傷つけられた一言を
あとから何度も
思い出す
{ルビ酌=く}むべき意味が
あったのかもしれない、と
一人でそっと
思い出す
けれどもそれは
あらたに痛みを増やすだけ
やっ ....
{引用=
きみのうたううたがすきだった
なまえもしらないうた、
ぼくのむねをかきたてる
きみのうたはそう、
だれのものでもないやつだった
いつもなんのまえぶれもなく、
はじまるのだった
....
真夜中
港まで自転車で走る
橙のあかりが点々と
その下に一人
また一人と
釣り人が並んでる
釣れますか
聞いても誰もこたえない
みな透明だから
二人乗りしてきた友人も
いつのま ....
飛行機を見に行かれるんですね。
私も見に行こうかなあ。
空港の近くに祖父母の家があって。
お墓参りでもした後に。
ぼんやりした時間があることは大切なんだと思います。
自分を省みるゆとり。
....
とある町に喋る猫がいた
人間の言葉を流暢に喋ることが出来た
人間の言葉を理解することも出来たので
世渡りがとても上手だった
人間はみな猫に優しくしてくれた
ただ言葉を喋れるとい ....
食器を洗う熱湯
湯気、水流弾ける音を
換気扇が吸い上げていく
じゃばざ
じゃばばばビタばば
つるるろるうう
きゅんと蛇口を締めて
前掛けを擦り上げるように
手の水分を拭き取る
....
世界が生まれて消えるまで
それをはかる時ならばいらない
、どこまでいっても自分
それを刻む鼓動の美しい機械に
{ルビ内燃機関=エンジン}
{ルビ回転速度計=タコメーター ....
みんなでつくりあげることが
たいせつなんだよ
それは間違いない
のだろうけど
花壇の外れの
ハルジオン
の小さな花の前で
シジミ達が順番待ちしている
その風景もまた真実なんだろう
....
初夏の雨にけむり
辻褄の合わぬ体温が
濡れたシャツから匂い立つ
傘を持たない二人が
軒下で身を寄せ合い
普段なら持ち合わせない
自意識を
濃くしてしまう
今日みたいな雨を
六月の盲目 ....
もう ラヴソングも描けないのさ
日の入りが終わった天空の
マゼンタがきれいでね
良い絵が描けた後の
水入れみたいでね
そんなことを伝える人も居ないのさ
眼球の奥でつくられる
とろんと ....
玄関の靴箱の上に
ふくろうを飼っている
餌もいらない
水もいらない
糞もしない
木彫りのふくろう
畑の胡瓜よりも世話がかからない
木彫りのふくろう
だけど、夜になると
目が光る
....
火のみ
火のまま
始原と同じ勢いで
燃え続けている
口は知ることにより変わってしまったから
音の響きに意味を持たせてしまう
愛しさも
熱情も
それらしくまとわせてしまう
無邪 ....
昼食を終えた
車椅子のあなたを
ベッドに寝かせ
おむつを開けば
あふれるほどの排泄物
「先輩ちょっといっしょにお願いします」
腕っぷしのいい先輩がやってきて
拘縮し ....
抱きしめてやると
思ったよりも簡単に
くずれるときの声を出した
髪の毛から
あまい胡瓜の香りがする
たがいの爪で
たがいの肉にわだちを描いた
俺は十八だっ ....
プランターに大根が育つ
セッセと蟻のように虫を爪弾きした成果だ
その蟻も我が物顔でプランターに通う
家に入れば味噌汁が待っている
買ってきた大根の味噌汁
母が汗水たらして買っ ....
「ひつうち」
午前二時三十九分、
携帯電話が鳴った
たまたま傍にいたので
素早く出ようとした
それより前に電話は切れた
着信履歴には
音声不在着信/非通知設定
と表示されて ....
歌詞をわすれた歌手が
案山子になって
仮死してる
観客は稲穂になって
空をからすが飛んでいる
沈む夕日に
染まれずに浮かぶ
くろい雲がひとつある
産声をあげて
案 ....
図書館で資格の本の頁を閉じ
色彩を失った日々を嘆いた
長い手紙を書き終え
疲れた腕をしろい机にのせる
(机の下に潜むかみさま)が
ぼくの重さを支えていた
ふいに後ろを向 ....
蝉の抜け殻を
村で一番集めていた村長が死んだ
彼の亡骸は
蝉の抜け殻に埋められるようにして
荼毘に付された
それがみんな燃え終わる前に
新しい村長がやって来た
新しい村長は口ひげを生 ....
{引用=
しらないことを
反芻して、
反芻して、
のみこむ
ひさしぶりに
読んだ日記が
このあいだと
同じだった
変わらないのは
止まった時計
時差がまったく
ないのです
....
080614
早朝
練習している間に
引き抜かれた
自然薯
生のままで囓られる
ガジガジ
蜘蛛の巣
聖徳太子の真似をして
ヘッドフォー ....
あのとき、偶然
だれにも声をかけられていなかったなら
ぼくは今ごろ
ここにはいなかったのだ
偶然、生きているぼくは
今日も、また改札口をぬけ
ケータイを開き
牛丼 ....
二十一世紀というものがやってきた
何気なく
僕らは息をしてきただけ
身軽に空を飛べるようなものも無いし
見たこともない食べ物があるわけでもないし
すべてに ゆっくりと足跡をた ....
基幹農道の左右は区切られた水面
あの小高いのは 川のへり
足の悪い男が傾斜へとうつむいている
なずなは もう しまい
つめくさは もう せんから さかり
水 ....
寒かったから
多分冬だった
カレンダーの数字が青かったから
きっと土曜日だったろう
その日わたしは
当時勤めていた会社のチラシを
マンションやアパートのポストに挟み込む
所謂ポスティ ....
空気の中を泳ぐ?
溺れてるようにしか見えないぜエアロ
睡眠もろくに取ってないんだろう
足もとがふらついてるし
さっきから目をこすってばかり
君の頑張りは無駄じゃないが
報われるかど ....
少し湿ったね と
旧道沿いの
あしもとのほうから
梅雨のにおい と
祖父のにおいがした
ふりかえると
あたり一面にシャガの花
思い出すひとがいるから
咲くのだろう
....
近くて遠い
海底の故郷に別れを告げ
電車に乗って
少しずつ遠ざかる
私の体は群れをなし
回遊魚となって
思いめぐる寒流の
水面に浮かんだ
そこは近くも遠くもない
今の私の終着駅 ....
海沿いの駅のベンチに
腰かけた老婆はふたり
ひそひそ話で
地面を指さしている
そぼふる雨の水溜りに
浮かぶ
誰かが落とした
一枚の切符
やがて聞こえる
遠鳴 ....
指でなぞる
水の裏側
剥がれていく
記憶のような
古い駅舎
影踏み遊びをしながら
呼吸の合間に
母とひとつずつ
嘘をついた
砂漠に父は
キョウチクトウを
植栽し続け
一面き ....
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