すべてのおすすめ
夕暮れどきの町なみは
どこかゆるんでいて
おだやかな顔ばかりが
すれちがってゆく
街灯が点灯し
一番星が顔を見せる頃
どこを歩いているのだろう
灯りの点いた家を探して
通り ....
酸欠状態で喘ぐ金魚が
水面を見上げる角度で仰いだ空は
怖いほど明るい色をしていた
アイスクリームよりも呆気なく
溶けて流れ出したフレーズを
おろおろと掬い上げようとしたら
それは舗 ....
春すぎて、白妙
きみのひとみを覗く
彩られた虹
星のかたちをそのままに
人知れぬ森の底で
空を待つ火種の連連
泉のなかに息をこらし
選ばれる日までを指おる
夜霧を ....
百年の間には
どれくらいの人が土に還ったのか
誰にともなく問うと
最近は火葬ばかりだから
それほど多くはないんじゃないか
と答えが返ってくる
縫い物の手を止めて振り向けば
ねぎ坊主がぐら ....
夜からの雨は
屋根を洗って海へ抜けた
わたしは誰もいない店で
外で吠えている犬の声を聞きながら
小僧のように座っている
なにもすることがないとは
お客が来ないとは
本当にかなしいものであ ....
寝息を立てる
わが子に思う
一生、そのまま
かわいい赤ちゃんのまま
わたしのそばを離れず
わたしを一番ひつようとし
憎まれ口もたたかず
ただ、ひたすらに
一生懸命たべ
一生懸命あそび ....
北欧から来たアイスブルーの瞳を持つカモメがこの空を飛んでゆく。
氷川丸に群れている黒い瞳のカモメはそれを全く気にしない。
孤高のカモメがはるばるやって来たというのに。
彼らは群れてはいたが、 ....
森のひそやかな言葉を聞くとき、私は帰ってきたと実感する。
待ちわびた月日が私に深い瞑想の扉を開かせる。
鳥達よ、歌っておくれ。私は今ここにいる。
しかし私の傍らには今はもう誰もいない。
....
潮風ばかりが幅を利かす
テトラポットの脇で
小さくなってる砂浜の上に
そこらへんに落ちてた
たどり着いたばかりの木屑を集めて
組み上げた墓標めいたシンボルに
ぼくは気取ってみせて
きみに ....
壁にピンナップされた僕らの写真を見ている 時々締め付けられるように過去が蘇るのだが
時間の不可逆性は 僕の味方ではないようだ
一人静かに時を消費することにも慣れてしまった もちろん本意ではない ....
そこは場末の洋食屋ではなかった。
マスターは自家製のコンソメスープの
味を利きながら、笑みをこぼして
「イギリス海峡には初めて来たのかい?」と切り出す。
{引用=
....
夜中、雨音で目が覚める
キッチンテーブルで煙草を一本吸う
暗闇にたちのぼる煙に
一匹の黒い魚が遡ていく
勇ましいその魚影は
たぶんマラッカ海峡で
海賊たちと渡り合い
インド洋に出て行くの ....
何にも浮かばない夜
思いうかぶのは例えば子どもの頃のこと
大人になったら思い出は何も残らないから
時が経つほど鮮明になる
あの夏の暑い日に
海の中で泳いだ日のことを
沈む夕日を見ていた ....
小さな小さな箱の中で
僕は不快な虫になった
それはとても静かな箱だけど
時折川の流れの様な音が聞こえたから
多分、人が捨てた河原のマクドナルドの箱の中
僕は小さな虫だから
箱を開ける事 ....
閉じられた瞼は
眼球にやさしくかけられたさらし布
或いは
フリンジのついた遮光性の高い暗幕
時折
なにかに呼応して
波打つように
揺れる
ベビーカーのハンドルに止まったちょうち ....
し ご と を し の ぎ
こ こ ろ こ か げ に
み え ぬ わ き み ち
と き が と け だ し
美しく病んだ六月の背中で
僕らは夢か ....
光では消える
だから 灯りを
照らすという意志が欲しい
だから 灯りを
ともすという力が欲しい
だから 灯りを
暗いものが見えるだけでも
心の灯り
たきつけているのは ....
辺りは静かで仄暗い
細かな気泡としなやかな水草だけが
照明の光を蓄えて揺れ動く
水槽の中を泳ぐアロワナは
夏の夜行列車に似ている
いつまでも眠れず、読書も捗らなかった
車窓に触れたゆび ....
とくとく音がする
エナジーがみなぎっている
ぽつぽつ音がする
雨が降っているのだ
季節の入り口を出たり入ったり
目が覚めたら夏だった
目が覚 ....
きょう、小学生のとき
はじめて好きになった同級生と出会った
いつものように
タイムカードを押した後でも
とりあえず売り場の前を
いったりきたりしている、そんなとき
彼女 ....
「赤ちゃんは
この世に産まれたのが 苦しくて 怖くて 泣くのです」
と誰かが言いました。
笑わせないでください。
産まれたばかりの赤ちゃんは まだこの世なんて知らないのです。
あの ....
吊り橋の真ん中で二人は懐中電灯を消した
月も山の木立に光を隠した
手を延ばせばそこには異性がいた
何時も顔を合わせている相手だったが
不意に訪れた二人だけの世界に戸惑って
互いに黙っ ....
遠近感を失くした心に
圧し掛かるコンクリート色の空
それは浮力を相殺し
ひと気のない公園の片隅に
鳩のよう
視線は堕ちて行く
否定も肯定もしない
午後の息苦しさは
酸欠した金魚のよ ....
気難しい顔をした男が独り
横顔に夕陽を浴びて
刻まれ顔の皺の陰影
海面から反射した悪意を身に纏う
人生の黄昏時
手ぶらのまま男が独り
視線の先には水平線
海鳥の獲物を掠め取ろうと
....
夜は暗い
地平の涯まで
音の無い破砕が続いている
彼は農場の納屋の中で眠ろうとしていた
それが懲罰の為か
彼自身の性癖の為かは
今となっては分からないし
彼の履歴を辿るのは
有りも ....
死んだような人よ
始発の電車で何処へ帰る
死んだような人よ
心は故郷か家に置き去りだ
死んだような人よ
あなたを愛する人を裏切った朝
あなたはその体を抱え何処へ帰る
あなたの ....
体重計にのれたなら 勝利
のれないなら 敗北
豚の体脂肪率は十四パーセント程度と聞いて 愕然とする
そうすると 私は豚ではなく
豚よりも ぷるるんとしている
ひ ....
空のどこかが
解けて
みずが零れる
雨
モノとコトの上に
容赦なく
みずが注がれる
雨
雨
ぬるんだ雨は
葉っぱを揺り起こし
やわらかな雨は
根っこにじ ....
未明。雨が降っている。殴り付けるような強い雨だ。風は森の木々
を蹂躙しながら北へと向かう。雨だれを引き連れて。しだいに厚い
黒雲がうっすらと明るくなっていく。森のあちこちには輪郭のぼや ....
この夜の向こう
蒼白い悲しみに凪いだ街から
漂着した片言に縁どられ
幽かに像をなす空白
難破した夢
偽りという救命胴衣を着けずに
真実という黄金を抱いたまま
....
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