鳶が蒼空に浮いている
巧みに風を孕み
見えない凧糸に操られるように
蒼空に浮いている
瞬間、バランスを崩して墜落する
そして上昇気流
寸分違わず元の位置に戻り
また風を孕む
狩 ....
夕暮れ、
窓から
やよいがシャボン玉を吹くと
リーマンや客引きやパチ屋が足をとめて
時々この辺をうろついているドラ猫みたいな顔した「上海ラバー」のママと
自分 ....
操られた体が
わたしに還ってくる
ある夏の日に
今日は何しようかと
思うことができた朝
父に誘われて釣りに行った
帰り道
あの日と同じ夕日を
今は息子と見てる
明日の ....
雨が降る
軒を打つ
窓をたたく
雨が降る
音楽が始まる
雨が降る
煙りが揺らぐ
雨が降る
長くてしなやかな
指先に恋したとしたら
蔦のはうよ ....
090910
朝起きると
ラジオ体操をする
ラジオ体操の番組を鳴らす
元気のよい小父さん小母さんの声で
目が覚める
ラジオ体操を聞き終わると
....
・
職場で必ず着用するエプロンには
大きなポッケットが付いています
わたしはその中に
いろいろなものを放り込むのが癖です
ポッケットが膨らんでいないと
落ち着かないのです
膨らんでいて少 ....
交差点でおもう
もしもわたしが信号だったなら
赤で人は止まるだろうか
そして青になったとき
人はわたしを通過して
行ってしまうのだろうかと
青に変わって
信号待ちの人が
....
受けたくもない
カイゴフクシシの書類に貼る
証明写真を撮るために
3分写真の小部屋に、入る。
頭と顎を
正面に映る自画像の
上と下の曲線に嵌めて
にぃっと一人、笑ってみ ....
熱い光はただ重なって
そっと重ねられて
渋滞した道でせわしなく鳴るクラクションも
軽やかに散歩する犬の太くて短い声も
光に飲み込まれてかき混ぜられて
珈琲に落としたミルクみたいにぐる ....
目には目を、歯には歯を、
このハンムラビ法典の言葉は
復讐法だとか拡大報復の戒めだとか
そんなふうに言われてはいるけれど
この言葉の連なりに
私はひとの悲しみを感じるのだ ....
ここに一脚の椅子があって
それは懐かしいにおいのする木製の小さな椅子
小学校の教室にあるような椅子
揺らすとかたかた音がした
そんな椅子にあなたは腰かけている
手には一冊の詩集
マ ....
「無」
カラカラの大人を脱いだらギリギリの元気
ギリギリの元気を脱いだらテラテラの苦笑
テラテラの苦笑を脱いだらシワシワの孤独
シワシワの孤独を脱いだら なんにも無い
....
すれちがう人の香水の匂いが
鼻にまだ残っている
僕が貴方を思っていることを
手渡しで渡してもいいですか?
今はまだ分からないけれど
いつかは答えが見つかると信じているよ
....
平日の真昼間からチューハイ片手に地元を闊歩すれば
ご近所さんの白い白い眼差しを否が応でも全身に浴びる
それでも歩いてしまうのは
世界の秘密が知りたいから
ふらふらと歩く私を叱責するものはも ....
携帯の光に
照らされた
待ち人の
横顔のシルエット
夕暮れの
ショーウィンドゥに
行き交う
幾多の
「わたし」の時間が
明滅するネオンに
滲んでいる
そんなに難しい事でもないんよ
例えば林檎
本当は色がない
ある波長の光を反射して
目が勝手に赤と見るんだ
色彩学な友人がそう言う
私はただうんうんと頷く
そんなに難しい事でもないんよ ....
秋の朝
濃い黄いろい道を
ゴルフ場へと向かう
きょうは暑くなりそうだ
秋の夕
青くて灰いろの道
ゴルフ場を後にする
つった足でアクセル踏む
僕は ....
指の先までウォーターベッド
赤ん坊はたぷたぷとした混沌だが
お母さんがいるからだいじょうぶ
ここにいる、
ないている、
お母さんは駆けてきて
果実グミのような鼻を口で覆って
ちゅ ....
命がひとつあった
命なんていらないと
思ったときもあった
命がふたつあった
どちらかの命が
残ればいいと
思った恋もあった
命がみっつになった
みっつすべて
残ら ....
私はたくさんのものに恵まれている
収入は同年代の女性の3倍
たまたま入った会社でも使えると思われている
恋愛には事欠かず
一生大切にする左手のリングも手に入れた。
そういう女 ....
まいにち 階段の数をかぞえる
それが 母の日課だった
増えたり減ったりするので とても疲れる
と母はぼやく
階段のある家には 住みたくないと言った
階段がなくなったら ぼくの駅がなくなってし ....
あまくなった
熟れた私は
のばしかけの髪を
洗う。
したたる
雫をなめてみて。
りんごの
香りがするよ。
モーツァルトを聴いて育ったりんご
のように
あまい
からだ。
....
季節外れの神社に
十歳の僕と親父が歩いてゆく
親父は何もしゃべらない
僕も黙ってついて行く
参道の階段には銀杏の葉
黄色い黄色い石の道
段々を上って一息入れる
親父の肺は一つしかない。
....
おーい、と言った
おーい、と返ってきた
そっちはどんなあんばいですかあ、
と聞いたら
そっちはどんなあんばいだあ、
と聞かれた
それじゃ、意味ないです
お義父さん ....
・
私の本当の名前はスマコというらしいです
だけど父も母も兄弟もみんなスマと呼ぶので
いつの間にか私はスマになってしまいました
ときどき本当の名前について考えます
コというのはどういう漢字な ....
(その悲劇は約ひと月前・・・
マイクの電地を交換しようと思い
なぜかマイクの頭をこじ開けた時、
配線をぶっちぎった事から始まったのであ〜る)
お年寄りのゲームの司会で
お ....
朝起きて具合が悪いといったら
「休みなさい」
と母がいう
ぼくよりいつも遅く出かける父は
今日は会社に行ってすでにいない
うまくいった
とぼくはおもった
普段なら熱をはかられて
「 ....
どこかの国の学者さんが
音符の組み合わせを計算して
私達があといくつ
歌を作れるのか発表した
なるほど
人類はそうやって
段々と終わっていくのか
新しい歌の生まれぬ世界で
人々 ....
飛翔する鳥は駝鳥を馬鹿にしていた。
飛べない鳥は鳥では無いという彼らの傲慢さ
飛翔する鳥は自由だという。
飛翔すること自体が美だと。
彼らは美を体現していると自ら誇る。
それを群れの中の ....
{引用=「それでも、こころの中のたいせつな部分に、美しい、青い麦の生えた
草原があって、その向こうには荒々しい崖と海も見えて、そこではわたしとあな
たは虫捕りあみやかごをもって、いまでもはしってい ....
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