朝まで降り積もった骨を
川へ捨てにいきます
冷たく軋みながら
空の色が
川下へ流れていきます
家に帰ると
また同じ数の骨が
降り積もっています
はる ....
風のなかを歩いている
雑踏とおなじくらい孤独だった
見えないところで会話を重ねた
愛は合法的な欲望だ
許された者たちの欲望だ
性の痛みや快楽とおなじくらい
傍観者が ....
映写機がカタカタ鳴っている
僕の撮る写真が君は好きだという
街は白黒というよりも何かひとびとの
息吹をはらんだ色彩に染められている
街灯には設置された年がゴシック体で
刻印されているのだ ....
うそつきなこどもだった
帰り道
鍵っ子だったわたしは
ひとりっきりの家に帰るのが
さみしくて、さみしくて
帰ろうとするMをひきとめようと
こう言ったのだった ....
妄想をやさしくふくらませて
勝手にせつなくなろうとした
なにかを突破しようとした
きみの一言一句を推理する
ぼくはひとりの探偵だった
欲望に
肯定的な推理だけをした ....
うごくと
あたっちゃう
にがいとげ ふゆのやま
すぐには
こえられない
わたしなんかに?
とんでもない
やさしさに
ぼたぼたする、
これは
もろさじゃない、よわさじゃない
....
生きづらい。
なんて言っちゃって。
一体何人の若者がそう心の中で呟き、世界を諦めるのか。
壊れたフリしたパンクお兄ちゃん。
愛よりお金の美女達。
何の権利で拘束されるのか。
刺 ....
朝起きて湯を沸かす
洗濯機を回し
仏壇と神棚のご飯を変えて
玄関を掃く
するといつも通りに学生が登校し
その向こう側では山が欠伸をする
洗濯物を干し
朝食を食べ
珈琲を飲む
夫を送り ....
もう壊れてしまったから
捨ててしまうのですか?
ぼくの紡いだ時間の縦糸が
ぷっつりと切れてしまいました
重たい
川に入ると
そのままでは浮かんでこれない
瀬
壊れ物だけが集まる遊園 ....
雨がガラスに寄り添って
打ち明け話しているような
ひとりの私は指先で
つっとなぞってゆきました
地面をおおう水溜まりが
あまりに暗くみえたので
身をひるがえして逃げました
溺れぬ ....
こうやって真っ白な入道雲を見つめながら無人駅のホームで涼風にあたっていると
私は永久にこの季節の住人で
それ以外は旅しているだけなんではないかと思う、昼下がり
何もかも果てなく親 ....
星はもう
宇宙にはないのかも知れない
永遠なんてないのだ
ぼくらは永遠を幻視したかった
駐車場の車たちが
このような配列でならぶことは
もう二度とないだろう
こんなことにも
ぼくらは ....
こぼれたミルクは飾りボタンの溝を泳いで
くるくると光を跳ね返していた
いつまでたっても混ざり合うことはなく
胸を埋めるような匂いが辺りに漂い
大気ばかりが乳白色に濁っていた
窓の向こ ....
指のさき
雪がひとひら、消えました
わたしの熱を、あら熱を
かくまうように
消えました
うなずくべきことなど
何もないけれど、
わたしは確かに
うなずきました
す ....
駅のホームは
どうしてこうも美しい
パレットのように
混沌とした感情を
無機質な鉄の塊が連れ去っていく
流れる景色に思い出を溶かしながら
新たな始まりに胸が ....
泡の中に階段
階段の突き当たりに崖
飛び込んでごらん、ウールだよ
と言って
飛び込んでいく民兵たち
砕け散ったポケットの中に
鉄屑
こぼれ落ちた鉄屑の雫で
埋め尽くされた野 ....
1
交差点の灰色の空から淡い紅色の花びらが舞い落ちる。人々はその花びらを見ること無く俯き加減に黙黙と歩いている。誰一人として空を見上げるものは無い。そして降り積もった紅色の花びらを踏みに ....
たばこのヤニで煤けたリビングの壁に一箇所
まるで雪景色を穿ったような真新しい壁紙が気になる
あのひとがわざわざ買ってきては飾っていた
贔屓にしてる野球チームのカレンダー
縦じまのユニフォー ....
娘には愛を受ける権利がある
娘には、すきなときにだっこをしてもらう権利がある
父親の記憶のない娘を不憫に思い
祖母は惜しみなく愛を捧げた
自分の娘に届かなかった愛もセットにして
両腕 ....
夜半から降り始めた砂が
やがて積もり
部屋は砂漠になる
はるか遠くの方からやって来た
一頭のラクダが
もうひとつのはるか遠くへと
渡っていく
わたしは椅子に腰掛け
挨拶を忘 ....
元旦の朝
目覚めると
枕もとに息子が
座ってました
いつからそこにいたの
と尋ねると
わからない
と笑うので
不思議な気がしました
それから
お雑煮の餅を
小 ....
モノクロームの
夢を見た後は
必ず
部屋に月がぶら下がっている
月は
蛇みたいに
神秘的だと思う
胸の空白に
薄い風が吹いている
風で砂漠の砂が
少し飛ぶと
君の心に
届く ....
音楽はやまない
いつまでもその唇から
風に
風に乗って
その唇に
やわらかい草のゆれる
広い野を越えて
人々の雑踏を超えて
あなたの街を超えて
音楽は続く
とどまる場所があ ....
哀しみにおそわれる
生きていく苦痛にとらわれる
人一倍傷つきやすく
人一倍じぶんを超えようともした
胸の痛みやしびれがなくなるまで
大義名分をさがして
モーツァルトのピアノ協奏 ....
一二の時まで、わたしは発光していました。
ちいさなわたしは
空き地のハルジオンの隙間に落ちていた
たくさんの欠片(かけら)を
拾い集めては、
序序にじょじょに発光していきました。
....
じぶんの感情を充たす
その感情とは
ほんとうは何の仮の姿なのだろう
ぼくはとまどっている
世のため人のためなら
ここから降りるべきだろうか
ぼくはいまを生きている
....
握り締めることなんて出来ないってわかってるのに
風に翻弄されて舞い落ちる粉雪をつかまえて
その結晶を手のひらに刻み付けたいと思った
この冬最初に降る雪を見たのは
帰省先である少し北の街 ....
オレンジの灯りが点々とする
雪の祭りの
ぼくらの町
狭い歩道を歩く 婆三人
灰色のほおっかむりで
ひそひそと
植え込みの陰に
みかんの皮を押し込む
ぼくらの町
町から背の高い ....
日頃の不摂生で
年の瀬に熱を出し
病院で点滴をした三日目
今日、初めて気づいた
点滴を吊るした棒の台車に
歩きやすいよう
掴まる取っ手がついてたことに
昨日、僕は点 ....
見知らぬ地名をナビに入れてみる
一時間四十五分
見知らぬ地名が時間に変わる
こうやってこころを動かしておく
これで今日はもうこころが動かない
黄ばんだ冬の青空を見つめてい ....
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