずつ
手の平や腕の、
サイズはそのまま
だから、空を切る
たいがい、さらうのは
大まかな、感触のみ、だが
あたるなら、求める
見当たらないからか、
....
海へと下りていく小道に
一匹のセミがいた
地面にしがみつくように
じっと静かにしていた
指で摘んでも動かない
すでに命は失われていた
次から間違えないよう
ひっくり返してお ....
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