どうやら苦手なものに好かれてしまうらしい
人前で話すのはいつまでたっても苦手なままなのに
旧友の結婚式でスピーチを頼まれてみたり
不得手解消と中途半端な意気込みで卒業した英文科の呪いなのか
....
+8月19日
背が高くていつも
自信がなさそうにしてる
優しい普通の女の子
美しい横顔で
声を出すと歌になる
大切なことは
いつも最後に
こぼしていった
....
090704
青い日には
詩を推敲する
青春の尻尾を
ちょんぎって
本物の大人になるのだと
言われなくてもがんばるのが
青年後期の
務めです ....
今を指差すと
今ではない
指先がやって来る
するとこの指は
たちまちおばけになる
今を指差す
ことしかない
少しでも
過去や未来ではならない
今だけを
指差すしかな ....
曖昧な
水平線を見つめてる
曖昧なわたしは
空の青と
海の青の
見分けがつかない
ひとすじの
線となり
その向こうに
糸で縫い閉じられていく
待ち針を抜きながら
今日 ....
【the GARDEN of SINNERS】
今日もまたテレビのニュースで飛行機が堕ちたと言っていた
昨日の新聞によると世間を賑わせていた殺人鬼が捕まったらしい ....
やせっぽちのきみは
ちょっとやそっとじゃ
笑わない
女の子はなんでも
くすくすけたけた
笑うんだと思ってたけど
あっそこでは笑うんだ
栗色のベリーショート
奇跡の歯並び
....
あやめ祭りが開催されるという
そんなにあらたまって見に行かなくても
家にある花で充分だというと
それは外の世界を知らないからだと夫が言う
紅葉も 山に暮らして二十年近くになり
台所の窓か ....
すっかりと丸くなった母の背中を押し込んで
いく、とバネのように弾んで台所へと消えて
しまった。庭の隅で父は、苗木のままの紫陽
花を随分と長い時間見つめている。時計の針
はここ数日で速くなった、 ....
君のまあるい心と
僕の角ばった心が
ぶつかった
君は少しへこんで
すぐ元にもどる
僕は角がつぶれたことを
いつまでも気にしている
君のまあるい心と
僕の角ばった心が
はず ....
海に行こうと決めたのは
季節の中に飛び込むためでも
まして楽しく泳ぐためでもなく
日常からあふれた出来事を
ほんの少しこぼすため
からだの中の水分が
外へ出たいと願うのを
悲しみ ....
電車の中で引きこもりたい
終点のない電車の中で
世界の車窓から世界を永遠に見送りながら
眠くなったら好きに寝て 寝過ごして
車掌に起こされることもなく 親切な客に起こされることもなく
旅を続 ....
コンクリートの舗道から
唐突にはみ出してしまった
名も知らぬ草
引き千切られても
踏みにじられても
へらへらと風に揺れている
雑草になりたい
生えることだけを
考えたい
....
{ルビ若布=わかめ}の{ルビ疎=まば}らに干し上がる
六月の浜辺を振り返れば
今迄歩いて来た僕の
たどたどしい足跡が
霞がかった岬の方まで
延々と続いていた
あの岬の幻は ....
ほとんどのことは
なんてことないんだよって
どうにかなってくんだって
教わったのは
病院の、ロビーで泣きじゃくるわたしに。
無言で母はわたしが立ち上がるのを待ってくれたね
何時間も
....
次の駅は
笑顔です
乗客は
思い思いに
笑いだす
思い出の中にある
幸せを
思い出して
笑顔になって
降りていく
降りない人は
まだ降りない
....
夕刻地平線 紙の切り傷
鼓動にあふれた静寂がふたつ
痛みをともなうのは
前世からの記憶のひとひら
秘めた焦燥は赤色に駆られて 涙をおとす
はりつく体温と
しお、鉄の味
....
ぼくの存在は地球にしかない
あの青くてきれいな球体にしかない
夏の匂いのまま貼られたアフリカ大陸
ぼくの存在は
あの青くて半分影のあるあそこにしかない
月にはない
太陽にはない ....
渚を歩いていたときのことだ。
波打ち際に、細くなめらかな黒い曲線が描かれていた。
それは波の姿を象って視界の及ばぬ範囲へと延々と続き、
足元に目をやれば無数の点の集まりで、なにかの種を思わせ ....
縁日で
祖母が買ってくれた
空色の風船が
手のひらを
するりと抜けて
空高く舞い上がっていった
東の空へ流れていく
風ははるか上空
西から東へ吹いている
お日様と ....
大好きなあなたと
笑顔をともに重ねたい
陽の見えない換気窓から
影とほんのり外界の時を伝える
*
枝豆をパチン・パチン
鋏でとってゆく
土のにおいが
なぜか懐かしく
ゆらめい ....
明後日の今頃には
きっとわたし、泣いてる
ハナキンなんて言葉が流行ったっけ
週末の空気はほこりっぽくて
ろ過された部分だけを吸い込もうと
口を無意識にぱくぱくとさせる
大嫌いなもの ....
この不景気で
「ありがとう」は
あまり回ってこないから
大事に大事に抱え込んでいた
街中の
誰もがそうやっていたら
いつしか
「ありがとう」は
街から消えてしまった
....
古い地図をひらくと
あの日のわたしが
チャリンコ漕いで走ってる
高校と家の
片道十キロの距離を
毎日通った
部活は一年で
辞めてしまったけど
片道十キロの
距離は ....
父が亡くなっても泣かなかったくせして
MJの死にはわんわんと泣いた
そんなものだよね
近くて遠い悲しみと
遠くても近くに感じられる悲しみ
人生のアルバムから今まで生きてきた記録が ....
誰もがやり直せることを
その情熱の持続を
誰もがひとりではないことを
奇跡を引き寄せるからくりを
その情熱の持続を
ぼくは証明したいのかも知れない
雨が降る青い ....
花は花で
咲き競い
至福の種子を枝に結ぶ
鳥は鳥で
鳴き集い
矢印となって季節を指し示す
川は川で
せめぎ合い
未だ見ぬ海へと殺到する
雲は雲で
逃げ惑い
苦し紛れに ....
午後
カーテンのすきまから
迷いこんできた空想がひらひらと漂う
うまく捕まえることができずに
言葉にならないので
そのままにした
きっと
そのままの方が良いのだと
勝手な理由を知る ....
暑さにうなだれている名も知らない花は
剥がれかけたマニキュアと同じ色をしていた
使われているひとつひとつの配色が
くっきりとしたものばかりなのは何故だろう
まぜこぜしないのがこの季節で
....
建物と人が
梅雨明けのひかりを
跳ね返しては吸っていた
夏が影を濃くしてゆく
命の闇と宇宙の静けさを
反語のように振りかざして
風が首を撫でている
夏服の透き ....
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