こんな時間に一体誰なんだよ。と。
少々不機嫌になりながら
重い腰を上げて電話に向う
受話器の向こうから

「みきょーかい?
かぁさんだよ。
モト―が、いよいよだよ。
長くない ....


 朝目覚む
 早き時刻
 妻に声をかく
 名を呼べど答えず
 名をもう一度呼ぶ
 目を開けず
 もしやとよく顔を見る
 もしやと閉じた
 目を開いてみる
 妻にっこり笑みて ....
わたしは
自慰をして
足らずに

よくしらない男を
呼び出して
抱かれる

さいきんのモーテルは
清潔であかるいし
窓だってある

そうして
そこを出た足で
花を買いに ....
洞窟をでると

セミが鳴いてくれていた

五感がやわらかく戻ってゆく

夏の朝風が耳もとでほどけている

ロータリーではバスが唸り

日傘の若い女がなぜか微笑んだ

きのう関東 ....
チューインガムは
ぷうっと 膨らむので
機嫌の悪い夜には
もってこいですが
持って来い! などと
命令しては イケマセン

忽ちに 彼等は 結託し
余計なコトは 言わせんとばかりに
 ....
私はいつも 流れる時の中で
何にも言わないだろう きっとそこに何もないから
いつも自分で ぼんやりと考えていたことが
私がいつもそこでやらなければならないこととして
ぼんやりと 輝いていた ....
果物はみな少なからず官能的だと思うのだけれど、桃なんてその最たるものだ。たたずまいや、匂いや、舌触りや、もちろん味も。
桃の皮を剥くのって、肌を剥くのとも似ている。薄皮を剥がす感じ。熟れた桃の、 ....
月曜日

昼休み
コンビニで
メンチカツ
入りの
パンを買い
公園で
前向きに
食らう


いつもと
同じ光景
昨日と
違う蝉
財布の小銭は
明日あたり
 ....
女と高台までのぼった

簡素な公園がそこにはあった

商店街で買ったトッポッキと貝を食べた

ソウルの町を一望しながら舌をからめた

白い夏だなと思った

白内障ってこんな感じだろ ....
  初めて
  父にぶたれた日
  近くの河原へ行った



  ひとり座って
  痺れる頬をさすりながら
  川のなかの魚を見つめていた
  一匹、二匹と
  その生きも ....
無気力と言う船がある
一度乗るとその乗り心地に魅了されるから
考えることを止めてしまったりする
昨日乗り込んでみた
ぼんやりとブルーの空を眺めていると
ぽっかりと空白ができた思考の片隅か ....
山すそに嫁いで間もない頃は
会社から帰って玄関を開ける前に
そっと結婚指輪をみつめた
関所を越える前の通行手形
新姓と共に 自分で選んだ道
でも まったくなじみのない夫の家族達
ただいま  ....
おしつぶされて割れたはしばみの実が散乱している野のはてに

まだ泣かない人が立っている


私たちは割れた実を喰うでもなく拾うでもなく
この実の硬さをしりたいと
辺りをみまわ ....
朝焼けに
一羽のかもめ
雨上がりの黒い砂
足跡がひとつ
ざらつく視界

限りなく打ち寄せる
あったことと
なかったことの
波打ち際

灰色の雲間から
淡い光が染み込んでくる
 ....
見えてくるものは伝説にちがいない
…死ね… と言われないのが何よりもつらかった
誰も彼もが煙りのなか幻と消えて
夜が遠く、淋しい季節には熱い珈琲がよく似合う
湖を見つめている
波はい ....
風通しのよい現場
ここからは池が見渡せて
石碑もある
ラジオ体操もある

小学校は半休
午後は快晴

資料館に人はなし
殺人もどこかのどか

世界で最初に本とよばれたものは紙の束ではなく、粘土でできた焼き物だった。渇いて固まった土のようなみすぼらしいものを想像してはならない。それは白くて半ばガラス化した陶磁器である。本という字がきざみ ....
職場の同僚にハットリさんという女性がいる。
物静かで、いつも気配を殺してそっとたたずんでいて、本当に先祖は忍者だったんじゃないかと思わせるような人だ。
(現に職場の多くの人は彼女のことを「ハットリ ....
インド料理のお座敷で

王様気分で料理を食べた

トマトのスープもほうれん草のスープも

オレンジ色したドレッシングのサラダ

マトンカレーにインドウィスキー

あれがあんなに
 ....
キューピー3分間クッキング

土曜日のお昼まえ

スイカとメロンのサンドウィッチ

植物みたいなあなたの食べ物

やさしい気持ちをまもりたかった

メルヘンひとつもまもれなかった
 ....
 おお、ポップコーンのカップの中で空振りする右手。食べつくしてしまった。食べた記憶もないのに。バターとキャラメルでぬめぬめと光って、指先が、母乳にべたついた乳首に見える。吸いつくわたしは、そういえばど .... 人形を捨てようとしている人に出会った
少し古めかしいフランス人形だけど
愛くるしい表情をしていた

 捨てるのなら 私にください 

と お願いしたら

 いえ 収集車に放り込まれるま ....
まな板の上で
かつて
生命を有していた
魚が微笑う

深い海の記憶が
プチプチとした卵のかたちをして
銀色に膨らんでいる

今にもビッグバンを起こして
マリンブルーの
星の卵が
膨張しはじめる気配

 ....
       
夏になると私の心の中に生まれてくるものがある。何故なのだろうかと問いかけながらいつの間にか消えていく。ふるさとが貧しかった時代の頃から、夏になると飛び交う蛍を蚊帳の中に置いて眠ったも ....
青いビニールシート
に血が垂れて
かぶと虫が寄ってくる

私たちはオレンジジュースを飲む
悲しいかな上司に
散々

「sex」だの
「化粧」だの
「男」だの
「血液型」だの言われ
腰を触られ
毎週時間外2時間拘束説教され

つづけて

アトピーが再発し
心臓の発作 ....
大きいパナ○プを買ったら
ホワイトチョコがちりばめられてて
「ミルフィーユの様な食感」だとか何とか

{引用=
チョコを食べたら鼻血を出すので
最善の注意を払って
パキパキと音のする
 ....
錦糸町で仕事をした

スカイツリーが漠然と建っている

整然としておおぶりな街路樹や街道

唐突にそびえている建造物

まるで中国の都市にいるようだ


街は開発というシステムに ....
ギュッとどこかに押し込んだ
ぬるい昔の恋を
こっそり取り出したみたら
まだ賞味期限前
少し苦いけれど
少し酸っぱいけれど
それでも
あの頃の二人が好き

暑さに揺れる街の上 ....
空が青い。雲はまっしろ。


山に囲まれた中途半端な町。


良くもなけりゃ悪くもない。


古いお山がたくさんあって


いたって普通なんだけど

なんだか時折切 ....
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