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秋に
葉と葉が
まだ生き合っている
その音が、して
その影と影が、あって
その匂いまでが、生じていて
生じては離れてしまうそれらが
見つめ合っていると ....
夜の更ける頃
君の身体から
今までに聞いたことの無いような
音が聞こえてきた
安らかに君は君の中で
溺れているのかもしれなかった
+
縄跳びの回数を
数え間違えて
少女はずっ ....
学芸会でぼくは
ぼくのお母さんを演じた。
ぼくの演じたお母さんは絶賛された。
でっぷり太っているが清潔である。
石鹸の匂いはしないが朝ごはんの匂いがする。
ぼくの間違えた答案を間違え方が ....
都市では
すべての生きて動くものはその死の時に
鳥によってついばまれる
そのようにして葬られる
人も 例外ではない
夕陽が昇るように沈み
そのかたわらでくるった金星が
美しくほくそ笑む時 ....
たとえば
あなた宛てにメールを出して
それが
行方不明にならない
しあわせ
届ける
ことはできるんだ
つながってはいなくても
時折
いたずらな風 ....
長い長い坂道を
あなたと手をつないで歩く
冬が終わりかけて
ぼんやりとした太陽が
あたしたちの後ろをついて来る
あたしはもう、終わりだと思ったし
あなたはまだ、何も始まってないと言 ....
どうして夜遅くになると、街灯に
目を奪われたりするんだろう―
都市、男が細い路地からアパートに向かって
詩を暗唱している場面に出くわした。
溝川の底がくっきりと見えたような、
しかも ....
のろのろ時間は僕の前に
のっしり座り込んで
僕のことを見ているのです
壁の向こうには未知の世界が
こじんまりとあるはずで
そこには僕は行けないのであります
頭が ....
化石を拾う
改札口は静かで
足跡ばかりが通り過ぎていく
ぼくはそこで案山子になっている
へのへのもへじ
通り過ぎてく人に
顔は何気にそう書かれてしまったけれど
何か無限のようなかなし ....
ヘドロ化した日常に膿んで見上げる
ちっぽけなあたしから
ぽ
と
ん
と
散った恋心
真っ青な空に溶けて行く
気の早いケヤキは紅 ....
何時ものように口ずさんだ歌は
受けとめてくれるはずの
君の笑顔をすり抜け
秋の日の溜め息となる
少し言い過ぎたのかな
でも一度口にした言葉は
もう取り消せなくて
気まずい思いを残 ....
板壁に花の影が映っていた。
花は微かに揺れていた。
もうすぐ冬になり枯れてしまうから、
寂しくはないだろう。
古びた板壁も10年以内には崩れて無くなるだろう。
でも今はまだ花は咲いていて、影 ....
眠っていたら、声がした
隣の部屋に、営業が来ている
マンションは鉄筋コンクリートだから
声がとても響く
内容はわからないが誰かが営業している
わたしはドアの側まで行き耳を押し当てる
明るい ....
夜がやって来た
挨拶がわりに
手元にあったまたたびをさしだすと
なんと 長い舌を出して べろっとなめ取った
裏返しになってよだれを流し
でろでろになったところを見ると
どうや ....
人間は
立ち止まってふと空を見上げる
地球上でたったひとつの
いきものです
夏の朝―薄暗い夜明け。伸びてくる
陽射しとともに加波山神社の鳥居をくぐると
先客の爺婆達が、木陰で賑やかに笑っていた。
それから間もなく、鉢巻巻いた先達さんに
御呼ばれした座敷の上では皆、お茶 ....
太った男の人が
日向で陽の光を浴びて
まだ少しずつ
太っている
やがて坂道経由の犬がやって来て
すべてを食べてしまった
+
お座り、が得意な子でした
お手、もしたし
....
真っ青な空が広がる秋晴れの日
息絶えた老婆は白い{ルビ棺桶=かんおけ}に{ルビ蓋=ふた}をされ
喪服の男達の手で黒い車の中へ運ばれた
人生の終止符を告げるクラクションが低く鳴り響き
親族と ....
インターホンが壊れてしまって
不在票ばかり、溜まってゆく
ドアをノックする手を
誰も持たない
再配達を
今日は頼んだから、
夕暮れにつづく時刻に
言い訳を抱えて
ドアの内側に寄 ....
葉擦れの赤錆は
はじめは
軽い混入だった
冷たい赤い陰影を増してゆくのは
葉擦れの色として微かに現れた感情の
冷たいことを、赤いことを
葉が何度も抱擁するからだ
それでも ....
じゅぶつをつくってごらんって
くりはらせんせいが こっそりおしえてくれた
おとなになって たいせつなひとができたら
そのひとだけにみせるんだよ
すてられてあったもの
たぶんほ ....
夕方近く、観覧車はゆっくりと周る。
空は水色、明かりを点けている。
もっと失速してもいいはず。男と女はそう思う。
その愛が叶うといい。いとも簡単に。
ゲートの外でこだましている―、恋は水色。
....
なるほど 天文学者の言うとおり。
見ることの半分は想像力が問題となる。
夜中に女は月を見ていた。
双眼鏡の形にした手のなかから。
あるいはそう―、恥ずかしがる少女のように
顔を覆ったやわ ....
詩を趣味にして十数年になる。はじめたときは、「これはお金のかからぬ趣味だわい」などと思っていたのだが、続けてみると、意外とそうではない。定量的にはおもわず本を自費出版したことによる数十万の出費があげ ....
雲の
静かな暴走
高い青へ青へ
ゆけない、わたしの上に
上空があって
午後、
稲穂というよりも、風だった
肌が痛いほどの
午後だった、秋だった
その風 ....
涙は
流れることを許されず
瞳にとどまっていた
雨が
かわりに泣いてくれたので
辛うじてプライドを保っている
物語は
最終章を目の前にして
頁を閉じられた
栞を
....
まるであなたの
唇のような色でした
10月
神様のいない月に
願い事は増える一方で困ります
去年きれいに咲いた
シクラメン
冬に灯りをともすようにして
春先まで ....
何かが焦げたような臭いがする
最初に気づいたのは
たったひとりの 男だった
どこにでもいるようでいて
どこにもいないような
若いひとりの 男だった
男は狂っていたのだろう
その臭いに鼻を ....
折れ曲がったあなたの身体を
まっすぐにするのが
私の仕事
あなたは
あなたの意志を持たない
あなたの影になってしまった
その瞬間
私たちは知ることになる
私たちが
実体と ....
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
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