すべてのおすすめ
乾いた靴がまた濡れ始める頃
少女はもう一度溜め息をついた
外では雨が降り続いている
柔らかな毛布が本当に好きで
夕方が来る前には眠っていた幼少の頃
いつの間に踏んだのだろうか
....
夜中に目が覚めて階下に行った
妻が台所でひとり
豆乳を飲んでいるのが見えた
湿った蛍光灯の下、色白の肌が
必要以上に青白く
そして細く感じられた
声をかけずに再び寝室に戻った ....
ことばは、とても正直だから。 ほんとうのことを伝えてしまう。おかまいなしに。
たとえば、メール。絵文字があったりなかったり、そんなことは問題じゃない。何かが違う。それがどこなのか、うまく言えない ....
海岸線のガードレールでもなく
尾根を越えていく高圧線でもない
届こうとするものは
いつも不完全で ただ
どこか、まで続いていく
アルシオネの円周でも
火星が結ぶ軌道でもない
繰り返す ....
やさしいんだね
と、言われれば
悲しそうに首を
横に振る
君には
四月なら
さくらの花びらが
五月なら
ハナミズキの花びらが
道いっぱいに散らばって
通れない
....
英会話学校のパーティで知り合ったバーナードは
JICAの研修生として来日していた獣医のエリートで
扉という扉を開けてくれ
食事のときは女性の椅子を引く
印象的な紳士だった
街のカフ ....
川沿いの道を
からんころんと下駄鳴らし
着物姿で{ルビ闊歩=かっぽ}する
5才の姪のかほちゃん
ほどけた帯紐に
つまづかないよう
後ろから追いかけて
地面に垂れた紐を持 ....
老人が馬に乗ってすれ違っても
別に驚かないような、日だ。
薄暗く、降ったり止んだりの雨
いつまで経っても乾かない、日だ。
とぎとぎの車の音はいやにでかい
のに、通り過 ....
しょっぱい雨が降った朝
空に魚が泳いでた
ピチピチの魚
しょっぱい雨は降りやまず
陸で人が平泳ぎ
ピチピチの女
びっくりして
飲んだ飴玉は
魚の鱗の味がしました
雨が降ってきたようだ。
誰もが、傘を差している。
ぎらついた欲望で財布を握り締めている。
君の見つめた世界は、
ショッピングモールで安物を売ることしか出来なくなってしまった。
集 ....
昨日からの鎖が千切れていくのがわかりますか。
俺はいま、緊張感をもってびしびしと実感しているのですが。
聞こえない谷へのご案内。 ....
「猫を探しています」
と書かれた手製のチラシが
郵便受けに入っていた
「名前 小太郎 茶虎 体重4kg」
茶虎の猫といったら
このあたりでも野良でたくさんいる
正直見つか ....
人がいた
音を立てていた
枯れて崩れる葉を踏み
枝を折って歩いていた
いらつく声を
口から発していた
連中は音を隠さない
俺を呼んでもいいのだろう
喰われても構わないのだろう
....
「ふわりとうかびたい。」
わたしに真っ赤なルージュはにあわ
ないから。
何を期待、しているの?
(頭上の世界をささえる柱は有害な気がしてならな
....
近くの。通勤の途中にラブホテルが3軒、軒を並べてるんだけど。
まわりがふつうの住宅街なのでおかしな感じだけど、もとはといえばこのあたり、細い路地の入り組んだ下町だったからね。もともとからあるんだ ....
ふいに
あなたは苦しげな表情
を
しながらその
裏で
屈託のない笑顔を孵そうとするのだろう
混乱するじゃないか
混濁するじゃないか
感性が
僕の
....
昼すぎにお母さんから「何が食べたい?」と聞かれて「オムライスが食べたい」と答えたから、僕は今日の晩ご飯はオムライスじゃないかなと思う。
スプーンで
粉っぽいくせに
白いお砂糖と
むりやり
無理矢理だよ
ぐるぐるってさ
なんとなく
計算なしに
ぐるぐるってさ
ねえ
私たちに似てるかも
なんてこと
なかったのにさ
....
山のあなたの空遠く
はっきりはっきり目が覚める
布団を押し上げて
燃えてしまっている
あなたが幸いではなく
きがかりだ
何の関係もなくきがかりだ
そう
そういうこと
きがかりだ
み ....
あったかくて親密な壁との対話に
身体の内部が地震になるほど
たましいがふるえすぎて沈んでいたんだ
そろそろ何か、雌豹なムードを求めたくて
つっかけ履きで捨鉢気分で
買い出しっぽく突然外へ抜け ....
小学生の頃、父と釣りに行った
昼過ぎから夕方まで
魚は一匹も釣れなかった
はら減ったべ?
タバコを吸いながら父は
僕にそう聞いた
きゅうにおなかが空いてきて
おもわず
....
長い間待ち望んでいた瞬間が訪れる
受付の看護士さんに案内され
病院らしい匂いのする待合室の長椅子に
わたしはひとりで腰掛けていた
手術自体はあっと言う間ですから
こころにメスを入れる ....
砂漠の真ん中に
ペンギンの死体があった
穏やかな光の祝福を受けて
左右非対称に腐れていた
耳をすませば
崩れる音も聞こえた
老いた男はか細い腕で
窓を閉めた
風で砂が入るのを嫌っ ....
小指をなくしてしまったのと
あなたは淋しそうに言う
けれどあなたの手には
たしかに五本の指が
すらりとあって
僕からみると
ほかの指より少し短いその指は
いちばん右といちばん ....
殺んのかコラッと言ったものが殺られた
バーテンダーが殺られるべくして殺られた
抗争が殺られるまで始まった
沖縄の青い魚がモリで射抜かれた
太陽が昼を殺った
事務所が爆 ....
・
小さい頃
コーヒーとは
空色ののみものだと思っていた
すくなくとも
母親が眠れない夜にいつも作ってくれた
ミルクコーヒーは
曇りの日にふと覗く
青空の色をしていた
それなのに ....
るいるいと
つみかさなり
荒涼をうめつくす石
これは誰かの
さいぼうであるか
それらの石が記憶の
かけらであるとしたら
この場所に吹く風も
意味を孕むであろうが
ただ過去を予 ....
人々の行き交う夕暮れの通りに
古びた本が
不思議と誰にも蹴飛ばされず
墓石のように立っていた
蹴飛ばされないのではなく
本のからだが透けているのだ
聴いている
時 ....
傷口をいじれば
いつまでたっても治らない
そう知りながら
この手は気づくと触れている
もう忘れていたあの日の傷跡を
いじり過ぎた浅黒い影が
遠い過去の空白に
うっすら ....
本のページをめくる
あなたの指が
風のようだと思った
あなたの中で
長い物語ははじまり
長い物語はおわる
本を閉じると
あなたはすっかり年老いて
物語のドアから出てゆく ....
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