顕微鏡を覗くと
たもつ

 
 
忘れかけていた三行の約束を
同時通訳していく
身体が沈んでいくのがわかる
劣化して重たくなった雨傘みたいに
 
トイレットペーパーが
自動で巻き取られる音がする深夜
ブルペンでたった一人
来るはずの無い球を座って待ち構えているのは
キャッチャーの大切な友だち
 
窓ガラスに挟まれた仔牛をかじり
スルメの味がするので
乾物!と泣き出してしまったのは
どこの誰だったろう
 
壊れた椅子を顕微鏡で覗くと
天体望遠鏡を覗いている昔の自分と
レンズ越しに目が合った
いろいろなことがあったよ
いろいろなこと、としか
言えないくらいに
 
 


自由詩 顕微鏡を覗くと Copyright たもつ 2010-11-04 21:47:12
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