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放浪の俳人・種田山頭火の、
昭和8年(1933年)10月15日の日記。
私は酒が好きであり水もまた好きである。昨日までは酒が水よりも好きであった。今日は酒が好きな程度に於て水も好きである。明日は水 ....
濡れた髪は ずっしりと重く
何か 不吉なものでも
背負ってしまったかのような
切迫感に 駆られる夜
ドライヤーで 乾かすと
スッキリ 軽くなるから
何かを 失ってしまったような
不安 ....
〈その1〉
乳首の無い乳房をどうすれば良いか
それは一体何になり得るか
これほど寂しい物体はない
これでは彼が愛撫を飽いてしまい
―― この上で赤ん坊は死ぬのだろうか
そんなの嫌だ
そし ....
あたしがみる夢は
いつも
途中で真っ黒になる
それは空から突然
真っ黒な布をはらりとかぶせられたように
やっと 電話が通じた途端
やっと あの人が現れた途端
やっと 抱きしめられた途 ....
蟷螂は交尾を終えると雌が雄を食べてしまうという
そんな恐ろしい話を聞いたので調べてみたのだが
厳密に言うと交尾の有無とは関係無く
雌には雄が餌にしか見えないらしい
自然界で捕食される事は滅 ....
インドから来た 一隻のタンカーが 岸壁の前に泊まっていた…
だけど海は それを知るにはあまりにも広すぎた…
私の好きだったことは 一体 本当は なんだったのだろう
季節は 流れていく
そし ....
もう終わりなのだと
言われても
私という人間は
顔では笑っています
それはとりあえず
同意の笑いです
あなたとの関係を
壊さないための笑い
すぐに終わるわけでは
ないのですから
....
窓を開ける
雲が見える
昨日のことのように
上り坂を下る人がいる
解熱剤でも飲んだのか
郵便局の職員が
自転車に乗っている
あなたのことが心配で戻ってきました
と言う男がいて
へっと思った
あたしは
その男のことをそのとき初めて見たのだけれど
まるで ずっと昔から知っているようなふりをして
腰のあたりで ....
季節は黄金色輝く稲の穂を尻目に、よくできた鳶色の瞳で追いかけるように単純には語れない 。
晴れ渡る日には地図を描いた布団を干す傍らで、照れ隠しに外へ飛び出す少年の姿も
大きく翻るスカートの裾 ....
ベランダで裸になったまま
何もすることのない私は なんとなく今日はいい気分だった
このまま死んでもいいと思った
そうして いつまでも 私は流れる風に吹かれているようだった
ぼん ....
肌を剥き
熱を忍ばせたら
恋になるとでも思っているのか
あの人なら
触れずとも
私を炙る
腐るぐらいに
あのころのぼくをときどき思い出す
お寺で不動明王をみた
石でできたお不動さんだった
こわい顔というより
こっけいなほど醜い顔をしたお不動さんだった
つぎの日図工のじかんに ....
ママは ついに
短パン タンク
にゃんも
もぞもぞ
おなかなめ
ぬいぐるみの
ファスナー
探してる
シャーっと
脱いで
でておいで
小さい
おじさん
会え ....
八月
隙間のない日差しが街を埋めつくして息をとめた地上
の生きものたちは白い化石になるだろうか
昼下がりの昆虫のように日差しを避けて地下に逃れた
人びとの背にうっすら
あの日の地核の影が ....
あなたはわたしを綺麗だと言ってくれました
だけどあなたの目指すものが美しすぎて
わたしは後ずさりをしてしまいました
あなたのためにクリスマスは
好きな色のマフラーを編みまし ....
工場の若い工員が
長細いフランスパンを
後ろ手に握りしめ
食堂から持ち場へと
小走りで駆けてゆく
グレーハウンドの尻尾のように
揺れているパンの影を見送れば
午後一時を告げる鐘が鳴る ....
流された、砂場に、
さし込んで、増える、
飛行機から、
まなざしを、
あのトンネルは、
仰向けになって、
揺れて、
思いだせない、
名前の、絞められた
首の、あふれた、
す ....
夏空の四隅に黒い塊
そこからスルスルと四本の手が伸びてきて
かわりばんこに僕の首を絞める
だから僕は苦しい
あの{ルビ娘=こ}も僕のことが嫌いだってさ
仕事をやめて
また風来坊になって
雲を仰いだら
鳥の群れが光った
へやにあったものはみんな売った
売れないものは捨てた
あの本も
あのレコードも
あの写真も
手紙も
何もか ....
「リサイシャです。」
突然の呼びかけにハッと顔を上げる
カウンター越しにその女性は佇んでいた
小さな女の子を二人連れている
一瞬 何と声をかけようか戸惑う
胸の底に沈殿している ....
犬猫とは違うことぐらい
判っているよ
※
でもね
薄汚れた服でサンダル引き摺ってた女の子
大切にしてもらっているのかな
パートのお母さんと
いつも家でタバコ吸っている男の ....
金魚鉢に金魚
上から覗き込むと金魚
胸鰭を動かし
尾鰭を動かし
背鰭を動かし
何となく静止する金魚よ。
夏だけ生きている金魚
ほんの数リットルの水に漂う金魚
横から観ると大きく見え ....
乳房をすう、
くらげを、ほどいて、
山のような女の、
小指が歩く、
水の底は、
虹がかかり、
馬がめぐる、
足のない、
テーブルで、
首を吊った、
青空が、
しずんでいる ....
いつも見ている山が、きょうは近い。
そんな日は雨が降る、と祖父が天気を予報する。
大気中の、水蒸気がいっぱいになって、レンズみたいになる。と誰かに聞いた。
山の襞が、くっきりと見えたりする。
....
見上げると
大きな夕月が青空に透けていた
東北の沿岸部が沈下したという報道のせいか
月面のいつもの痣がパンゲア大陸に見えた
再た大震災となりましたが、Sくん
どこかで元気にしていますか
君 ....
老人施設とは
終着駅のようなものとおもっていたが
通過駅にすぎなかった
口をあけたままの老女も
うつろにみえる老人も
どこかへゆく途中だ
雄々しく背中をふるわせて
幼児にむける
....
飾り部に出入りされている木の
皮をはがせば しらじらと
預けられていた夜中が
てっぺんから ひるがえり
白い髪を吐き まるまり落ちる
梳いていた指達
歩いていた足達
口づたいに行く ....
彼は初めて会った時、私をじっと見ていた。そして、
「ずっと(キミが)気になっていたんだ」と言った。
ビックリしたけれど、どこかで嬉しいとも思っていた。
それは、私を見つけた時、私のところまで迷わ ....
セミが鳴いている
それだけのことなのに
ぼくは宇宙にたったひとりだ
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