待ってる
ということは
生きてる
ということだから
待ってくれなかった
そのひとは
死んでしまったのかもしれない
遠くから
改札口を見つめるそのひとは
待ってる
というよ ....
建物を出ると驚くほど寒い
7時間ぶりの外の世界が
熱を帯びた脳を冷ます
薄曇りの空の中
提灯のように
月がぼんやりと光り
遠すぎる等間隔で
街灯が照らす田舎道
努力の底が見えない
....
合宿所の小さな食堂
人と話すのが苦手な僕は
ひっそりと息を潜めながら
周りの会話に耳を傾ける
スプーンを洗いに席を立つ
「その唐揚げ美味しそうだね」
その言葉に振り向いてみたけ ....
満月が
おおきくくちを開けて
新月になる
夜空をひとつ
噛み終えるまで
いくつもの時を食べつくし
それでもなお
夜はおとずれる
無数の星は彼らの目だ
今日もどこかで
....
081103
冗長度の高い黒髪を梳かすときに
クロネコの背中が見えた
クロネコは背中を丸め
3メートル前を走ってゆく
大馬力のハーレーだから
....
もっと
川であれば良かった
素直に
下っていれば良かった
もっと
月であれば良かった
律儀に
満ち欠けしていれば良かった
もっと
波であれば良かった
健気に
寄せては ....
釣りは飽きてしまったようだ
さかながいないからしかたがない
父さんだけが夢中になって
往生際がわるかった
ふりむけば
木のベンチで息子がねむってる
一億年前から
そうしていたよ ....
街の風景を愛しく想うのは
街が僕の延長であるからだろう
あらゆる物を僕は備えている
爪や血管、汚職や罰金の滞納ですら
何もかも僕に似ている
路地や神社や夕暮れの生殖器
傷跡を覆うように ....
皆が笑顔で集う
不思議な海の中心で
貝のこころを開いて
歓びを分け合うのも自分
ふいに人と話せなくなり
深海の暗闇で
貝のこころを固く閉じ
独りきりになっているのも自分
....
ありのまゝに あるがまゝに
私は日々を過ごしている
雲のように移り変わるよしなしごとも
お茶のように喉をすらっと流れることも
みな私をとりまいている
....
海で言うところの
水平線で
わたしは平たくなって
息をひそめる
かなしいことなど
なにひとつない
けれども横になって
うずくまると
涙がほほを伝うのがわかる
枕に染みこんだ水滴は ....
きのうの夜
妻とけんかしたのだ
きっと疲れていた
今日は帰りたくなかった
だから僕は家の前を通りすぎていった
同じ色の
とても小さな家が
線路沿いにつづいてる
青でもなく緑で ....
娘とふたり
バスに揺られている
おまえが置き去りにした
ウサギの手さげ袋は
そのままバスに乗って
湖近くの営業所まで
運ばれたらしい
忘れ物はぜんぶ
そこへ運ばれてしまうのだ
....
掌は舟
温かくて何も運べない
体液を体中に満たして
今日も生きているみたいだ
塞ぎようのない穴から
時々漏らしながら
階段に座って
ラブソングを歌ったり
駅前の露店で
プラ ....
嵐のような日常が終わると、嬉しかったこと哀しかったこと色んな気持ちが絡まって編まれていったものが残る。思いかえすということは、それを井戸のような深い水の底までゆらゆらと下ろしてゆくようだ。水面に浮いて ....
取りこぼした一日のことを思いながら濡れた路面を漂っている午後の温い焦燥、底が破れ始めた靴のせいで靴下はすぐに嫌な湿気を持つ―吐き出したガムの形状が悲惨な最期を遂げた誰かみたいで、名前を ....
目の前にある林檎
赤く赤く鮮やかに
もしも
私に見える林檎の赤が
他の人には
私が見ている葡萄の色として見えていたとしたら
私は他の人が見えている葡萄の色を赤だと思っていて ....
思い返すと僕は
思春期の日々を過ごした街の中にいるのだ
公園のグラウンドの中央に立ち、辺りの景色を見渡す
まるで水の中のように
空が柔らかく揺らめいて
太陽の細い光の線が散乱する
....
僕と妻にとてもよく似ていて
そのどちらにも
似てはいない
それが彼なのだ
君はいったい
誰なの
と息子の目を見てそう問うと
不思議な顔をしてる
ふと思い出す
僕と妻は
....
{引用=副題:狙われた街/狙われない街}
こんな日はめったにないけど
たとえば
なにもかもが真っ赤に染まる絵のような夕焼けの日
空は思いのほかよごれてしまって
あるいは記憶のな ....
秋の笛はススキ野をつらぬいていく
そらがたかい 木は枯れた
あしもとを照らす街路灯
遠くを照らす燈台
世界を包むあなたの一息
遠くの砂漠で聞いている
あなたは雨を呼んでいる
一 ....
色めく
粒が柔肌をついとなぞり
穂先を白く削っていく
時が経てば
損なわれるのだろう、瑞々しさ
それは私ではない
かつての私でもない
まだ若い肉体は
これからも若く生まれつづけ ....
日曜日の広場で
バザーをやっていた
たくさんの子供等が
小さい手に{ルビ紐=ひも}を握り
宙に揺れる
色とりどりの風船達
あっ
立ち止まる若い母と ....
日陰に咲く花の
黒々と生えそろう髪とは対照的に
透けるように肌の白い
女を都会で見かけた
窓越しに
ハンバーガーを食べ
南中する真昼の太陽から逃れ
安堵したように
煙草を斜め ....
もう後は
いつお迎えが来ても構わないだの
早くお迎えが来ないかしらだの
そんなことを、此処のみぃんな 口にしてる
だども、
したら、なして
年寄り達が予約した時間のもっと前から
病院の待 ....
1
昔、ひとりの修行僧がいた。彼は、心が完全に澄み、あらゆる悩みや欲望が彼を通過していき、何物にも動かされない境地を目指した。物事に動かされないようにと、彼はどんどん重くなっていった。瞑想や思索 ....
{画像=081025210836.jpg}
手をかざし
光を遮る
目を彷徨わせる街並み
風が吹いている
その風は北の街から
吹いてくるのだろう
白っぽい風に夏のなごりは
吹き流され ....
人間関係へたくそなはずなのに
達人のように思われている違和感
逃げ出せないルーレット回っている
頭ばかりくるくるキレて
間違いがあれば素直に謝る術も
身につけている薄っぺ ....
色鮮やかな薄衣をまとった山あいは
戯れて欲しいと無言でせがみ
得も知れぬ愛おしさと
恋の味とは甘さばかりでは無いことを知る
その味わいのほろ苦さよ
古い峠道の傍らで人知れず朽ち果てた祠で ....
あなたは
「&」という記号を
上手に書けない
あなたが「&」と何度書こうと
ただ紙上に首のひん曲った
醜いアヒルが出現し
不器用な水浴びと遊泳を始めるだけで
事物は結合も 強調も ....
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