一晩中
瞬き続けた星たちが
あんまり淋しいものだから
朝になると
雪になって降るんだよ
一日中
降り続けた雪たちが
母さん恋しいものだから
夜になると
星になって瞬くんだよ ....
ちいさくせかいがふるえ
てにとるべきわずかな水
ブルーはブルーによって
侵食されていく果敢なさ
声と言葉と三色の悲しみ
ピッチカートで奏でてる
光沢は世界とすれ違う度
美しすぎる晴雨 ....
不思議な
でもどこか懐かしい音楽が聴こえていた
見回してみるとそこは上演前のプラネタリュームのようだった
僕は椅子を後ろに倒して大きな伸びをした
それから暗い天井を眺めて何かが始まるのを待 ....
宇宙空間では
衝撃波や宇宙線や太陽風なんかは
常在菌のようなものなので
星間ガスでも星でも塵でも
どんどん醸されてしまいます
それがいやなら真空パック
とはいえ
宇宙で今さら真空 ....
霜月の末
義母が逝きました
筋肉が次第に衰えていく病で
手足も口も思うにまかせないままの死でした
目だけがよく動いて
さびしさとうれしさを伝えていましたが
妻は静かに泣きました
義妹 ....
年末の大掃除に向かって
クローゼットを開けた
激動の一年を振り返り
ハンガーにかかったままの服を
どんどん投げ捨てる
こんなところにまで
思い出が詰まっていたなんて
いらない ....
僕は 今 丘の上に立って
不況のため売れ残りの目立つ
広大な分譲地内の家の屋根を見ている。
ちょうどあの時のように
あの時
僕は屋根の上に昇り
両足を抱えて
君の家の屋根を見ていた。 ....
五時に会社を出て車で演奏会場に向かう
吹奏音楽団に入った甥のデビュー
トロンボーン奏者として舞台に立つのだ
まだ高校生だし来春からは社会人
でも誰も止める事ができなかったデビュー
ひとめ見た ....
数字や公式なんかに
これっぽっちも意味はない
論理や法則なんかに
これっぽっちも意味はない
僕らこんなに縛られてる
ベルトネクタイマフラータイツ
僕らこんなに枷をはめてる
指輪ネック ....
揮発性の高いエチカ
不文律が陽を遮ると
最後には人柄で勝負
僕がもっとも不得意とすることじゃないか
曇りガラス越しにカラス
硬い羽を打ちつけて
絶望する暇があれば希望せよという
僕の ....
{引用=
靴の、物語り
【 冬の靴の同意語が、なんだって?
仲間はいるのかって? 】
― 冬の寒さを、雨のぬかるみをさえぎる
保護してくれるものをさがすの、
心をかざった ....
玄関の戸がふうっと開いて
そのままなので
誰かが閉めに行く
みんな たくさん泣いたけれど
泣き足りないと思って
二階の
薄い空箱の
暗がりから
なんとなく降りてきてしまう
妙 ....
どこかで計算されているのか
寄る辺ない営みだけが確かです
人生の遥か範囲で
運命や宿命が
遠い燎原のようだ
太陽系第三惑星に届いた星は
勝手に名前をつけられている
....
信号待ち
目の前で
ビルが壊されていく
ここは日本だから
ゆっくり
ゆっくり
壊されていく
こんなこと
とっくにわかってた
このビルが建った頃から
滅びていくのを
待って ....
人はデジタルなものに支配されているのか
人はアナログなものに支配されているのか
そのどちらもなのか
どちらでもないのか
人には依りどころが必要なようだ
思想や情動の成 ....
高校を卒業して
家を飛び出してから
二十年になる
お盆と正月などには
申しわけなさそうに帰省してきたけれど
それぞれ五日ずつ滞在したとして
二十年かけても
わずか一年にさえ満た ....
きれいごと言うな
なんて言うな
こんなにきれいごと言わなきゃいけねえ時代はねえぞ
俺にこんなこと言わせるな
俺がこんなこと言うのは
どう考えても似合わねえと思うぞ
でも俺にはどうしても大事 ....
いつもより遠出した散歩の途中
気がつくと僕は
古墳の前にいた
その古墳のことを
僕はそれまでただの自然の丘だと思っていた
『県指定史跡』と書かれた案内板に
黒い鳥が一匹だけ止まっている ....
{引用=
白く、鉄塔が、明け方の空に溶けこむ。昨日からの読みかけのページをめくるように、朝は、なめらかにわたしに降る。ここから失われたものなど、ひとつもないかのように、無音のまま、満ちていく。水を ....
091210
九官鳥を捕まえた
明日からは
代弁してくれるので
雄弁家の顔を作る
泥粘土をこねて
顔に塗る
生乾きの間に
次の顔を考える
次の顔 ....
隠れキャラは見付かるまでずっと隠れていた
錆び付いた針金で檻をつくったよ
けれど錆びていたからすぐに壊れてしまって
それは檻と呼ぶには理解出来ないものになっていた
鋼のハートを ....
なにも見えなかった時を経て
今は少し見えるようになったのかな
あけたドアから入った空気は
痛いぐらいに透き通っていた
なりたかったものになれなくなって
できなかったことができるようになっ ....
神戸での会合を終えて
新幹線に乗り込んだわたしに世界は
スピードと夜を与えていた
岡山までの短い時間だけれど
南方の従軍基地にむかう兵隊さんの
わたしはひとつのたとえ話だ
船底にち ....
例えば地に足が着地したとして
曇り空と背の高い建物の間に
そっと手を差し入れることもできるし
湿っぽいから霧を出してもいいし
花のように丸くなることもできる
後悔はな ....
駄菓子屋の側に置かれた自動販売機は
存在を知ったときからもうおんぼろで
お金を入れてボタンを押しても
蹴っても叩いても何も出てこなかった
お店を切り盛りしていた女主人は
存在を知った ....
センセイも昔はガクセイだったから
センセイのセンセイがいる
センセイは今もガクセイだから
センセイのセンセイがいる
センセイは他のセンセイに
アドバイスをもらったりするので
センセ ....
それはおおきなかわよりも
ながくながれていたとおもう
わたしはかってなおもいこみで
そのひとをなぐさめようとしてしまった
それが やさしさ の ぎしきみたいで
わたしは やさしさ を ....
足もとのカラスは飛び去らなかった
朝のホテル街をふたりで歩いた
いいのに、でも、ありがとう、
女を駅まで送っていた
ぼくらはたとえ話のなかを生きている
これは、なにか ....
杉の梢のうえに
あなたの声を聞いた気がしたのです
…枝の間に、冬の鳥のさえずりの中に、
ひとつ、ふたつ…
タンポポの綿毛になって
飛んで行くのですね、
とめたって
きっともう ....
ぬめぬめとした
自分を抱き締めた。
皮膚呼吸をしているはずなのだが、
何かを塗りたくてたまらない。
空には暗いグラデエーションの夕暮れ
丘に登って見上げている僕は
ぬめぬめとした
....
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