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霧のなかで羽ばたく
ふるえる声
光の底に沈んだ
夜の鱗を揺らして


一枚のガラスのように
結露した
   時間
鏡にしかなれない
いつも裏返ったわたしたちの
化石のような孤独  ....
汗も涙も塩辛い
胆汁は苦い
寒さに震えるネズミ
呼吸を忘れたネズミ

肉体と精神の糸のほつれ
つぶれたトマト
窓から飛び出した冷蔵庫
氷嚢をあたためる心臓

入れ子状の死
ゴミ箱 ....
{引用=直視できない静物}
しっとりした朝だ
一夜で山の色味はずいぶん変わり
黄ばんだ光の川底
紫陽花は
くすんだ化粧の下
よく肥えた死を匂わせる

寡黙な季節の形象を前に
ついこと ....
ずっと夜に引っかかっていたい
蜘蛛の巣の落ち葉みたいに
まさぐる闇に身をまかせ
ふるえながら黙ったまま
水中に咲く花のよう
静かに息を
ひらいてとじて
やがて夜光虫が模様を描き出し
嘯 ....
秋は遠い
肩にこうべをあずけて眠る
ひとりの女のように

一匹のトンボがくぐりぬける
それ以外なにもない
綿の花をあしらった
青くくすんだヴェールの下

静かな死者の息づかい
遠く ....
{引用=眩暈と共に溶け出してゆく人生}
掌には四月の切れ端
黄金の週は鉛色の空の下
薄紅の花びらが前を横切って行く
時間は夜から型崩れを起こし
意識はカタツムリのよう
低く低く底を這ってい ....
寒さがやさしく悪さして
濃い霧がおおっていた

蜂のくびれにも似た時の斜交い
あの見えざる空ろへ
生は 一連の真砂のきらめきか

四つの季節ではなく
四つの変貌の頂きを有する女神の
 ....
{引用=二人の旅行}
迷い込んだ蝶が鍵盤にとまった
ゆっくり開いて
ゆっくり閉じて
あなたは水へと変わり
音楽は彫像となって影を落とす
わたしは感覚と記憶
去るものと共に流れていった
 ....
{引用=恋}
掌にそっと包んだ蜘蛛に咬まれて
上気した頬――金の産毛の草原へ
わたしは微睡みを傾けた
卒塔婆に書かれた詩のように
高く傾いだ空の下で

訪れては去って行く
たった一つの ....
猫はバンドネオン
彼女の腕に抱かれ
残像の融解と拮抗する
毛皮のレジスタンス


霧の池に耳を沈める
跳ねる魚
飛び立つ水鳥

昨夜の夢から浮かび上がる
白い死体
隠れた月が手 ....
胡桃の肉体が仄めかす
暗闇の膨らみの
血の残響に誘われて
月を覆うほどの錯視の群れが
歌う子宮を追い求め
少女の髪に咲くような
まろぶ光におぼれ死ぬ


裂かれた翼の間の道を
神の ....
{引用=幼恋歌}
暑さ和らぐ夕暮れの
淡くたなびく雲の下
坂道下る二人連れ
手も繋がずに肩寄せて
見交わすこともあまりせず
なにを語るか楽しげに
時折ふっと俯いて
風に匂わす花首か
 ....
{引用=むかしばなし}
幾千幾万の囁きで雨は静かに耳を溺れさせる
まろび出た夢想に白い指 {ルビ解=ほど}く否かためらって
灰にならない螢の恋は錘に捲かれて拷問されて
透かして飲んだ鈴の音も夜 ....
愛は真っすぐ丘を登って行った
蹄の跡を頂に置き去りにして
光は渦巻いている
春の風がむき出しの土を{ルビ弄=まさぐ}っている

あの日太陽を塗りつぶしたのは誰だったか
わたしの心臓を突き刺 ....
 *

青空ではなく あおそら と
くちびるに纏わる
透けた胎児 月のように

発芽を奥ゆかしくも留め置いた
――エバの種

見上げる大気の透過した青
見下ろす海の反射した青

 ....
罪人を眺めている
誰かの腹の中のように風のない夜
迎え火が目蓋の此方
灰に包まれた心臓のよう
ゆっくりと消えて往く
ただ罪人を眺めている
正義については微塵も語らない
なにかを殺し続ける ....
意識はふくらみ 肉体から浮き上る
こどもの手に握られた風船みたいに
実体のない 軽すぎるガスで ぱんぱんになった
自我――今にも破裂しそう(でなかなか破裂しない)
が 明後日の風に弄られる
 ....
手稲山の頂辺りに白いものが見える
――書置き 今朝早く来て行ったのだ
見つめる瞳に来るべき冬が映り込む
雲間の薄青い空
氷水に浸した剃刀をそっと置かれたみたいに
張り詰めて でもどこか 痺れ ....
なにもない
わたしのなかには
わたしがいるだけ
気だるげな猫のように
死後硬直は始まっている
小さな火種が迷い込むと
すぐに燻り 発火し 燃え上って
肉の焼ける匂い
骨が爆ぜる――生枝 ....
台所の窓辺に
葱だけが青々と伸びている
ほかの葉っぱたちは項垂れて
もう死にますと言わんばかり
葱だけが青く真っすぐ伸びて
葱好きではないけれど
すこし 
刻んでみたくなり 
ぱらりと ....
なだらかな丘を曲がり下る路のむこうは見えない


 {引用=突き当たり 川沿いのT字路を左折する
右手には野菜や果物を売る民家が二つ三つ軒を連ね
白壁が所々すこし剥げたカフェらしき店が一軒あ ....
ほそく
だけどまわりの庭木よりたかく
そよいでいる
白樺の梢の辺り
黄ばんだ葉の疎らな繁りにふと
青いまま
いくつか
乾きながら
さわさわと光にそよいだころの
面影を残し


 ....
ハトが二羽歩いている
なにもない場所で
なにか啄みながら
啄まずにはいられない
生きるために
地べたを歩きまわらずにいられない


うまく歩きまわるには
首をふり続けずにはいられない ....
生神の鍬に
ぬっくり耕され
おれは畑になった
ねじ切られた灌木の陰茎に
スズランテープが引っかかって
女の声みたいに風がふざけている
ムクドリ毛虫食え
ミミズ食うな
おれはミミズの糞を ....
覚め切らない皮膚 あまおとの影ふみ
ギターはたどる言葉のない遺言を

心から剥離した音は捨て猫のように理由を探さない
薄物のヒューマニズムを着せてはまた脱がす
週末の脈略は絶たれどこか乾いた ....
少年時代 
今とは違う奇妙な生き物だった


そのころ家の近くには古い寺があり
髪の毛が伸びると噂される少女の人形が納められていた
人形を実際に見たことはなかったが
子どもたちが人形の存 ....
苦行に明け暮れサラリーマンは電車の棚で蛹になった
無関心という制服に包まれたシュークリーム並の少年たちが
耳におしゃぶりを挿したまま喃語と一緒に痰を吐きまくるから
ユニクロを着た老人たちの血圧は ....
義姉の手を握った
痛くない程度に強く
妻以外の女性の手を握ったのはいつ以来か
兄と義姉が結婚したとき
わたしは高校生だった
男二人兄弟だったから
「{ルビ義姉=ねえ}さん」と呼ぶのも恥ずか ....
陽のあたる書棚 憩う一羽の本

タランチュラのような手が二つ

美しい表紙を捕まえると

隙間なく閉じられた頁に太い指が滑り

弛緩した貝 白いはらわたよ

青く刺青された文字は星 ....
濃密な雨の拘束に
獣の目をした少女が一人
茄子の花のように濡れたまま


時の梯子が外された場所で
僕はポケットの中
ことばを撫ぜ回すだけ
山人さんのただのみきやさんおすすめリスト(64)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
迷宮の蜂- ただのみ ...自由詩5*24-5-18
コールドスリープダウジング- ただのみ ...自由詩5*24-1-6
美しい灰- ただのみ ...自由詩8*23-10-21
夢魔の膝枕- ただのみ ...自由詩9*23-10-8
孤独なポーン- ただのみ ...自由詩5*23-9-30
砂金採り- ただのみ ...自由詩2*22-5-1
いのちの湿度- ただのみ ...自由詩8*21-11-13
生前供養- ただのみ ...自由詩8*21-6-19
気化の誘惑- ただのみ ...自由詩4*21-3-21
三面鏡に挟む春- ただのみ ...自由詩4*21-3-6
Xと書かれたジャムの小瓶- ただのみ ...自由詩4*21-2-20
夭折- ただのみ ...自由詩10*20-9-12
頭の上にかもめが落ちて来る- ただのみ ...自由詩8*20-6-27
術もなく- ただのみ ...自由詩10*20-5-3
201912第二週詩編- ただのみ ...自由詩6*19-12-15
愛や情けを書けば良いそれは君らの仕事だから- ただのみ ...自由詩13*18-4-18
極めて人間的- ただのみ ...自由詩15*17-11-8
白髪の朝- ただのみ ...自由詩14*17-10-18
喚き散らす肉- ただのみ ...自由詩14*17-5-13
- ただのみ ...自由詩18*17-4-26
曲り下る路のむこう- ただのみ ...自由詩9*17-4-5
青いままで- ただのみ ...自由詩11*16-11-5
歩けや歩け- ただのみ ...自由詩14*16-11-2
土人- ただのみ ...自由詩12*16-3-30
理由のない虹- ただのみ ...自由詩12*15-10-24
精通- ただのみ ...自由詩18*14-10-21
快速処方箋- ただのみ ...自由詩23+*14-9-27
義姉- ただのみ ...自由詩17*14-7-16
朝の読書- ただのみ ...自由詩21*13-11-12
消せない- ただのみ ...自由詩22*13-9-28

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