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まだ"野ばらの蔓"通りがレンガ敷きでなく
拝石教徒が万象夢想論者より幅を利かせていた
そんなとても古い時代のお話
緑の丘のてっぺんの
ねじねじばなの塔の ....
碧の海 砂の珊瑚色
青深き遠 黒深き深
板根のもごよう森の床
少女の裸足
太陽の斑点と汽水域
泥を馳せ蟹をとらえる
森の精が瞳を閉じたまま
揺らす少女のキャミソール
鉛 ....
そういつも野にいれば
季節の移り変わりが さぞよく分かろう
などと申されるかもしれない
けれど秋は
一時の眩暈のようなもの
縷々たる乙女の絹髪の ほつれた枝毛の ....
君待つ 夜守りに
世話好き やもり
いのちもつきよと
宵待ちばな 咲き
あらこんばんは
あらおひさしう
あちら こちらと
たがいに行き交い
あくべきあらねの
....
夕立に灯す 命や
ほたるぶくろの ほのあかり
*
ゆうやけ 山の向こうから
風を呼ぶのか ひぐらしの声
あさやけ こどものはしゃぎごえ
まけじと陽気に あぶ ....
公園のマロニエが葉枯れを始めたのは
この夏が乾きすぎるからだけではあるまい。
錆びついていくあの緑を眺めていると
胸を吹き抜ける地中海の風も止んでしまった。
薬草園のグリーンハウスで ....
何か採れたか
という声に振り向くと
土手の上にいたのは
夕焼け色の親父であった
うす絹の雨の向こうで
君はほのあおい街燈を見上げながら
卵色につめたく熱せられたそれを
死にそうなけもののように銀鼠色に湿るそれを
ナイロンでつつんだ胸もとに抱えて立ち
....
王は玉座の上にあぐらをかくという、実にやんごとなき姿で悩ましげな溜息をひとつついた。
やんごとなき王のやんごとなき御尻のやんごとなき御穴の御周囲に出来たる、やんごとなき御痔疾のせいではない。 ....
その昔も昔には
あの白く大きな花の
ほっこりと黄色い{ルビ花芯=かしん}には
ひとつにひとりの乙女が生まれ
若者たちはその花乙女らを嫁にせんと
競って{ルビ夏藤=なつふじ ....