ねえ
ちょうちょあそび、しよう、ひそひそと。
おわったら、ぜんぶ、けすの。
おもいでにしか、のこさない の。
おもいでは
すきとおって ....
冴えわたるのが空なら
曇り濁るのは僕の心
色めく街路樹をくぐり囁き合いながら
温まるのが恋人同士なら
寂れた時代遅れの廃屋に
うち捨てられた萎れた花は僕の心
幸せを競 ....
風邪が流行ってきたので
今日もデイサービスにやってくる
お婆ちゃん達が
がららららっ てうがいできるよう
蛇口から水を流して
大きい容器に水を入れる
からっぽの空洞を ....
雨露のメロディー悲しげに
しっとり堕ちて
耳の奥 鼓膜に触れてこだまする
深く息を吸い込んだら そのまま
静かに呼吸を止めて
僕は瞼を閉じる
ひと息の自由を手に入れて
都合のいい夢を ....
孤独は ビタミン
孤独は 存在
孤独は 原子核
私の小さなマイナスを あなたの周りへと投げる
電子のひと粒で
私たちはつながっている
ように見える
私たちは触れあっている
....
身のまわりの色彩が不思議と淡くなる夜
胸のうちに浮かぶ
いくつかの
花の名
鍵盤をやわらかに歌わせる指たちの幻
夢のうちを
あるいは予感のうちを
あえかにかすめていった 星のよう ....
ごめんな
ごめんな
痛かったやろ
ちゃうねん、お母さん
おんぶしたろって思っただけねん
だって、まだちっちゃいから
車が多いとこは危ないかな思ってん
道路の真ん中で
落 ....
組織に属しているという実感が、
私の心臓に鋼鉄の壁を作り上げる。
その壁よりさらに強固な壁を持つ
巨大な鉄の箱のなか、
ひとたらしのとまどいもないまま、
私は突き進む。
強大なベルトコンベ ....
お風呂さん、ありがとう
今日もあなたに浸かることができて幸せです
あなたの清らかさとあたたかさが
今、とても尊いものに思えます
わたしは寒いのに裸になりたい
裸になりたいのにあたたまりたい
....
歩き出すことを知りました
ひた、
ひたり。
らしさをどこかに求めて
あまやどりをしました
ぽたり
いつしか涙も流しました
そうしてぎこちなく
笑ってしまうの、
わたし
ことばに詰ま ....
示準化石は
何かが棲んでいた証拠でもいいので
20世紀の示準化石としては将来
コンクリートやアスファルトが役立てられることでしょう
ひとかけらずつの翡翠や
黒曜石の鏃が時折ひどく美しいよ ....
つめたく湿った朝
目がさめると
屋根から鳥の足音が聞こえる
降り立って
昨夜の戦況を
せわしなく伝えていた
兵士の声は力尽き
衛生兵の途方に暮れた
足音が聞こえる
数匹 ....
静かで暗い森の中
鳥の羽音が不気味に響いて
あたしは足を止める
足を止めると今度は
茂みの方で小動物がうごめく気配
あたしの体は硬直して
動けなくなる
ここは迷いの森
迷える人間の ....
雨雲がはびこった空へ
僕のねずみ色の狡さが
こっそり飛び去っていくのを
ぼんやり見落としながら
また天気予報がはずれたと
君は唇をとがらせた
ガジュマルの葉っぱに
君の赤毛のした ....
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神社の縁の下は雨宿りの場所で
みんなの隠れ場所だ
賽銭箱の階段の脇から入って
宝物を蜘蛛の巣の奥に隠した
捨て犬も捨て猫も一緒に連れ込んだ
....
人形町でもなく
箱崎でもなく
水天宮のジョナサンにいる
そんな夜のカフェテラス
幸せはどこにあれ
哀しみはそこにあれ
あしたのどこそこで見つけたのさ
人形町で ....
夕焼けは音を消させたみたい。
ついで、砂場のスコップも、ブランコの揺れも。
寂しいなら帰ればいいのに。
*
雲を眺めてるんだ
オレンジっていう色らしい
いつかのやさしい声はもうきこえな ....
遊び疲れて眠ってしまったのかい
そのままでいいから聴いておくれこの歌を
思い通りにいくことなんてきっと数えるほどなくて
運命とか実はあんまり信じてなくて
音の取れない金管楽器がやへたっぴなリコ ....
*シアター
エンドロールが終わらない
私は世界史を勉強していて
あなたはきっと誰かを抱いていて
この子はたんぽぽの夢を見ているのに
*レストルーム
....
私が
もう少し若かった時
いっぱいの幸せを
願っていました
今は
たった一つの
君の言葉で
充分です
ありがとう
灰色(をした)
砂の足もと
頭上の雲
またその上に走っては溶ける
たくさんの線と波と
息が詰まって仕方ないと
耳元で震えた息と
つめたい身体
伸ばさない
結ばない ....
「赤信号」で車を停めて、
サイドブレーキを引く。
車の外に見えるのは
数ヶ月前、脳梗塞で世を去って
デイサービスにはもう来ない
お婆さんの民家の庭
いつも杖を支えに
....
近所の用水路で小さな魚を捕まえた
家にあった水槽に放し
部屋の日当たりの一番良いところに置いた
魚は黒く細っこくて
その頃のわたしは
なんとなくまだ幼かった
+
....
「詩人不在証明」
不在を、証明せよ、と、書き殴られた、黒板、放課後、幾つめかの、チャイム、掃除用具入れの、造形美、誰もいない、教室の、大気。
足元から伸びる影を追いかける、ような、 ....
かわいい虚勢
見えないふりをする
プライドごと君を守りたい
夕暮れ
いつも君のほうが寂しがった
いまさらの手つなぎ
約束なら破らないけれど
こちらからはひとつも願わない
切 ....
あなたはそば屋で待っていて
熱燗をちびちびやりながら
私を見るなり、ほっとしたような
困ったような
薄汚れたテレビの中で笑う
若いお笑い芸人たちの姿は
遠い、遠い、都会を思わせる
....
こどもの頃
お正月とお盆になると
母の実家に行った
山々にかこまれた盆地に
田んぼが海のように湛えられ
島のように点々と
街や集落が浮かんでいた
遠くに見える
おおきな島に駅 ....
色彩は
とても美しく
あったのでした
あどけない空を
飛行機雲がすうっとたち
あおいあおいあおが
喉の奥まで入り込み
それは私の中の何処かで
ぱちんぱちんと音をたて ....
十月の林檎畑は小春日和
はしごの上に立って
林檎の葉をとり
少し位置をずらして
枝の下の黄緑の部分も
赤く色づくように作業する
手間をかけただけ
儲かるものでもないけれど
まんべんなく ....
わらっていた
こどもたちは
もう鉄塔から降りた
手のひらに
赤錆を
たくさんつけて
ひとりが
鉄錆 ....
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