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ジョージ、君がいなくなって、今年でもう三度目の夏が訪れようとしています。
ピンタゾウザメがいなくなったことで起きる弊害は今のところ
私の生活に訪れてはいません
アインシュタインや夏 ....
藤の花に締め上げられてる杉の木が声も立てずに朽ちてゆく初夏
通学路の木の葉の影を覚えてるもう二度と通わない道
肌の色が日に日に焼けてく子供らが通りてく百日紅の下
「まあだだよ」探す気 ....
首を吊るには低すぎる木の下で
少女は一人
空を睨んでいた。
役場から聞こえるサイレンが
夕焼け色ににじんで消える頃
やかましかったセミももういない。
――もういいかい
アジサイの ....
じりじりとあがる気温に耐えかねて
とうとう藤はにげてしまった
山の中に
まだどうにか残っている
冷ややかな空気と
無口な水を引き連れて
5月の山の青です
より一層涼やかな青です
....
甘いアルコォルを摂取しすぎて
おなかを壊しました。
毒とは甘いものかしら、と思います。
夕べお隣で飲んでいた
おにいさんの顔が思い出せません。
モザイクかかったような人
私のような
....
あさ
台所に行くと
涼やかな甘い匂いがする
桃の季節だ
ダンボールの中で
熟した実が醗酵している。
触ると
産毛が密かに暖かい
桃を手にした私に
おかあさんが声をかける。
―― ....
夏の影の一番濃い部分が
凝り固まったくらまとんぼを
幼子が追う
たやすくつまめる
その黒い羽
ねえあなた
一度手にして
満足したなら
はやいとこ
はなしておやりなさいな
で ....
エレキテルな星が
空につくる星座は
直線ばかりで
見分けがつかない
発見者は
誇らしげに名前を作る
月の上には
ひるがえる旗と
消えかかった足跡
そのまわりを
ぐるぐるとまわる ....
あの頃我慢できていたことが
この頃はもう耐えられない
硝子越しに向日葵を見る
あの熱い暑い夏
やかましくなく蝉が
庭の木に止まる
あの熱い暑い夏
直下する日の光は
....
地球を覆う硝子膜が
破れると叫ぶ男がいて
そんな日はきっと
晴れだったに違いない
開いた向日葵の
まぶしいほどのイエロー
世界は今日も
腹立つほどに美しい
体の端が
セーターみた ....
昨日の嵐で庭の牡丹が萎れまして
そのくすんだ赤い花弁を撫でながら
ヤライフウウノコエ……と妹が呟きました。
その指の白さと花弁の赤さを見ながら
私は本当に彼女が愛おしいと思うたのです。
....
薄汚れた茶色の天井と
古い紙の匂いと
真新しい本の匂い
部屋の中心のストーブの上
やかんがシュンシュンと音を立てる
そのお湯で淹れられたコーヒーの匂いは
そのまま壁に染み付いて
また新し ....
橋の下に
鯨がいる。
ぬっめりとした皮膚が
ゆっくりと波うった。
大きな鯨は
泳いでいる。
きらきらと
目がひかる。
いくつもあるそれは
同じ方に
向かって流れた。
....
「あの海は何色ですか」
「鉛色」
「かもめの羽のような色です」
「あの空は何色ですか」
「真珠色」
「冷たい霧を重ねた色です」
『若いということにはそれだけで価値がある』
『たとえそれが目減りするだけの財産だとしても』
そういった彼女の小指のつめは
鮮やかな朱鷺色をしていた
赤ではなく
紫でもなく
朱鷺色、とし ....
ひらり、と
スカートがひるがえる
木枯らしだろうが
春一番だろうが
関係なく
吹く風にあわせ
ひらひらと、揺れる
その頼りなさが苦手だった
ひらひらと、揺れる
その頼りなさでは
....
県北部の山間の畠では
正月すぎ頃から
収穫されないまま
放っておかれる
黒豆が群れる
実りすぎた黒豆は
収穫したところで
赤字にしかならない
農家は仕方なく
自ら植えた黒豆を
....
ありし日の浄土の園で蓮根掘り
山葡萄ボージョレヌーボォになれはせず
生るもののない畑に散る冬紅葉
夜明けの空の色は
遠い昔に
見た標本の
大きな蝶の羽の色
{引用=赤い蝶はいないの?と
無邪気に聞いた幼子に
私は多分
嘘をついた}
白々と明ける夜に
いつかの朝へ
蝶の群 ....
声というのは
ふるえです
静かな水面に
小石を一つ
落としたような
円く広がる
その道のりで
小さくか細く
なりはしても
どこまでもどこまでも
同心円状に続いていく
とてもタ ....
完全な中庸などないと知った日に
校舎の壁は夕日に照らされ
赤々と美しかった
{引用=あの日
誰かが言った
「さよなら」に
返事をしてしまった
僕がきっと馬鹿だったのだ}
泥に被 ....
チクタクと時計の針が刻む音音もないまま積もった想い
夢を見て泣いて目覚めた{ルビ朝=あした}は遠く気づいてしまう母も老いると
竹の葉に埋もれて眠る秋の午後「もういいかい?」のこだまは遠く
....
夕暮れに一緒に歩く帰り道 二人並んだ長い影見る
目の端に映る紅、桃に白。君が好きだと言った秋桜
棘刺さる胸の痛みを誰や知る ムクドリのように色には出難きに
外にいて見るともる灯の暖か ....