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毒があるんです そういって
その花は泣いた
拭っても洗い落としても
緑の茎を伝う紫の雫
花びらの裏側に
にじみ出てくる薄暗い素性
どうしても許せないという
戸惑い 悩み
毒などない振 ....
夕暮れの表層に漂う
たましい
どんな形容詞だろう
それは乗りものとか
愛とか
旅人なんかの様子をあらわすのかな
たましい林檎
いけないと知ったはずなの ....
好きにとどかなかった恋
今年は咲かない紫陽花
傘の下で雨宿りする雨
見えないテレパシー
あなたにとって何度目の夏?
市営プールに沈んで降水確率100%と笑う私 ....
タイムループのあなたは
何度も私に会いにきてくれた
いつも結末は違ったけれど
その度に、私は
あなたのいない6月28日の朝を迎えた
「なぜ記憶は遺伝し ....
生まれてこのかた
演じなかった日など無い
ダグラス氏の小さすぎの雨傘
左肩ほぼぜんぶ濡らしながら小さすぎの
雨傘に若妻と生まれて間もない赤んぼうを
入れて歩く ゆっくり
妻も赤 ....
芝生はいい
寝転がって
僕たちは笑う
とくになにがあったわけでもないのに
ただ笑って
じゃれ合って
空を眺める
雲が何にでも見えた
アイスクリーム
蛇の目
ありえない獣
五本 ....
もしインターネットに出会ってなかったら
詩を書いてなかった
と
私はそう思う
私はけして詩を愛してなんかいないと思う
ただ強く自分にこだわっていたいだけ
私は有名と呼ばれる詩人の有 ....
声と声が木霊する街角で
チョークを引っ張り
路上に描かれていく線と線
子供はガッタンゴトンと身を揺らし
列車はゆっくり出発する
世界が微睡む午睡時、
すべては無垢に浸されて
....
二つ卵に割れて流れるに身を任せる
十日前の新月だった
流れは巌に砕けあたりの身をちりばめる
風の囁きをきいた
蓮の葉につか ....
青、
樹間に揺れ
白い巨鳥、
羽ばたいて
僕は行く
天に呑まれ
光の矢、光の矢!
蒼穹は割れ
漆黒の宇宙が唸っている
小雨つづく六月、小さな
悲しみが路傍に立っている
嘘をつかれて、嘘を信じたのは
あなたの涙があまりに寂しげで
それが一番うそっぽいから
しずかに自死しようと歌った
私は私の ....
あじさい柄の、
日傘が咲いています。
梅雨の間の、
晴れの日の、
左目が痛みます。
婉曲な月が浮かんでいる
高橋留美子とつげよしはるが好きで
藤原新也と東京漂流する夢をみる
彼女の方程式は誰も試さないほうがよい
ゆれうごく等記号の
ちっちゃな解決なんてほっとけばよいのだ ....
蜘蛛を決して殺さないこと、幼き夏の夕に僕は僕と約束をした。
左右の小指で指切りをし、指が切れ、僕は8本指の少年となった。
テーブルの上に並べられたディナーを
ナイフとフォークで切り分けていく
音は立てない クロスは汚さない
躾けられた習慣は簡単には抜けないね
足しげく通った放課後の図書室で
難しい言葉をいく ....
剃刀よりも切れるかみそりあれば
この腐った縁も切り裂けるかな
人間よりも人間らしい人間
それは人間じゃないかもしれないけれどさ
家のそばの立ち木に落ちた雷
父親の怒りを買った拳骨
母親 ....
世間ではまだまだだというのに、
給付金がぶじ口座に入った。
暑いので冷房入れたら、エアコンが壊れた。
死ぬ気のない自分は、
死ぬ気で、物事を考えたことがない。
殺す気で白人警官は、黒人男の首を、
殺す気で踏んづけた。
眠らせる気で夢魔は、女の胸を、
眠らせる気で踏んづけた。
....
まいにち鉛筆を削る
一本でいいんだ無心に削る
まいにち本を読む
一頁でもよくてジャンルも問わない
カレンダーがひとつづつ塗りつぶされてゆく
でも鉛筆を削らないと本を読まないと墜ちてゆ ....
最低な 最後の恋さ 内定さ
さいていな さいごのこいさ ないていさ
遠く日々ループする氏が記す、プール響く音
とおくひびるーぷするしがしるす ぷーるひびくおと
....
抒情という故郷にはもうかえれない
父母を墓苑に棄てた罪状は計り知れない
閉ざされた街に住むと
誰ともつながれないようになる
パッケージされた夕食が配信で済んでしまうのなら
目玉焼きと ....
今夜は魚の塩焼
ちょうど良く焼き上がって
美味そうだ
食べようと箸を近づけたそのとき
そんなはずあるまい
魚と目が合った
どうかしたのと向かいの母が尋ねるので
なんでもないよと ....
世界は眩暈がするほど傾いていて
正解な円など誰にも描けやしない
眠りの中に真実の夢は芽生えず
寂しい亡霊たちしか生きていけない
それでも風だけは懐かしい痛みを
お前に与えてくれるだろうか ....
今日も世界のどこかで雨が降る
泣き言は泣いて言えと
言わんばかりに
今日も世界のどこかで花が咲く
絶望の淵にも
隠せない美しさ
今日も世界のどこかで朝が来る
私が死んだら
きっ ....
果てしない空にいる
姿なきしゃにむに
あるときは
つまづいて転がっていく石ころ
あるときは
風が止まったやにわに交わすキス
ときどき現れては
影だけを残して
もとからいなか ....
降り続ける雨は永遠の化身
わたしたちは閉じ込められている
どこかで花の匂いがするけれど
確かめに行くことはできない
濁った窓の外から聞こえてくる
心を削り取る無数のノイズたち
に耳を傾 ....
引き出しの隅から出てきた
100円ライター
大学生の時に
二箱吸ってやめた
ラークマイルド
高揚もリラックスも得られず
友達と一緒に手放した
十年振り
試しにと
でも
火は ....
イタドリ
への呼び掛け
イタドリ
からの応答
脳内に再現を試みる
すると現れる
囚われる
熟語
観念
の
繁茂
群生
侵攻
旺盛な生命力
厄介者
文字を消去して ....
十四時
隣人の怒りはもっともであるが
耳を貸す者はいない
偏平足で受け止めた春風が
到達した夢の中
通りすがりの戦争により
一変した世界
停滞するわたし
蛙が涙で訴える綺麗 ....
新年 開けて、街 静か
枯れ葉サクサク踏む森も
川沿い遊歩道歩く人も
透明レンズの瓶底を
斜光に照らされ輝いて
無音無音、また無音
青く濃くなる天空を
見上げ私はベンチに座り
ゆったり ....
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