すべてのおすすめ
瞼の奥で失っていたことに気づく。しかし、
それが、髑髏を巻いていたひと夏の感情だ
ったのか、それとも、行きずりの女が床に
棄てた水着の匂いだったのか。朦朧と立ち
込める喪失感だけが、ドラム ....
キュウリ空の晴れやかなある日
魚々しい海へ旅して出ようとナスさんが言う
こんな世の中じゃあ 生きていたって仕方ねえ
せめて旅に出て草枕、野菜らしいおナス人生を ....
窓に映る窓に映る窓に映る窓の奥の
水も枝も光もひとつに
人の外からこちらを見ている
無いものを踏むたびにたちのぼる
生きものの夜
かがやきのない星に満ちた
小さ ....
雨粒がダンスする
黒い傘の谷間を
小さな黄色い雨合羽が
流れてゆく
五線譜を進む
お玉杓子のように
あちらこちらに
メロディは揺らいでも
目指すのはただひとつ
駅の屋根の下
....
だいどころで
ピアノをひいている
きょうはやけに
かなしいねいろで
しなずにすんだいのちを
しょくたくにならべていく
おもいだせない
メロディのように
忘れかけていた三行の約束を
同時通訳していく
身体が沈んでいくのがわかる
劣化して重たくなった雨傘みたいに
トイレットペーパーが
自動で巻き取られる音がする深夜
ブルペン ....
重ねると傷になるからね
特に完熟
「桃太郎」は品種名
「トマト 妻せつ子」はブランド名
品種による
大玉、ミディ、ミニは、あるけれど
それだけではない、育て方で
品種の普通より小 ....
{引用=
せかいのあちこちに
内緒で敷かれている
内緒の線路を走行する
打ちっぱなしの
コンクリートの
でっかいとんねるは
せかいの中身を
くり抜きながら
こわれた部分を直して
....
かつて、私の泣き声の
代わりに歌ってくれた小さな川
その横を闊歩する
今の私の泣き声は
私の子宮にうずまいているから
軽やかに
川縁を散歩することが
できる
水の流れる音
さらさ ....
ふと、とまる
みえない
レールのうえで
きみとなら
どこにでもいけた
どこまでも
いけたはずなのに
ぼくのきしゃが
とまらない
人間は 誕生日から 次の誕生日までの間に
普通に生きてさえいれば
少なくとも 2%ぐらい能力的に成長するらしい
毎日で割ってみれば 僅かな数値しか出ないけど
日々 起きるたびに あ ....
死んだら二十八グラム体重が少なくなるって
それがひとのタマシイの重さらしいよ
と、どこから聞いてきたのか
娘が言う
父はおもう
タマシイに重さがあるなら
物質 ....
やねのうえを
あめがあるいている
なかにはいりたくて
しかたがないのだ
しめわすれたまどから
なかをのぞいて
さんのあたりを
なみだでぬらして
色鉛筆のケースの中で
弟が眠っている
一番落ち着ける場所らしい
父と母はテレビを見て
時々、笑ったり泣いたりを
繰り返している
ケースから出された色鉛筆で
僕は絵に色を塗る
....
まだ冷え切った館内に、朝九時を告げるチャイムが
流れた。つづけざま、非常警報ベルが鳴動を開始した。
その音を合図にフロアにいる者たちはみな申し合わせ
たように、作業帽を手に取って立ち上がった。 ....
まりが
はずんでいる
えきのホームで
けいたいでんわを
いじりながら
まりが
でんしゃにのる
まんいんでんしゃに
おしつぶされそうに
なりながら
まりが
ころ ....
眠りの城に密かに隠された王女のように
すべては噎せかえるほどの薔薇の足下に
水たまりの中でひねくれた針は不規則に
まだらな時をゆっくり刻む
ひとひら、あるいは幾千枚
モノクロームの雨 ....
マルゲリータ
シーザーサラダ
マンゴープリン
おそろいの指輪
おなかいっぱい、やわらかな夜
二番煎じのお茶が
案外おいしかった とか
立会川からの車窓に
富士山が見えた とか
そういうことで
日々が過ぎてゆけば
あのひとも
泣かずにすんだのかな
ときどき
....
黒猫は廊下に佇んで、
じっとこちらを観ている。
部屋の中にいても落ち着かない
餌をくれてもあまり食べない
探し回る 探し回る
自分の目が開く前から
抱いてくれた母親を
不 ....
父のためにメザシを焼いている。
メザシから出てくる
もうもうとした煙
父のためにメザシを焼くなんて
つい最近までは
思いもしなかったなあ
留守中の父が戻ってくるまでに
焼いておいて差 ....
日曜の朝早く
研修に出かける君が
遅刻しないか心配になり
僕も6時にセットした
目覚まし時計の鳴る音に
寝ぼけ{ルビ眼=まなこ}で身を起こし
モーニングコール代わりの ....
廊下に立っていなさいと怒鳴られ
私と隣りの席のこんちゃんは
はっと青ざめ しーんとした教室を出た
社会の授業で地図張をひく練習中
いろんな場所を見ていた私達は
すっかり楽しくなって
あ ....
青い便箋に綴られた
君の手紙を読んでいたら
背後に置かれたラジオから
Moon River が、流れた。
君のお父さんに書いた手紙と
僕のつくった詩集に
想いを震わせた君 ....
図書館前は池になっていて池の中に鯉が住んでいる。
何年も公共施設の一部として生きてきた鯉たちは、
人の気配を感じると、一斉に池のふちに近づいてきて
ぱくぱくと口をあける。
陸の子供は何かあ ....
この3週間
あたしは
貴方から離れなかった
出張の時以外は
南の部屋で打撃を受け
北の部屋へ泣きついた
さらけ出す
情けない みっともないあたしを
ごめんなさい
....
金物屋のひさしは低く、店の奥行が薄暗き影を曳いている。
看板に金物屋と称してはいるが、店には鍋、ボウルやらと一緒くたに
タオルにモップ、ティッシュ、それにエプロンといった日用品が
一通り並べられ ....
むぎわらぼうしをかぶって
うみにいったまま
かえってこない
あのなつのひのかぜ
まっくろにひやけして
かえってくるはずだったのに
ぼうしには
なまえがかいてあるので
....
あなたはわたしに「ななし」と名付けた
それ以来わたしは薄い皮膜を漂っている小さな虫。
光らない星、開かない窓、結ばれない紐、濡れない傘、
ない。ない。ない。ということでしか ....
風邪を引き発熱
いつもの常用薬を取りにいけない
本人でなくては
許可がでない薬
1日目なんとか
パキシルを残して
抗ウツ剤1錠で乗り切る
2日目 パキシル1錠のみ服用
風邪 ....
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