「猫を探しています」

と書かれた手製のチラシが
郵便受けに入っていた

「名前 小太郎 茶虎 体重4kg」

茶虎の猫といったら
このあたりでも野良でたくさんいる
正直見つか ....
飲みながら近況を話しても五下りほどで終わってしまうのだった

いかに平凡であるかを思い
いかに彼らと掛け離れているかを思う

仕事の話も
子供の話も
まるで持たず

景気の話も
話 ....
窓を閉め忘れて出かけてしまって
冷え切った暗い部屋は他人の所有物のよう
冷たくなるというのは きっとそういうこと

買い物袋を床に投げ出す
床に散らかった本やCDやお菓子の袋や洗濯物を極力避 ....
 
 
 
 
羽の音が、する
 
飛び立った男の子と
手を引かれながら
つたなく飛ぶ
女の子のすがた
 
透けるように薄い
ぺらぺらの羽は
あまりにも、心許ないから
 
 ....
近くの。通勤の途中にラブホテルが3軒、軒を並べてるんだけど。

まわりがふつうの住宅街なのでおかしな感じだけど、もとはといえばこのあたり、細い路地の入り組んだ下町だったからね。もともとからあるんだ ....
{画像=080504235430.jpg}
満員! 
定員オーバーだよ!
でも

山手線の中でも
五月の風は吹くんだ。
赤ん坊の髪の毛が揺れている。
ふわふわ遊ぶ髪の毛を見ていると
 ....
ネオン街で同僚と飲んで
赤い顔ではしゃいだ夜遊びの後
やけに寂しい帰り道 

終電待ちのホームに並び 
線路越しに見える 
広告募集中の真白な看板が 
自分のこころのように見える 

 ....
この世でうまくやるために
生まれてきたわけじゃないんだぜ

俺は本当のことをいうよ
誰かがそれで傷ついても

この世でよろしくやってくために
生まれてきたわけじゃないんだぜ

俺はや ....
長い間待ち望んでいた瞬間が訪れる
受付の看護士さんに案内され
病院らしい匂いのする待合室の長椅子に
わたしはひとりで腰掛けていた

手術自体はあっと言う間ですから

こころにメスを入れる ....
 
砂漠の真ん中に
ペンギンの死体があった
穏やかな光の祝福を受けて
左右非対称に腐れていた
耳をすませば
崩れる音も聞こえた
老いた男はか細い腕で
窓を閉めた
風で砂が入るのを嫌っ ....
使えないのは仕様です。開き直りたくもなる。
できない理由を問われても聞かれたこっちが聞き返したい。
不器用さが格好いいのはテレビの中の話です。
現実は目の前にしか現われない。
夢見がちな年頃だ ....
 
 
 
 
桜葉のような少女の手を
抱いて
うら若きわたしが泣きます
 
 
波濤の白にいくつもの
瞳は
飲み込まれて
 
 
月がいつまでも
母恋しと
ひかります ....
あの日から遠いこころが始まった

そっちがいい

どっちがいい

気が向いたときだけ優しくできる


こらえきれず

きみを待ってる

ギター教室から

きこえる音楽
 ....
るいるいと
つみかさなり
荒涼をうめつくす石
  これは誰かの
  さいぼうであるか
それらの石が記憶の
かけらであるとしたら
この場所に吹く風も
意味を孕むであろうが
ただ過去を予 ....
人々の行き交う夕暮れの通りに 
古びた本が 
不思議と誰にも蹴飛ばされず 
墓石のように立っていた 

蹴飛ばされないのではなく 
本のからだが透けているのだ 

聴いている

時 ....
掴みきれない砂を
別れ際におとした
5月の夜空は
何も知らなすぎる

またね、と約束して
帰ってこなかった人を
悔やむ
その先に空白





・・・
わたしは正しい ....
傷口をいじれば 
いつまでたっても治らない 
そう知りながら 
この手は気づくと触れている 

もう忘れていたあの日の傷跡を 
いじり過ぎた浅黒い影が  
遠い過去の空白に 
うっすら ....
本のページをめくる
あなたの指が
風のようだと思った


あなたの中で
長い物語ははじまり
長い物語はおわる


本を閉じると
あなたはすっかり年老いて
物語のドアから出てゆく ....
長さが
ちょうどいいので
いつもその道を歩いた

長さは長さ以上に
距離ではなく時間だったから
帰る家もなつかしい

廊下の床がゆるんで音が鳴るのは
散歩と人の長さが
同じ距離に ....
ええ
主人のことは愛していましたよ
もちろん子供たちのことも
なぜこのような事になったかなんて
説明できないわ
(直接的な方法ほど
 恨みが深いなんていいますが)
私が包丁を選んだ ....
街にほどかれて

悲しみがほころんで

ふらついていた


悲しまない

悲しむまい


どこかで僕らは

計られ

見守られ

さやかな風が運ぶ

なにを見た ....
東京のさかなは
全然ダメです
死後
七日目ですかって
そんなことを思ってしまう

電車から眺めると
無数の家だ

孤独
の意味を私は思う

ヘッド・フォンで武装して
右側をガ ....


眼を閉じるとそこは
金木犀の香る秋のベンチで
横には
もう何度も思い出しているから
びりびりの紙のようになってしまった
いつかの君が
黙って座って煙草をすっている
周囲がいやに ....
あいじょう
というものをたいせつにしてください、と
卒業式のとき
せんせいからいわれた
あいじょう
というものはこういうかたちをしています
これはサンプルですが
たいせつにする練習に ....
またもや不意打ちに
なげこまれたアクシデント
水面がざわざわ騒ぎだす
バリケードをはりめぐらせたつもりが
いつもほんの一瞬のスキをついて
とびこんでくる



ズン と重く腹にしずん ....
その川の子供の神様が
いつからそこに居たのかは
神様自身にも分かりません
気づいた時にはもうそこに居て
そのほかの子供の神様や
村の子供たちと楽しく遊んで暮していました
村の子供たちが夕方 ....
なにもきかない
なにもきかないで
ぼくの目だけ見て





遮断機がおりる
ぼくの前で
引き裂かれる
地図の裏側は
ただ白いだけじゃなかった





 ....
何だか分からないけど
言葉で「定義」すると安心する
分かったような気がして来る
分からないモノやコトの凹にイミを充填する
定義しなければ前に進めない?
進むために何でもいいから充填する
ご ....
田舎の駅の階段を 
せーらー服の少女は軽やかに上り 
ひらひたと舞うすかーとのふくらみに 
地上と逆さの重力が働いて 
自ずと顎が上がってく 

まったくいくつになっても 
男って奴ぁい ....
おまえ、
わたしたちはけっしていっしょには成れないね
いっしょにいることはできるのに
へんだね

いっそ外国へいってしまおうか、
いっそ、なんて云わなくとも
理由や意思や罪性なんてようい ....
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