細かい雨が降り続くなか
最寄り駅前のロータリーに着くと
くるくる廻るビニール傘
黄色い小さな長靴履いた
三歳くらいの女の子が
くりくりまぁるい目をキョロキョロさせ立ち止まっていて
通りかけ ....
次から次に丘にあがってくる人たちが
サーフボードを立てかけては去ってゆく
わたしはスプーンを数えながら
同時に色とりどりのボードの数もかぞえている


注文と
作成と
給仕の ....
砂のような
罵詈雑言を
浴びせられても
べつに痛くもかゆくもない
友達だったこともないヤツから

雨の日に浮かれ
這い出てきたのだろう か細い
蚯蚓が

ぺかぺかに光って
張り付 ....
人々はカツ丼を食い
もくもくと働く
此処は鉄鋼の街

とにかくオレンジ色に溶けた鉄を
何とかしなければならないので
大盛の食事を食い続けなければならないのだ

生姜焼き定食でも
カレ ....
枯れてしまった花々が横たわる道端で
明日来るバスを待っている
夕方まで降り続いた雨のせいで
街は水のにおいがする
ターミナルのベンチはわたし一人
これ以上誰もやって来ることはない ....
おまえのすべてを
潔くて美しいと思うけれど

泣かない女は
泣く女に負ける

わかってる

泣いてつなぐような愛は
おまえにとって愛じゃないんだよね

だけど
くだらない感情に ....
トマト
セロリ
タマネギ
ニンジン
ジャガイモ
インゲン豆
マッシュルーム
鶏モモ肉
ベーコン
ニンニク
ショウガ
パセリ
ローズマリー
タイム

大地の恵みをシチュウ鍋 ....
天使の影をみたくて
窓べりに腰かけて朝をまつ

鳥の囀りと 衣擦れが
うるさくて天使は来られない

震えるからだをかためても
鳥は鳴く

こらえきれず風も漏れはじめた



 ....
ふらりと月が立ち昇る

しっとり濡れたベンチに
横たわり
息をひそめる

今 遠くで
かたちを成しはじめた月
もっと高くへ昇れよ

つめたい窪みに
春の海を注ぐように
骨の隙間 ....
木のかけらと
あたたかい水が
午後と夜の境いめに
蒼い浪となり流れ込む


錆は子らの名をくちずさみ
鉱は荒れ野に伏している
陽を転がす指や指
流れの内に華やいでいる ....
東京にもう雨は降らないらしい

眠らずとも
目覚めなくともよくなるまで
幾世紀を費やし
浪費するのは何も砂ばかりではない

やさしい飲みもの
歴史をごみ箱にいくら捨てても
まるで甲斐 ....
故郷には深さがある
海の深さとは別の種類の
血の深さと記憶の深さ
一人の人間に一つずつ
最も深い故郷が与えられており
人がほんとうに帰っていく極地がある

果樹園に包まれ
たっ ....
病棟の廊下を行き交う
光を亡くしたオブジェたちは
意味のない言葉を呟きながら
閉ざされた空間を彷徨っていた

秒針の動きに従い
その営みは飽くことなく続けられる

影さえ失った彼らは
 ....
「いかりを おろせ」


ためいきが でる 
ちからづくだから からだが いたい
つらい かなしいが つづく
てのない ゆうれいが つつみこむ
ともかく もがく 

なんとか い ....
薬を飲まないと良い詩が書けない
困ったものだ
世界は俗物であふれている

本の朗読を通して世間から遠く離れているのではないか
はじかれた人間のようだ

神の臨在を感じた
入院から遠ざけ ....
生神の鍬に
ぬっくり耕され
おれは畑になった
ねじ切られた灌木の陰茎に
スズランテープが引っかかって
女の声みたいに風がふざけている
ムクドリ毛虫食え
ミミズ食うな
おれはミミズの糞を ....
 泣けよ、サファイア、二番星。
 煌々と、夜が凍っている間。
 か細い音が、反射する。
 それが誰にも、届かなくても。

 泣けよ、サファイア、二番星。
 鳥の声が、切り開く夜明け。
 ....
依存性とは外的な要因が大きく作用してしまうものである。いくら遺伝子の魔術によって勧誘されようにも、実際に巡り合わなければ誘惑されることもないのだ。

澄んだ青空のもとで長時間待たされる。これ ....
雨のあいまに草がのびていく
つみとってもつみとってものびていく
春は毒だ
帰る場所もないのに咲いてしまう
太古から受けついできた生命を
父と母から受け取って
生まれ出たあなた

いま 
腕を広げ 
足をのばして
世界の広さを
たしかめている
じゃまするものは
もう ないでしょうに

 ....
霧吹きのような雨はふかみどり

胸の奥まで吸い込んで

わたしは森になる

しばらくすれば

じゅうぶんに水を含み

耳を傾ける

彼らは

永遠を指し示すこと ....
わたしたちは小さな生き物です
(小さな生き物)
どの程度かというと
気にさわるほどの

空き缶の下 おっと
踏まないように ちょっと
たたらを踏む 
あなたのつま先にさしさわるほどの
 ....
奥深く海底の熱水床
わたしが今呼吸をしている処
群がる白い蟹は
わたしであるための遺伝子を
鋏で千切りまた繋げる

染色体を失った肉体だが透明ではない
保護色を身に着けたわけでも ....
書かねばならない事
を 探して
言葉の海を泳いでいました
今の私に書ける事 
を 尋ねて
言葉の風に吹かれていました

波はさざめいて
私を弄び
風は追いつけない速さで
私を通過し ....



その痕のことは、
何も知らない
水たまりを、
陽気なアメンボが通りすぎたあとのことは、何も……
みずうみに、
きみが爪先でたてた水の音も、
寝転んで何かを囓ったり、口のかなで ....
夕暮れ時の街角で
厚く立ち込めた曇り空を見ていた時
立ち尽くしていた 理由など何も わからないまま
歩き出す 瞬間を思う 立ち尽くしていた私の姿


かつての友人はいつしか 私から去り ....
空気がしんと冷たくて
部屋の家具は然るべきところにある
住人はどこにも見当たらず
先程から大根をすりおろす音だけが
悲しいほど陰気に響いている
緑色の毛むくじゃらの腕が
五本の指で大根をむ ....
地球の瞼の中
君はまだ眠らない
君の脈拍だけがうるさいほど
時は水底に泥濘を成している

月は、もう長くない
誰も新しい命を止められない
美しい響きに目眩まされた凡夫が
また一人白んで ....
枕元に外した
メガネの瞼を
そっと下ろしてやり

眠るときも
髪を七三に分けておく

深夜
明かりが消せない部屋の
無影灯に浮かび上がる
手術台のような
蒼白のベッドの上で

 ....
いつものように散歩道を歩いていた
散歩道の上を どこまでも 一人だったけれど
2つ目の駅を過ぎていく時に傾斜を少し越え
そして 角のコンビニの雑誌に触れ 
また 私は行くのだろうと思う そ ....
山人さんのおすすめリスト(5829)
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