堕ちていくのは
時計の針かはたまた
砂時計の砂か
どちらにせよ結果は同じ
両方時を刻む魔法器具
君の小さな手の平を
繋いでふさいでもいいですか?
曖昧な返事は ....
煙草を一本、灰にするあいだ
曇りの夜空、見上げているのは
この道で自分がしでかしたことへの
悔いと純情を見つめるためなのだ
風のうわさ、本当にあるんだな
秋の雨はどこ ....
夜の散歩中に迷い込んだ名も知らない小さな神社は
まちあかりも遮ってしまう茂みに覆われている
自他共に認めるリアリストのわたしでも
物の怪の姿を探してしまいそうになり
風で葉がこすれるか ....
・
空が脱脂粉乳のように
薄く万遍なく引き延ばされてしろい日
うすぐらい部屋のなかで洗濯機を回している
色とりどりの洋服は不要になった皮膚のように
集められ濡らされ浮かんだり沈んだりし
渦 ....
よく晴れた日曜日の朝
洗い立ての心臓を
物干し竿に干した
切り離された動脈と静脈を
洗濯バサミでとめて
(ぶらぶら)
風に揺れるその動きが鈍い
滴る雫が陽光に照 ....
聴けないCDデッキを捨て
使い古しの座布団を捨て
石鹸カス 埃 サビ 黴 ゴミ
くまなくこすり
落とし吸い取り
使用済み電池 着ない服
3年前くらいの年賀状
....
「秋の夜は果てしなく長いのだから」と
あなたは言って
舳先の行く手を確かめながらゆっくりと櫂をこぐ
おとこのひとに体を許す
例え今夜がはじめてではないにしても
月明かりは艶かしく ....
ある日、俺は黒い小さな舞台からこう告げたのだ
「肉まんは友達」
すると一人の偉大な詩人が俺に歩み寄り
そこから俺のポエトリーロードが始まった
言葉を愛するさまざまな人たちに出会った
....
空は夜空ではない
星でもない
宇宙そのものだ
宇宙そのものから
虫の音が
降るように聴こえている
哀しみ
孤独
裏切り
不実
それらは
....
もうすぐ暗闇の端っこが
綻び始めるから
似たり寄ったりの一日が
また発芽するよ
ここで街が目映く
反転するのを待とう
たぶん大丈夫
取り残されることはないから
もうすぐ緩やかな ....
空はどこまで
ってきく君の
求めている答えは
わかっていた
あのとき
君の肩は細くて
花びらを
青い水に散らして
一文字ずつ撹拌する
結実してしまうものが
何もないように
....
わたしの思考と身体が
世界と和解していたという事実!
サングラスをはずすと
世界が懐かしい光のなかにあった
サングラスは
ゴルフのときにだけすると決めている
サングラスがわたし ....
彼女たちの多くは
南方の島々へと
逃げる
言伝も
雨の日もなく
つつがない日々が
いっそう鮮明になってゆくのは
欲深くもなく
遮られることもない
まなざしの脆さが
北国に根ざす
....
「カタクチイワシを一言で言い表すのは難しい」
爺さんがそんなことを縁側で呟いていたので
爺さんに聞こえるよう
「ニシン」
と呟いて宿題をするために部屋に戻った
部屋の勉強机は窓の手前 ....
夕暮れ
みんな家路に帰ろうと
一人ぐずぐず
オニのまま
悔しいままで
夕日を睨み
そのまま暮れて薄暗く
ぽつりぽつりと街灯が
道をぼんやり照らす頃
オニも泣き顔拭かぬまま
....
不安な気持ちでたまらない、と
夜、入院している父から電話があったので
病院まで行く
今日はリハビリ頑張りすぎて疲れちゃったんだね
そう言って落ち着くまで父の頭を撫でる
その帰 ....
うちから少し歩いたところに住宅街があった
大通りから出る七本の細い道で構成されており
それぞれの道には一号通りから七号通りまで
安直な名前が付けられていた
小学校に上がって通い始めた書 ....
バスが過ぎる
その排気ガスの匂いが薄まると
またキンモクセイの香が戻ってきた
田畑が刈られるのを待っている
風がやむと時間がとまっている
ひかりが雲が空をぼかしている
建物の優しい ....
このからだの中に
海がある
真っ赤な血が
夜よりもくらい暗闇で
波打っている
今も確かに
沖のかもめが
今鳴いた
わたしの中で
確かに今
浜辺から続く道を
手 ....
あの国に住むひとは
薬の常習者が多いそうだ
先日捕まったりしたのも
あの国のひとたちからすれば
仕事の性格上?織り込みずみなんだろうか
ぼくはいま阿Q正伝を読んでいる
そこにあ ....
くるしいの
とたずねると
くるしくないと
こたえていた
あなたはもういない
いたのかさえ
もはやわからない
いまがいまにそまって
ただとりのさえずりが
くるしくな ....
ずっと遠くを眺めているの。
ずっとずっと昔からそうしてきたような気がする。
電車の窓から外を見てるとふいに泣きたくなってくるの。
明かりの薄れていく速度が私をどこかに連れ去りそうで、
窓に映る ....
090923
萎びた地球に
問うてみた
感じたままを素直に
吐いてみてと
言ったのだが
萎縮したのか
言いたいことがまとまらない
....
JR秋葉原駅の構内の一角に
それはあった
構内といっても
線路の外側のはずれの空き地
駅員も踏み込まない
忘れられた場所
三十年前
ボクは上京したての新入社員
飛び込み営業の話をす ....
あのね
とりあえず声に出してみた
答えなんかでた訳じゃ無いし
そんなものはなから無かったりする
えっとさぁ
次のことば続かなくて
それでも携帯の画面へ逃げ込むのだけはぐっと堪え ....
青いバラを見ましたか
青いバラを見ましたよ
花屋さんのでっかいガラス張り冷蔵庫の中で
束になって真っ青してました
青いバラのニュースは聞いていたので
とうとう出回るようになったかと
....
融け合わない哀しみは
幸せを幻のように遠ざける
歩道にこぼれている優しい光に
薄い肉のような影が散っている
あなたからのメールに
意地になって返信している
僕のわが ....
ほんとの太陽は青いので
空は青く見えるんです
白い雲は白くって
甘い香りがするんです
ぼくたちは水辺を歩いて
大きな門へ着きました
ぼくの手は離されて
小さな階段をあが ....
伝えたくて
伝え切れないもの
捨てたくて
捨て切れないもの
慌てふためいて
掴み損ねたもの
握り締め過ぎて
壊してしまったもの
煩わしいものたちを
もう一度抱き寄 ....
泉屋のクッキー缶の中に
アルバムに入れていない古い写真が一枚
モノクロームの色あせた写真には
小さな自分と親父が写っている。
庭の小さな葡萄棚の下
ふざけているのか本気なのか
親父に髪 ....
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