すべてのおすすめ
夏空の四隅に黒い塊
そこからスルスルと四本の手が伸びてきて
かわりばんこに僕の首を絞める
だから僕は苦しい
あの{ルビ娘=こ}も僕のことが嫌いだってさ
仕事をやめて
また風来坊になって
雲を仰いだら
鳥の群れが光った
へやにあったものはみんな売った
売れないものは捨てた
あの本も
あのレコードも
あの写真も
手紙も
何もか ....
「リサイシャです。」
突然の呼びかけにハッと顔を上げる
カウンター越しにその女性は佇んでいた
小さな女の子を二人連れている
一瞬 何と声をかけようか戸惑う
胸の底に沈殿している ....
犬猫とは違うことぐらい
判っているよ
※
でもね
薄汚れた服でサンダル引き摺ってた女の子
大切にしてもらっているのかな
パートのお母さんと
いつも家でタバコ吸っている男の ....
金魚鉢に金魚
上から覗き込むと金魚
胸鰭を動かし
尾鰭を動かし
背鰭を動かし
何となく静止する金魚よ。
夏だけ生きている金魚
ほんの数リットルの水に漂う金魚
横から観ると大きく見え ....
乳房をすう、
くらげを、ほどいて、
山のような女の、
小指が歩く、
水の底は、
虹がかかり、
馬がめぐる、
足のない、
テーブルで、
首を吊った、
青空が、
しずんでいる ....
いつも見ている山が、きょうは近い。
そんな日は雨が降る、と祖父が天気を予報する。
大気中の、水蒸気がいっぱいになって、レンズみたいになる。と誰かに聞いた。
山の襞が、くっきりと見えたりする。
....
見上げると
大きな夕月が青空に透けていた
東北の沿岸部が沈下したという報道のせいか
月面のいつもの痣がパンゲア大陸に見えた
再た大震災となりましたが、Sくん
どこかで元気にしていますか
君 ....
老人施設とは
終着駅のようなものとおもっていたが
通過駅にすぎなかった
口をあけたままの老女も
うつろにみえる老人も
どこかへゆく途中だ
雄々しく背中をふるわせて
幼児にむける
....
飾り部に出入りされている木の
皮をはがせば しらじらと
預けられていた夜中が
てっぺんから ひるがえり
白い髪を吐き まるまり落ちる
梳いていた指達
歩いていた足達
口づたいに行く ....
彼は初めて会った時、私をじっと見ていた。そして、
「ずっと(キミが)気になっていたんだ」と言った。
ビックリしたけれど、どこかで嬉しいとも思っていた。
それは、私を見つけた時、私のところまで迷わ ....
セミが鳴いている
それだけのことなのに
ぼくは宇宙にたったひとりだ
水浸しの裸を抱いた。夜のどくどくと凪いでいる日々だった。
川はあかるく光を受けて、真っ赤に血液のようにきっと球体をはこ
んでいく。すべての一過性がここで収縮している。看取り、看取ら
....
思ったよりも 世界はきょだいだった
わたしの知っている世界はちっぽけで
まるで うすいぼろを着ているようだった
さむかった
ほほをつたう涙だけが 温かかった
やさしか ....
今日、秋葉原の、
コインパーキングの前で、千円札を拾った。
ぼくが拾わなければ、
ぼくのうしろのやつが拾うのだから、
ぼくは迷わず拾ってやった。
千円札を拾うのは、小学校の、5年生の時以 ....
風は丘を越えて吹いている
丘を覆い尽くす向日葵は
風に吹かれていくらか首を傾げ
黄色い丸顔を撫ぜる風
道の下は荒れ地
昔昔その昔
そこは大きな畑 だった
広大な綿花畑 だった
コッ ....
キャベツむくとき
裏がわの水分があるでしょう
それをすくいとるように
いつも触れてくれた
あなた
晴れわたるほど影は濃く
それにかくれて口づけた
陽のもとでなく
影の落ちる場所に恋はあったね
頼りなげな黒い煙は
空に還ることもなく
密閉された風景の中へ
呆気なく取り込まれていった
昨日の端から一刀両断に
切り離された時空に
冬物の黒い服を着せ
ひたすら透明な汗をかいて ....
夏はとつぜん、空から襲ってくる。
風がきらきらと光って、薄いガラス片の、トンボの羽が降ってくる。
少年のこころが奮いたった夏。
トンボを逐うことが、なぜあんなに歓喜だったのか。
細い竹の鞭 ....
夜空をみると
ごめんねって言いたくなる
それは黒が諭すから
夜の空気に触れるとぜんぶ
さらけだしたくなる
それは月がみつめているから
自分は正しいと信じながら
間違ってると感じて ....
その日いつもなら
それぞれが
それぞれの場所で
夕飯を摂っている時間
私はおとこと向かい合って
注文したパスタとピザを待っていた
いつもより私はよくしゃべった
髪をきれいに固めた店員が
....
ぼくはいびきをかくらしい。
知らなかった。
なぜ、知らなかったかといえば、
ずっと、
ひとりで眠っていたから。
ふたりで眠ってみたら、
ぼくが、夜中に、
なんどもおしっこにいくの ....
観覧車が
左回りに
新しい青を曳く
真昼
女のかたちをした雲の
乳房の裏側あたりに
太陽がかくれて
鼓動している
{画像=110721225828.jpg}
鯨にある指先(地上)の記憶のように
人間にも忘れてしまった記憶がある
それはsora(翼)の記憶
身体の奥にある翼(骨)の記憶を頼りに
背 ....
かぜはなぜ
ふいてるんだろう
しんぞうはなぜ
うごきつづけてるんだろう
ほしはなぜ
そのほしをちゅうしんに
わたしがいなくても
まわりつづけてきたんだろう
....
桃のにおいの手が
空を混ぜて
はじまる
闇のなかを見つめ返す
まぶたの奥の水があり
ひとつの葉に隠されている
海岸と夜
手のありか
通り雨
....
小さい蓑でも欲しそうな猿がいる
バスで山道をたどって行くと
樹木の陰にちらりと見えた
芭蕉なら喜びそうな猿だ
猿は群れから離れたのだ
猿は群れを憎んだのだ
群れには暗黙の了解があるから ....
私は流木だった
唇の皹の上に小鳥がとまり
眠っている瞳を開けようと歌う
そして愛着のある皮膚を
剥ぎ取っていってしまう
もうわたしではない唇
しがみつく砂の粒を
数えているところだっ ....
夜明け前
蒼い空に
身を削る月がいた
誰にも気づかれることのないように
まして獣たちに さとられないように
目覚めた女が背をみせる
静まり返った山森は、眠りについたまま
星をなくした夜空 ....
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