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おまえは、
おまえ、という
やっかいなやつを
みごもってしまった
孕猫だ。
赤ワインをかたむけながら
あいつが、ぼそっと、いった。
うまいこというなぁ
カルボナーラをほおば ....
なんにもしらない明日が
瞳を
ゆっくりと
あけるとき
朝が
ざんこくな産声をあげる。
白い死神の背ビレに切り裂かれた
ふかいふかい空の底から
ぽろぽろと
こぼれおちてきたものの正体を
ぼくは
知っている。
それは
まき散らかされる
おびただしい数の安売りの愛だ。
....
きれいだね、
ほんと
きれいだね
ひさしぶりの
ふるさとの浜辺で
花火を
とおく
みつめながら
やわらかな笑みをうかべていたきみを
うちわと、浴衣と、えくぼと
海のにおいと ....
やぶりすてた青空をつなぎあわせて
あおじろく
笑っている。
かわいた靴音をのこして。
観客は、
だれも、
いない── ....
卵から孵った雛が、初めて見た太陽を母親と思い込むように、俺はあなたを好きになった。
中学二年の春、勝ち気な瞳をしたショートカットの女の子に出会いました。「サヨナラ」、その子と初めて交わした言葉で ....
やさしさだけがあるひとのなかに
太陽(コロナ)がおちて
夕焼けがおわった。
冬の空より退屈なひとね
水がいった。
そういう水も
そうとうに退屈なかおをしていて
おおきなあくびをしてい ....
季節があわただしくすぎてゆく
いま、どこにいるのだろう
さっぱり わからない
わからないから歩いている
ながいあいだ歩いてきたような気もするし
ついいましがた歩きはじめたような気もする
....
カゲロウのようなヒトだと
おもったんだ。
はじめて
からだをあわせたしゅんかん、
カゲロウのようなヒトだと。
うまれたときから、
たべるための、
はなすための、
クチをもたない ....
シャンデリア
空のにおいが
なないろの真珠になって
くもの糸にきらめく朝、
なつかしい音楽を
聴いた。
それは
くさむらか ....
佇んでいる。
びたりとも動かない水だ。
この夏、そんな水を見た。
早朝、いつものように堤防道路をのったりと散歩している時だった。ぼくは、不意に気づいたのだ。音がしない! いつもの音がしな ....
そらの匂いが
あじさいの花に
かぞえきれないかげを穿つとき、
虹の残り香が めをさます。
こどもじみた言いわけみたいに
するり、と
きえてしまった
あるはずだったものたち。
( ....
すみれの香りがするね
ルビー色のワインを飲みながら
つぶやいたあなたの唇が
柿渋のように舌にからみつく夜
新月が笑い
大潮が笑い
あなたの赤い月が、ひとり
イ ....