春一番が吹くと
春の香りが満ち溢れてくる

木々の新芽の匂い
花の甘い蜜の匂い
それらに釣られて出てくる動物の匂い
また遠く、南海の潮の匂い
春の香りは
暖かい潮風に乗った生きものの匂 ....
打ち上げられた六百頭のクジラにナイフを刺した
どうしようもなく大きなかたまり
どうしようもなく身を投げた人の命が溶け込んでいるから
潮の匂いは生の匂いがする

冷えた肉体をプランクトンが分解 ....
人のいない真昼
都市は連帯に悶えていて
都市の配管の末に一滴の誓いが芽生える
真昼の誓いは沙漠へと向かい
死の永続性を砂に誓う

涸れ果てた湖を
野獣の群れが飛び交っていく
無限に ....
私達はきょうも鳥の首を絞めて
お釈迦様を雑巾でぬぐっている


星は一面凍りついてしまって
月の香りがしないと鼻をすする


ころっと犬の彫刻が転がって
心臓をノミで打たれた感じ
 ....
膨らんできた
はくもくれんの
銀にひかる繭のような葉

わたしのはらのなかで
懐かしい男と猫とあのうちは
ことばをうけて赤ん坊になり
ホトホト
うみ落とされてゆく

ていねいにガム ....
朝が死んでしまった日の夜
私は涙を流しながら台所で玉ねぎをむいていた

どうしてこんなことになってしまったのか
ただ真面目に生きてきただけなのに
どうしてこんな目にあわなければいけないのか
 ....
小川のほとり
その食堂は静かにたたずんでいた

サバの塩焼き
ニンジンとごぼうの天ぷら
だし巻き卵
ハムエッグ
ギンダラの照り焼き
とんかつ
アジフライ
メンチカツ
野菜炒め
 ....


赤トンボたちが
飛行機のルーツのように飛行している
一日ごとに冷たくなる風が
透明に流れている青空の清れつさと
黄いろい木々の退廃を同時に包含している
秋の午後
パズルのピー ....
座敷の鍋の中から窓越しに雲が見える。雲に隠れた月がぼんやりと
少し前の地震で己が実を揺すられ、少し味が出汁に溶け出したかもしれない。
食欲満々の座敷の客たちは鍋の火加減を気にしている。
解体前の ....
なにも書かれていない
紙の上から立ちのぼる
青白い砂漠
その雪原のただなかで
花にも瞼があることを教えてくれた人が
透明なグランドピアノを弾いてくれる
その滑らかな指のうごきで
雪のよう ....
土佐の海辺の村で
毎日毎夜薄暗い電灯の
野外畳の上にでんと座り
鍋に茹でられた貝という貝
爪楊枝でほじくり出して
それぞれに違う味覚
食い喰らい喰らい食い
瞑黙ひたすらに
味わい味わい ....
片付けられない部屋に
終われない言葉が散らかって
絶句。
「。」とは、簡単に収納されてしまう私の居場所 
膝を抱えて座り込めば 隙間から立ちのぼる私の苛立ち
そこからはみ出でくる消化できない ....
洗いたての芝生がちろちろと
脈を交わらせている

川までの道すがら
ちいさな生き物は溺れ死に
汚れた内臓は、光る命へと洗われる

車椅子に花を差し入れる

目を細めてファインダーを覗 ....
十二月、空はひくい。
落ち葉の季節も過ぎた。
竹箒を立てたようなケヤキの並木がつづく国道。
鳥の巣が傾いたまま、
ケヤキの梢にひっかかっている。
いつ落ちてもふしぎではない、そんな気がする。 ....
あまりのやりきれなさに思わず
荒んだ瞳になって街のど真ん中で
……黙して堪えなくてはならない時にわたしが
想う 風景があります
そこはひたすらにさやかでのどかで 透明で
必要がないから透明な ....
  仔犬の映像が 午後になると
  卓上に置いた梨のまわりを駆け始めた
  おもてでは雪がもそもそ愚かさのように降って
  わたしの居る部屋に面白味のない光を積もらせる
  次第に岩石 ....
ナンデーナンデーが増殖する頭をかかえ
森の中をさまよっておりますとパトカーの
音が谷あいに響いて山に反響して 谷の
町々のどこに パトカーがいるようだか
さっぱり分からないの 心の中はそんなか ....
ほそく
だけどまわりの庭木よりたかく
そよいでいる
白樺の梢の辺り
黄ばんだ葉の疎らな繁りにふと
青いまま
いくつか
乾きながら
さわさわと光にそよいだころの
面影を残し


 ....
 
 物語はいつも唐突に始まる。
 ある日の僕は緑の森の中にいた。
 突然の驟雨をやり過ごし、気が付くと教会の前に立っていた。
 初めて自分のもの以外の神の声を聴いた。
 それはまるで音楽の ....
ハトが二羽歩いている
なにもない場所で
なにか啄みながら
啄まずにはいられない
生きるために
地べたを歩きまわらずにいられない


うまく歩きまわるには
首をふり続けずにはいられない ....
「消えやがれ」って
言われた言葉を反芻してると
いっそ
消えてしまいたくなる
いやいやそれでは敵の
思うつぼ
「消えるもんか」って、
頑張るものだよ普通って
言い聞かせてみるけど
そ ....
沈黙して眠るほかない
鬱積を投げ合う蒼い人語の地穴で
帆軸を極北に向けたまま
難破船のようにふかく朽ちていく


沈黙して眠るほかない
世界の清しい涯てをむなしくも夢みて
 ....
今年の秋野菜は
まったくと言ってよいほど
芽がでなかった
去年は
大根も人参もほうれん草も
たくさん芽が出たのに
やはり気温のせいだろうか
今年は10月になっても
真夏日が続いたから
 ....
西日の射す部屋で
裾に黒い炭を付けたレースカーテン
輝きながら汚されていくことを思う

私は寂しい
ベッドの位置から進むことも退くこともできず
手のひらに収まる程の空気の厚みにす ....
覚える訓練はするが
忘れる訓練はしない

考える訓練はするが
考えない訓練はしない

急ぐ訓練はするが
ゆっくりする訓練はしない

緊張する訓練はするが
リラックスする訓練はしない ....
寂しいから寂しくないふりを
しているなんてお見通しなの
寂しくないならどうして
そんな限界集落の無人駅に
会いに来ないかなんて言うのよ
あなたの孤独を映し出す
鏡のように澄んだ湖はもう ....
私たちは望んだ
林檎の木のやせた小さな実を
うなだれて実をこぼす廃れた窓辺を
細い水のはねる汚れた低い蛇口を

あの庭から私たちは始まった
私たちは紫の実をつける香りのよい果物を欲しがった ....
 久しぶりに訪ねたカフェは、何も変わっていないはずなのに、やはりどこかが少し変わっているような気がした。
 玄関を入る前にマスターと目が合うと、マスターはガラスの向こうで小さく頭を下げた。僕のことを ....
糸杉の並んだ道
夏のただ中だった
一歩歩くごとに
汗は蒸発していき
肌に残されたものは
べとつくだけの塩辛さだった

暑さのあまり
蝉の声さえ途絶えた
世界には
わたしとあなたしか ....
小さなスターバックスで
海辺のドアを開いてコーヒーを飲んでいると
二人の女性がやってきて 
そこで恋愛話をしていた


天気の良い日だった 
波を受けた 子どもたちは 
天使のよう ....
山人さんのおすすめリスト(5784)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
はるのかおり- 長崎哲也自由詩9*17-2-20
浅瀬のクジラ- 青の群れ自由詩717-2-14
誓い- 葉leaf自由詩817-2-13
雪のひとびと- 印あかり自由詩15+*17-2-12
帽子のほころびるとき- 田中修子自由詩16*17-2-8
朝が死んだ- wakaba自由詩1*17-1-26
桜水食堂- レタス自由詩217-1-26
- 本田憲嵩自由詩16*17-1-25
鮟鱇の独白- ……とあ ...自由詩12*17-1-25
氷結- 本田憲嵩自由詩1317-1-15
底の記憶- ひだかた ...自由詩19*16-12-19
汚名/恋人の変換- 為平 澪自由詩716-12-18
雨上がりの庭- 印あかり自由詩18*16-12-17
ことばを灯す- たま自由詩22*16-12-11
=息をすること- もっぷ自由詩1116-11-27
果皮- 草野春心自由詩516-11-26
りぼん- るるりら自由詩17*16-11-8
青いままで- ただのみ ...自由詩11*16-11-5
森の教会にて- ヒヤシン ...自由詩6*16-11-4
歩けや歩け- ただのみ ...自由詩14*16-11-2
「消えやがれ」って思われてるんだなっていう思いをずっと転がし ...- Lucy自由詩11*16-10-28
薔薇の痛み- 白島真自由詩16*16-10-8
- ホカチャ ...自由詩216-10-6
鍵のかかる部屋- 為平 澪自由詩816-10-5
偏った学校教育- ホカチャ ...自由詩116-10-5
白のブルース- Lucy自由詩20*16-9-29
- オイタル自由詩516-9-26
夏の終わりに- 高林 光散文(批評 ...3*16-9-16
夏のスケッチ- そらの珊 ...自由詩15*16-9-1
夕暮れ時の二人- 番田 自由詩316-8-9

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