鏡を覗いたら顔が写った
誰かと思ったら自分だった
鏡を嫌ってたから
滅多に覗かない私は
よく自分の顔を忘れてしまう
だけど
他人の目の鏡には私の間抜けな顔が写って
しまうのだ
....
白熱のweb会議
ふと韜晦してみたら
はじき音
ああ 雨が降っている
雨粒が 私の体を 肉と神経にこびりついた排泄物を
たたき洗い流していく
醜悪な汚物で詰まって ....
僕が世界と繋がるために
涼やかな夜風を浴びながら
今日も一つの詩を書き留める
それは静かな吐息をついて
雨降る白壁に投映される
夢の間に間の幻灯機
巨大な毒蜘蛛を追いやって
雨滴を溢す紫 ....
それから
一人きりの
安達太良山
空気が
薄くなり
シングル
エンジンが
かたかた喘ぐ
荷物が揺れる
夏だというのに
どこまでも寒い
ジャケットが
じっとり濡れる
本 ....
夜中に目が覚め
女の寝息を聞いて
自分が生きていることを知る
「眠りが唯一の幸福だ」
女の言葉が過る
死が永遠の眠りだとして
それを厭う理由はなんだ?
眠りと眠りの間を埋める ....
見えない四角
残された絵の具で空を描く
存在を潰すように雨は降るけれど
雨音が伝うものに耳を貸さなくていい
美しい言葉に救われないものだけに価値があるんだ
たどたど行こう
哀しみと ....
あまりにも海に似すぎている。そう、似すぎている。
僕のこころは、だから、慰めを必要としない。
なぜなら、僕はさざ波のようになることもあるけれど、
冬の嵐の海のようになることもあるからだ。
....
森は茫然と立っている
差し込む陽射しに年老いた裸身を晒す
来る日来る日は雑然と降り積もるもの
過ぎ去った日々だけが温かい寝床だ
森に佇む独りぼっちの木々たち
無表情に見合いながら黙り ....
夜風がすぅすぅ網戸から
入って来ては肌を撫でる
その微妙な心地よさに
うっとりしている午前三時、
電車は大通りを走り雪山へ
凍り付くよな身震いを
誘いぐんぐん進んで行く
鈍色空を背景 ....
高台から遠浅の浜を眺めると波の照り返しには目が眩む。
鰯の群れを追いかけて飛沫をあげるスナメリが、
ハセイルカの一団を連れてやって来た。
小屋の喜三 ....
子供たち
と
遊ぶ
白い獣、
むき出しの
牙
と
ビスケット
緩やかな陽射し、
庭の歓声、
他愛ない時の流れの
そのひとこまに、
静止した
笑みは
遠い空に消え
....
寂しくて寂しすぎて
そこら中の携帯を徐に鳴らしていく
すぐに返答か返信は来て
少し満たされて
わざわざ時間割いて会ってくれる人もいて
なのに会ったら会ったで
数分もせずに虚しさ ....
野の薊を食卓に飾りながら
一杯のコーヒーを飲む
小鳥の囀ずりを聴きながら
青空を眺める
散歩の途中に独居老人を尋ね
世間話に花を咲かせる
コロナ下でも
小さな幸せは
ある
五月連休
オートバイで峠を走ると
舗装路の小石がよく動く
道路を横断する毛虫だ
轢かないように
かわしながら走るのだが
クルマはそうはいかないので
轢かれてしまうのかもしれない
醜 ....
今、「芋」の意味について討議している
「芋の{ルビ力=power}」を{ルビ蔑=ないがし}ろにすると云うことは
忌む者に「忌め」と云っているようなものなので
今後、{ルビ寧=む ....
やぶりすてた青空をつなぎあわせて
あおじろく
笑っている。
かわいた靴音をのこして。
観客は、
だれも、
いない── ....
うつくしい
ものが
欲しい
むさぼるように
あるいは
沈み込むように
この涼やかな
夜風を浴びて
半ば発狂し
半ば落ち着き払い
細胞の、一つ一つが覚醒し
脳髄の、うっとりと微 ....
良く
見せようと見せようと思うがあまり
付き合って2週間の彼女に
「ここは俺が奢るから」と
今月は余裕がないことをひた隠す
良く
見せようと見せようと思うがあまり
ニートの息子に ....
ざあざあと傘が泣いてる
交差点に人はまばら
忘れ物をしたようで振り向いたら
世界はどこにも無かった
息苦しさがどこから来るか
白く塗りつぶされる前に
見つけられたらいいのに
ぼくは錠 ....
きみの背後にはたくさんのごみの山がみえる
そのごみの山について
ぼくはいくらか考えてもいいだろうか
すずめが初夏のこずえにとまって
世界が軽やかにバウンドする
そんな果てなき午後の池のほとり ....
命を生むためには
人は還らなければならない
命を育むためには
人はくぐらなければならない
幾多の年月が交じり合う
数多の血族が重なり合う
今でははるか遠くなった
風の描いた地図の中心
....
高い夜空が澄み渡り
晴れてはいても、なんともさみしい
きらびやかなネオンサイン
きれいだけれど、中身はからっぽ
あゝどうしたらたどり着けるのか
あゝどうしたら充たされるのか
途方も ....
夫が「コロナ感染者濃厚接触者」になって帰宅した
お相手とお互いマスクはしていたけれど
数時間対面で事情を聞いていたので
後からわかったのだけれど
「コロナ感染者」との濃厚接触者と認定された ....
毎日後ろの家の犬が午後3時頃になると
鳴き始める
うちのワイフが散歩に連れていくまで
鳴いている
一方
横隣の家の山羊が
僕の顔を見ると鳴き始める
飼い主が出かけて淋しいのだろう
また ....
詩人は黒ジャンパーに
ポケットハンドで
凍てつく街を歩いている
転んで手をつくよりも
言葉を書き留める
指先を温めている
ごめん違った
自動販売機で立ち止る
コインを入れるために
指 ....
+
生きていることを楽しもうと、生きてみる。
すると呼吸がよそ行きの顔をする。夕飯が腸のなかで踊りをおどる。心臓がメトロノームになる。
段々、生きているだけで満たされていく自分が浮き彫りにな ....
こんな時間に目が覚めて
どんな時間?
草木も眠る丑三つ時に
いずれ一人になる
その時にこんな夜に
また荒廃体験に襲われぬとも限らない
その時が来たら
自分の持 ....
落ち続けている
ささえる力がある
死のことだ
意味のことだ
さなかに
生がある
まばたきもある
落下
お前が出会う地面は
風の麓
なんぴとも見たことの無い
月曜朝の憂鬱を忘れて久しいし
金曜夜の高鳴りも何もない
毎日休みだからね
君らももう忘れたころかテレワーク
しかし休まることのない肝臓よ
いかんぞうなんて言って余計落ち込む
悲 ....
白々しい春では
淡い色の桜たちが
日本の空に無音で開き
咲き誇り
記憶に残らず
地下に埋もれる
今日もお気に入りの店に
閉店の張り紙が貼られ
調理器具は放置される
ニュースでは
だ ....
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