初東風が撫でる黒髪りんご飴
家に帰って、腰を下ろし
一才の周をだっこすれば
小さいいのちの温もりが
このお腹にあったかい
この両手を
短い足の膝下に組んで
右に左に、ゆさり、ゆさり
パパは君の ....
おかあさんが家に電話して、おばあちゃんが元気そうだったから、このまま買い物に行くことになった。動きはじめた車の窓ガラスをいっぱいにあけて、わたしは猫又木山文化会館の三階をみあげたの。
あっ、だれ ....
大好きな人よりも本当は
お弁当の方が好き
はっきり言ってももちろん愛は消えないさ
僕の方のね
でもさ愛がはっきり確かめられるんだ
たとえ見栄え悪くてもね
おかずはいいさはっきり ....
雑木林に捨てられた
大きなブラウン管テレビが
ただ転がっている
近づいて中を覗くと
ガラスの外には
私の知らない家族が映っていて
こちらを何も考えずに
ぼうっと
のぼうっと眺め ....
おっ 雪
景気は どうだい
見りゃあ分かるだーん
どかーんと絶好調よ
そうだな
まだ まだ
いや今日は もういいと思う
まだ まだあー
....
一人
見えない光の向こうを見ていた気がする
東洋人の
格子柄のシャツが無数に行き交う街で
水商売以外に見つからなかった
仕事は
疲れ果てた僕は 暗い街を練り歩いていた
一人で ....
初富士を拝みに昇る歩道橋
おじいさんもね
おばあさんもね
昔は若かったんだよ
昔っていつ
五十年ぐらい前かな
五十年ってどれぐらい
年輪五本ぐらいかな
花が十回生まれ変わるぐらいかな
おじいさんもね ....
戦中・戦後を生き抜いた
ある詩人が世を去った後
長い足跡のつらなりと
ひとすじの道の傍らに
彼が種を蒔いていった花々が開き始める
今迄の僕は
別の場所で夢を求めていたが
....
私は
空に浮かぶあの太陽が輝くのを見て言葉をはく
言葉から自由になる私がいる
自由になる私もいれば
言葉は私を自由にしているとも
そうではなくて
私を思いから解き放つこ ....
季節の車輪を転がしながら
時代の坂道下って降りて
さあ年の終わりと始まりのテープが切られました
あなたの目にはどんな時代が見えますか
世界は灰色にもバラ色にも染まります
....
世界平和なんて願わなくていい
家内安全、商売繁盛、合格祈願、恋人ができますように、何だっていい
目を見開き、そして願え!
雲になって
ひとを許したい
雲になって
ひとを見守りたい
雲ぐらいの身勝手さで
堂々と
片隅であなたと暮らしたい
雲になりたい
雲になりたい
凍った蛇口をあきらめて
くんだ水をリヤカーで押していた
すこしぬれただけで
手が冷たく痛くかたくなっていた
それを思うとなみだぐめた
ぼくの身代わり?
あなたの ....
また、おもしろいはなしあんで
ぼくが聞いたらおもしろい
感じるところもおんなじだ
また、おもしろいはなしあんで
前髪ぱらぱら静電気
手櫛でぱらぱらもと通りに
裸 ....
小さなツリーに飾りつけ ケーキを食べて
プレゼントを期待して眠った子供の頃
夜中に聞こえてきたのは 言い争う声
弟達は眠っている 耳をすますと台所で
父と母が言いあっている
なんだろうと ....
ゆっくり湯を沸かし
大きな器に ひとかきの飯を入れ
わずかばかりの具を入れて 雑炊をすする
これで いい
大晦日の朝は これでいい
誰かの吐き出した二酸化酸素を吸って
明日もため息が繋ぐ年の瀬
きっと思われているようには
うまく笑ったり出来ないのだけど
朝一番に水を注ぎ込んで
芽吹く思いもあるのだろうか
もう数時間もす ....
「ねぇ、あずきちゃん、イチローはね、あずきちゃんに恋をしてるのよ。きっと……。」
え……、恋?
「そんなの、うそだぁー。」
「あっはっはっはっはっ……。」
外山先生とおかあさんがま ....
実らない恋を弔う年の内
蟻を奥歯でかみつぶし
くるぶしを白くいじめていた
ここにはなにもない
あまりに寒く
はく息を凍らせて
楽器のように鳴らしている
見たことのない誰かの部屋の窓が
すこし
....
あの頃よりも綺麗になった君を
呼び止められなかった右手
苦し紛れの甘い褒め言葉に
不覚にも照れてしまった右手
掴み損ねた夢みたいなものを
慌てて誤魔化そうとした右手
振り返 ....
得体のしれないものが浮かんでいる
球体なのか
立方体なのか よく分からない
時々 雀がとまる
もう一年以上浮かんでいる
雨で落下するわけでもなく
風に流されていくわけでもなく
そこに 浮 ....
ひし形の歪んだ街に産まれて
時々、綿菓子の匂いを嗅いで育った
弱視だった母は
右手の生命線をなぞっている間に
左耳から発車する列車に
乗り遅れてしまった
毎日、どこかで ....
夜の天幕はマグネット
キミが蹴ったつまらない石ころを
引き寄せて
星にすりかえる
朝が来るまで
せめて忘れたふりしてる
自分が永遠に満たされることのない
闇であることを
さみし ....
いつもなにか隠している
私のポケットは
私の手を隠してる
ほんとうのことって
だいたい残酷
綺麗な嘘でラッピングしても
すきまからみえてしまって
かえって傷をつける
不器用な人 ....
軍手の布地が手の水分を奪う
支給品は きゅと引けば地肌が見える粗悪品
レースの手袋じゃあ無いんだから
指紋の汚れを爪で掻き出そうとしても これは染み付いた汚れだ
あかぎれの ....
自転車を走らせながら
夜空を眺める
近くて軽い
感触が迫っている
もう少しで届くよ
立ち上がり私は伸びていく
ビルよりも高く
今日食べたラーメン
箸です ....
そういえば雨は降っていない
だから洗濯物を
取り込む必要もない
僕は寝ぼけた眼をこすり
猫が座っていた座布団の温かみを
確かめた
そういえば雨は降っていない
隣の庭の土は
乾い ....
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