アメリカ人たちと会議をするといつも
合理性のなかに弱さが同居しているのを感じる
それは金融危機の起こる前からの印象だ
彼らの言葉にはまず結論がある
彼らの言葉を使うとき
僕らは結論から話すのではない
....
ハンバーガーショップで
別れたばかりの彼女からもらった
割引券を使った
本当は君を思い出すために
取っておきたかったけど
期限が迫ってたので
海老フライバーガーを注文した
....
僕の住む街に国内二次感染が確認された
なんで神戸なんだろう
僕は悲しみに襲われている
地震や感染症がこの街で起こったことに
僕らはどういう意味を見出だしたらよいのだろう
雨が降っている
ニ ....
雨が降り続く夜を
遮ってしまおうと
戸袋から雨戸を引き出しかけて
ふと 手を止める
視界の端で
何かが咲いていた
雨戸とガラス戸の隙間
わずか2cmの
薄っぺらな空間の足元 ....
夏祭りですくった金魚は
10年以上経った今でも元気で
水槽の中を気ままに揺らぎ
ときどき思い出したように
視線を合わせてくる
特に感情は見受けられない
小さな家の小さな水中で泳ぐお ....
汗ばむほどの陽光の
照り返しに遮られて
わたしはまた
前が見えない
夜のうちに拾った
指たちをつなげても
それは手にならないのだ
誰かの声の届く範囲に
いるはずなのだが
それ ....
夜明け。雨が降っていて僕らは神社で雨宿りしていた。徹夜明けの僕らは相手の膝で交互に眠った。三島はここで死んだね、君が寝ている間、君の短い髪をかきあげながら、あじさいの花が揺れるのを見ていた。
....
君の街の郵便局に
僕は辿り着いた
大きな荷物を背負って
配達したけれど
不在なので
僕はまだここにいる
早く届きたかった
産声をあげて
君に封を
切ってもらって
....
私たちは小さなものであり
小さなものであることの上に
居座っていた
当然のような顔をして指をなめ
ずるがしこい風を読み
来た道を戻っては
前と同じような幼い顔をしてみせた
そうして世界は ....
電話のあなたの声がしゅるしゅるとしぼんでゆく
タイムリミットは15分
「ウルトラマンのカラータイマーみたいね」
3分の5倍あると思っても
沈んでいくあなたを掬いあげられないまま
電話 ....
胸が つんと 詰まる
まるで涙をこらえているみたいに つんと
こぼれそうなこの思いは なんだろう
真っ白いシーツ 物干し竿でなびいている
舞い上がる 太陽を包みこむように
ひる ....
カレーを注文した
一皿では足りないから
二皿注文した
けれど
食べる人が一人足りない
君が足りない
一皿のカレーを残して
私は店を去って行った
あの日
私一人 ....
私が幸福を
忘れてしまうのは
きっと「私」を
握り締めてしまうから
もしも「私」を手放せば
空っぽの透けた体に
(風ノ人)が入って来る
そして両手を組み合わせ
私 ....
例えば
すぱあっと気持ちよく切れる
流線型のペーパーナイフ
例えば
小さな蜜蜂の脚についた花粉
のこぼれる音
例えば
南の島のからりとした朝の白いテーブルクロスと
熱々のコーヒ ....
090514
良くない
欲が無いから
良くならない
良くない
良くない烏が
良くない男を囓る
囓るのは狸の癖
良くない狸が良くない烏を囓る
....
海からメールが来ましたよ、ラ・メール
光さす水面下
五月はクラゲも季節です
よつめ花びらたちのエフィラや
うりくしたちの赤ちゃんの
沈み止むことなき花吹雪
外海では
彼らの親が吹 ....
わたしは空に興味がありますが
そこに住む鳥も
そこを通る飛行機も
特に興味がありません
だけど、あなたが
「あ、飛行機だ」
というと
今の時代
さして珍しくもない
飛行機など ....
きっと しぬなら
ここが いいな
口許に両手で
まっすぐに支え持つ
大切なものが
ひとつも目に入らないようなのがよい
最初からいままで何も知らず
何も持たなかったかのように
最 ....
お昼休みにメールをチェック
件名:「虹が出てるよ!」
本文は、ない
数時間前のメールだから
虹はとっくに消えている
でもね
見えた
見えた気がしたよ
夜、帰りの電車でメールをチ ....
連休後の朝、
ちょっとお疲れ気味。
そんな時に限ってゴミの日で、
分別作業に気が遠くなった。
目玉焼きが半熟にならなかった時は、
朝食作りを放棄したくなった。
いつもできていた ....
十分で千円の
散髪屋に行った
わたしはそこで
十分で千円分の
人生をくださいと
店主に言った
けれども椅子に座らされ
十分で千円分の
髪を切られてしまうのだった
....
シロツメクサの
香りがすると
きみがいる
藤の花の
香りがすると
やはりそこにも
きみがいる
帰り道だった
沈む夕日が眩しくて
見えはしない
香りだけのきみ ....
誰かとどこかへ行っても
そこはここになる
ひとりぼっちで
いるここだって
同じここなんだ
ためしに朝起きて
窓の外を見てごらん
水道管が破裂したのか
そこいらへんじ ....
軽い足取り
幼い照り返し
蹴飛ばしながら
進む
シャツの袖まくり
緑のさざなみ
産毛を立てながら
泳ぐ
弾む呼吸
迷走神経の舗道
気取りながら
急ぐ
....
きっとまだ
折り返しにすら着いていないと思う
それでも
人生の半分以上
きみがいた
裁縫の授業が苦手で
いつも居残りしていた
なかなか針が進まないわたしを
いつもこっそり手伝っ ....
生産性をアップさせるために
無駄をとれとかいうけれど
それはたぶん素晴らしいことだと思うけれど
承服しかねるじぶんもいたんだ
無駄なんてない、って
月あかりが万物にしみていました
....
考えても
仕方のないことを
考えている
スターバックスコーヒーで
名前を
間違えてしまった
マクドナルドの
喫煙席で
あなた宛の手紙を破る
ころしてやりたいのに、搾り出した鳥殼のような声で、ゆるく爆ぜるように言葉は飛んでいった・なにを・だれを・どうして?・理由なんて必要なかったし、益して言い訳なんて、そんな、安いペットボトルのおまけみたい ....
光を認めたときから
歩き始めている
最初の頃は
目に見えるもの全てが
新しくて
眩しくて
喜びに満ち溢れて
時の流れと共に
すっかり見慣れてしまい
踏み出してい ....
すべてはこのバスの中で完結している
ふとそんな言葉が頭を横切る
雨はもうじきあがるだろう
そうして所在無さげに
手すりの傘だけが残るのだろう
老人は窓と小説を交互に眺める
後ろのどこか ....
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