これがすべて妄想だったらいいのに
『あなたへ
――もうすぐ全てが終わります。
そうしたら僕は其処へ行きます。
反戦の反対側へ
もう僕にはこのような方法しか残っていません。
此処 ....
東の空はまだ蒼く
冷たい鼻先に白い息がかかる
ゆっくりと明けながら
低気圧は姿をかえ
霞む、冬の朝は、ふたりの渇いた喉をきらしてゆく
/傷んだ髪の刺を擦るように / ....
見るからにヤバそうなのが キた そんなのは 見なくてもわかる プンプン臭うぜ ピンヒールの か細い 金網を張った あれは 床というべきか 屋根とでもいうべきか 足音からして 宙に響く 長い髪が 歯車の ....
月にいちど血の塊を産む
生まれなかった卵と一緒にトイレに流す
私の体は痛む
痛みは臍の下から生まれて体中に(つま先までつま先まで)
それは生まれなかった卵の為に
じんじん じんじんと
....
ケンタッキーが美味しい季節
ツイスター一口わけてくれたけど
なぜだか恥ずかしく申し訳なく
皮だけかじってすぐ返す
私はあなたの外側から
目をこすりながら探してる
どこからどこまでが ....
すきなうたを口ずさむ
なんの音も連れないで
絶対にはずれない
だれも合否をださない
すきなうたを口いっぱい
すきな気持ち 心いっぱい
音でなく心で 言葉で うたいたい
人前で隠し ....
60年代、私は赤ん坊だった ハレ、ハレ、クリシュナ
インドについて考え始める前にはガンジー女史が
長期政権の玉座に鎮座ましましていた
3段腹の俗人ガンジー
憧れのマハトマではなく
60年 ....
熱くなった頬に導かれて
引かれて 繋がって
吐く白い息の裏側で 背中を押すのは掌。
12月の寒い風が
人の渦から生まれた熱気や摩擦が
ただ単に、この熱くなった頬の原因であれば
もういっそこ ....
俺は金では動かない。
というのは、とても、
立派だと思う。
ぼくもそうありたい、
男ならば。
そう思います。
ところが、
ボーナスというものを、
もらってみれば、
ああ、
これ ....
ひとみを閉じていればいい
こころを閉じていればいい
電車が通過する前の
空気と地面の振動が ....
夢をあきらめるな
なんてしたり顔で言ったりはしない
追いかけても追いかけても
手の届かないシャボン玉のように
つかんだら壊れて消える
夢はいつか覚めるもの
現実を突きつけられること ....
浜辺に崩れかかった民宿が一軒とりのこされていて
ひやけた壁のうえを暗灰色のツタが何十本もからみつくようにして這いまわっている
看板に書かれていた文字はとけたチョコレートのようにぼやけ
まっ ....
雨に濡れた明朝体のような
あなたのてのひらで
さやさやと海をやどす桃の実と
どこからか
うちよせる
まひるまの
葬列
泳げないわたしのために
あなたが桃にナイフを入れるたび
....
この子は生まれた時から変わっていた。
どう変わっていたかってのは
ちょっと目に分からないくらい変わっている。
何が楽しいのか、絶対に笑わない。
笑わないってのが、また、一つの何なんだが
ニッ ....
桜桃色の朝焼けに
白く凍える息
奏でられる朝の輪唱
青い空が眩しい
まだ
まだだ
世界が終わってもいいと思えるような
美しい光景に出会いたい
世界の終わりは
美しくあって ....
雲ひとつない
晴れやかな笑顔の
青空を
穴の開いたスニーカーで
堂々と歩く
途中
見えない遮蔽物を越え
見えない恐怖心を捨て
先々で
訪れる景色
発生する出来事
すべてが ....
風に煽られたコートの襟をたて
儚廊と千鳥足歩いてゆく/宵の街
〃霙まじり〃湿る路面を、乾いた音が鳴り響き
反射する/銀色に欠けたハイヒール
家路を急ぐ肩、肩が触れ
「酔ったみたい…」
....
憂鬱な鼓動を
そこに響かせている
何にもない日の
夢に 落ちていく
輝いた 日没
バス停の 右のどこか
憂鬱な晴れ間をのぞかせている
くたびれたような その ....
雪形を探して田を起こし
もみ殻を焼く煙に手を合わせるように
まじめに、まじめに暦と向き合って暮らしている
それでも時として川は溢れ、山は崩れ
食べていくのに難渋する
まじめに、まじめに生 ....
森の中を進む
木の無い森
草の無い森
ただ土で満たされた森
水は砂の底を流れ
砂があちらこちらに山を作る
表面は水の波紋のように風と遊ぶ
「ここはかつて森であったのだ」
と言う人が ....
爪を切る
快い音が響くたびに
日常の縁から否応なく
寸断されていく記憶
苛立ちの16ビートのリズムを
机の上に刻み続けた爪
つまらない照れ隠しに
痒くもない頭を掻いた爪
....
橋田壽賀子
予定調和のオーソリティー。文学にアンチテーゼを投げかけてやまない脚本家。
どこにでもあるような設定は一見想像力の欠如を想わせるが、考えてみるとあり得な
い現象※や葛藤を次々 ....
顧みられない壁の横で生まれ
白も黒も知らずに白と黒になり
街を隠す羽を動かしている
冷たいにおい
曇を遠ざけ
冷たいにおい
手の甲を踏む
街に沈む街
....
君と会うため
黒服を着た 男たちをさけて
繁華街をライブバーへ向かう
半年ぶりに会う君は
また ひと回り細くなっていた
バーへ入り君を目にして
ハグし合う
いつもと同じ
申 ....
ことのあとの、
厚切りしお揚餅を口に放り入れ、
きょうの失敗をまた噛み締める。
このごろ、
呼ぶ女にがっくりすることが多いので、
月のはじめは、どうしても、
ストライクを取りに行き ....
良心というものを売った日は、空には雲ひとつない晴天で、行楽日和というべき日であった。
そもそも、私は良心というものを必要とはしていなかった、
生きていていままで、ひがみやねたみしか覚えなかったし、 ....
瞬きが景色をつくる
壁面に反射する光
戻ってくる
街路樹の梢たち
人々の独白は
磁器を数える単位となり
いつまでも終わらないので
扉は貧しい影の所有者となる
そして形はいつ ....
パチンコ玉いっこ
あいつのおきみやげ
シーツのうえ
ぎんぴかり
パチンはじいて
ゆびいたかった
パ
てのひらひらいて
パ
むすんでぬすんでチンコ玉
パ
チンこんやつきありて
たまたまのまたがおこしに ....
白線が
電車で顔を擦られ
風が吹いて
月を食べる
あご紐
だめになっていく体のリズムの変調が
自分には一番良く分かる
画面がフラットになり
肩車をして
新聞を逆さに読んだ
朝が来る
すべて
すべて
揺れている
....
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