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ひさしぶりにかえってきた娘が
玄関を開けて
いえのにおいがする、といった
ずっとこの家にいるわたしには
そのにおいがわからない
いいにおいかどうか
よくないにおいかどうかも
わたしが息を ....
知らない国の見果てぬ路線図
ここで乗り換えると海へつながる
春を見たければ各駅停車で

こうしているうちにも
砂時計のすなはおちつづけ
耳をかたむけると
さらさらさらさら、とささやき
 ....
何気なくひらいた
絵本の頁のなかに
千代紙で折られたお雛様が
はさまれていた
どうしてそこにいたのか
記憶をさらっても
出てくるのは
春の真水ばかり

けれど
そのお雛様には見覚え ....
オルゴールのふたをあけると
ことりが砂浴びをしていた
昔のメロディで
ほんのりと温められた砂は
極上の石鹸で
泡こそ出ないのだけれど
日々の汚れを落としてくれる

ふっくらと
よみが ....
くさむらのうらぶれた浅瀬
打ち上げられたほおづきの中の
丸い実が
あかあかと
燃えながら
わたしを見ていた
緑だった容れ物の
もはや若さはぬけおち
朽ちた葉脈だけになって
身のうちを ....
草々は刈られ
広々とした川辺に
一本足のたんぽぽだけが刈られずに
ぽつんと取り残されていた

小春日和はきまぐれに
命の鍵をもゆるませる
死ぬのだったらこんな日がいいなと
薄い皮膚のま ....
もとより文鳥は風切羽を切っているので
高くは飛べないけれども
不便はない、という
狭いこの診察室で暮らしていくには
ここには空がない
文鳥は空を知らない

ねえ
鳥の脚を見て
そこだ ....
お寺の境内の一角、緑の葉が繁り、そのところどころで小さな可憐な花が咲いている。
その紫色を見ているとなぜか懐かしさでこころのうちがあたたかくなる。
「萩の花だわ」
すれ違っていく観光客の会話でそ ....
ゆるゆるとながれている
今もながれつづけている時間を
ふいにとめた とある春の庭がふたつ
となりあっている
ひとつは住人によってよく手入れされていて
赤いチューリップが笑い
黄色のパンジー ....
テーブルの上で
蜜柑が燃えている
そのふところにたたえた水を少しずつ手放しながら
冷たく燃えている
つやつやとした
ともしび

坊やが食べこぼした
アルファベットびすけっとのかけらたち ....
長い通院生活も今日で終わる
とある春だった
通い慣れた道、河川工事はまだまだ続くらしい
詳しくは知らないけれど新しい駅が出来るという
パン屋、スーパー、マンションや公園、行き交う人々
駅を支 ....
誰かに教わったわけでもなく
ひれもないのに
泳ぐ術を知っていた
不思議
暗闇の水は透明なはずなのに
烏賊墨いろ
触れる
包まれる
抱きしめられる
身ひとつだけの
図式
へその緒が ....
大寒の朝
フロントガラスにいくつもの
小さな雨粒たちが
縦に並んでいる
球体の接地面で
ふるふると
ふるえてる
ああ、ここにあったのだ
糸から外れても
ばらばらにならないで
ここに ....
冬を編む音が聴こえてくると
祈りが近い
夕暮れが愛おしい
(行かないで)
熊ノ森のはずれにあった
馴染みの毛糸屋は
廃業してしまったらしい
けれど
絶望するにはまだ早い

めぐりめ ....
ダイヤモンドの針をそっと置く

行っておいで

想い出は遠くなるばかりで
美化されたがっているのはなぜだろうか
この溝は
なぞられれば現れる道だ
ふたたび
さみしさの琴線に音を咲かせ ....
小さな手花火
火をつけられたら 
そこからはじまる
儀式
一瞬燃えたあと
丸く赤い心臓が生まれ
酸素を吸って
チカチカと
この世ではじける
火の花
いっときの命
えいえんには続か ....
雨は降ったり止んだり降ったりで
四季のある国のひそかなもうひとつの季節

室内干しの洗濯物
取り込むまえに
ちゃんと乾いているだろうか、とさわってみる

乾いているようにみえても
繊維 ....
 グミ

どうぞ、と差し出された袋のなかには
色とりどりのグミ
お祭りみたいにひしめき合ってる

青いのをひとつ
取り出して
口に入れる前に電球にかざす

ママが言った
海の色を ....
家の窓の中にいると
そこが家の眼だということを
うっかり忘れそうになる
薄いカーテンを開け放ち
風を出迎えると
人の眼も
家の眼も
まばたきする
季節のかわりめに
少し驚くようにして ....
ほこり
砂粒
いとくず
羽毛
ライ麦パンのかけら
消しゴムのかす
書き損じた紙くず
こぼしたミルクの薄い被膜
三日月の形の爪
開くことなく死んだシンビジウムの黄色の蕾
裁縫の針の銀 ....
二月は冷たい熱をまとった光
包まれた小枝は銀色の針金
青々とした空に刺さっている
そして導かれて小さな蕾がこの世に顔を出すだろう

優しかった過去の手を想う
手も語ることはないけれど
私 ....
柘榴をお目当てにやってくるヒタキは
ながら、の達人
羽ばたきながら実をついばむ
秋を経て
冬へと持ち越され
艶を無くし
死んだようになったその実は
つつかれて
したたるようなルビー色の ....
信号待ちをしていたら
横断歩道を渡っていく
誰かが捨てたビニール袋が
その足をアスファルトにつけたまま
滑るように
ゆっくりと

信号が青に変わる直前
ビニール袋は渡り終えて
私は
 ....
初冬の光は
ちょっとあたたかで優しい

川のほとりで
すすきが日光浴している

若いすすきは
つややかな穂先をしならせて
本当の冬を迎えうつにあたり
どう生きていこうかって
ささや ....
波打ち際の賑わいに飽きて
少し沖へと泳ぐ
足が地球に着かなくなれば
急に独りが押し寄せる

海は突然生き物になる
いくつかのうねりを助走にして
高くそびえ立った
生まれたばかりのその腹 ....
春は淡い
命がそこかしこに生まれては散る
風はそよぐ
樹々の葉がさざ波になる
風と水は似ている
そうかな
そうだよ
どちらも掴もうとしても掴みきれない
手のひらを開いたとたん
そこは ....
雨が降りそうだからこうもりを持っていけ
出がけにそんな言葉をくれた人はもういない

傘のことをこうもりと呼ぶ人はもういない
雨に打たれることを案じる人はもういない
雨に打たれたことのある人は ....
いつもだったら
爪切りで刈り取ってしまうのだけど
うっかりしているうち
それが
ニョロニョロになってしまったので
育てている

明日を思いわずらうなと
私の人差し指の先に生えた
ニョ ....
 明日

空は雪と一緒に

枝は小さな蕾と一緒に

冬の指は
いつかの冬の指と一緒に

夜明けを待っている

 
 ピアノ

女の子が帰ったあとは必ず
ピアノの蓋が開いて ....
もっと散歩にいきたかった
もっと抱いてあげればよかった
もっと話しかければよかった
もっと贅沢させればよかった
もっと遊んであげればよかった
もっともっと一緒に

朝に夕に
百万回名前 ....
山人さんのそらの珊瑚さんおすすめリスト(90)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
いえのにおいがする- そらの珊 ...自由詩17*25-5-7
あなたがすこしさみしいときにも- そらの珊 ...自由詩13*25-4-22
紙の雛- そらの珊 ...自由詩11*25-3-22
砂浴び- そらの珊 ...自由詩13*25-2-25
ともし火- そらの珊 ...自由詩15*25-2-16
川辺の物語- そらの珊 ...自由詩12*24-11-22
ものぐるほし- そらの珊 ...自由詩13*24-11-5
慈雨- そらの珊 ...自由詩13*24-10-4
にわくらべ- そらの珊 ...自由詩15*24-4-29
夜のテーブル- そらの珊 ...自由詩7*24-4-13
紅白もくれん- そらの珊 ...自由詩11*24-3-19
対岸まで- そらの珊 ...自由詩12*24-1-22
邂逅- そらの珊 ...自由詩8*24-1-20
もこもこ- そらの珊 ...自由詩10*23-11-17
オールドレコードに寄す- そらの珊 ...自由詩8*23-8-21
線香花火- そらの珊 ...自由詩13*23-8-14
梅雨の通夜- そらの珊 ...自由詩11*23-6-30
群青- そらの珊 ...自由詩11*23-6-9
まばたき- そらの珊 ...自由詩15*23-5-8
あさのゆか- そらの珊 ...自由詩12*23-3-10
しるべ- そらの珊 ...自由詩9*23-2-22
小鳥な日々- そらの珊 ...自由詩12*23-2-10
風の朝に- そらの珊 ...自由詩11*22-12-23
日光浴- そらの珊 ...自由詩9*22-12-12
夏の泡- そらの珊 ...自由詩8*22-7-13
赤いちりとり- そらの珊 ...自由詩14*22-4-16
蝙蝠- そらの珊 ...自由詩722-3-28
ささくれ- そらの珊 ...自由詩11*22-3-26
冬の気圧配置は次第に緩むでしょう- そらの珊 ...自由詩12*22-1-5
さみしさのトンネル- そらの珊 ...自由詩12*21-12-24

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