砂でできた掌が
記憶の水に
崩れていく
そしてそれを受け止めようとする別の
掌がある
赤茶けた鉄路は
臨海の工業地帯へと続き
大きくカーブする
その付近で
群生する草の穂 ....
山奥の針葉樹林で生まれた
朝露のひとしずくは
無数のひとしずくと共に
苔や羊歯の間を縫って
ひたすら傾斜に従う流れになった
渓谷では
無邪気にはしゃいで
いたずらに透き通って
....
仕事と仕事の間の
エアポケットのような
30分間
中崎町と天六の真ん中あたりの
こじんまりとしたおしゃれなカフェで
居心地の悪さを背負いながら
コーヒーを飲む
午後2時
この街 ....
いったいなにが起こっているんだい?
朝起きてから
目が覚めてからずっと
よくわからないんだ
ちゃんと調べたら
たいしたことがないのかもしれない
ちゃんと調べなくても ....
小雪は宙にちらちらと
ほほにとけてゆきます
そらはあんなにふかくって
こんなにあつくふっている
さっきまでここにあったのに
出あった瞬間どこへやら
おそらく、これは
みるのも こころ ....
100601
空のコップに
ミネラル水
ミネラル水に
ソーダ加え
掻き混ぜて
ぜて
....
休日の午後
息子と散歩した
飛行機を空に見つけて
あんなに飛んで
どこまで行くんだろう
と息子が言った
西の空を見ては
あそこに夕方みたいなのがあるよ
と僕に教えてくれた
....
*一時限目 数学*
美しき微分/麗しき積分/淫らな糖分=知性の所望するもの<睡蓮たちの睡魔
無限の輪っか((エタニティー=ハニーディップ×2))
を、黒板の隅に小さく描く
カリカリカ ....
もしかして美佐江さんだったのかな
週末の都営新宿線本八幡行き
朝方はお出かけの人たちでそこそこに混んでいて
視線に気付かなかった
それとも無意識に気付くことを避けてしまっていたのか
私の ....
ときのほとりで
さかなつりをした
たくさんつれたけれど
いっぴきもつれないひもあった
さかなはつまがりょうりした
おいしいとつたえた
たべないひもあったから
あいしてるとつけ ....
電停をおりて橋を渡る
引き潮の時間に
この川を見るのが恐い
川底の石たちが
洗い流されるのを
見るのが恐い
少し濁った
なま暖かいような
満ち潮で
どんよりと凪いでいる
昼 ....
八月が爆ぜて夏が広がり
テトラポットの向こう側で
海と空が入り混じるのを
優柔不断がこうして感じている
グレープフルーツの清々しい香り
水飴を練るように濡れていく心
睫毛を伏せて呼吸を ....
ひとを責めずに全力を尽くそう
ひとを裁かずに全力を尽くそう
そしてなにものかにお任せてしてしまおう
なにものかはたたずんでいる
世界にみちて存在をしている
責めず裁かず全力を尽くして ....
聞かせてください
そうは言っても
何も話さなくていいですから
声に出さなくていいですから
胸の奥で呼吸するみたいに
言葉を浮かべてください
生きていればあたりまえに
辛いことや悲 ....
みんな誰かに救われたいんだろう
無垢でほんとはいたかったんだろう
汚れた部分を洗い流して
綺麗になれればいいのにね
だけど汚れてしまったおかげで
君の悲しみがわかるなら
君の痛みがわか ....
離れたくないから
ぎゅっと結びたかった
なのに 切れて しまった
あなたは遠くなる
急がなくちゃ
ばらけた糸を紡ぎなおして
あなたに追いついて
結んでこないと
待って
待 ....
そのままでいいから
にじんだ風景の中にいる
僕を見てごらん
見上げてごらん
輪郭のない青が
君の瞳に溶け込んでいく
わかるだろ
ぼくはきみじゃないんだ
うらぶれた仕事がえり
なんだか日も長く夜7時
微笑んでくれたのは
群青の空と
人工の光だった
否、色に名前をつけ
空をその名で形容したしゅんかん
空は人工そのものだったのだ
家路とはなんであろう
物 ....
だしぬいて
宇宙が空にせり出していた
影絵とは宇宙のこと
シンプルな微熱が続いてゆく
いつの日か宇宙の一隅で
孤独な嘘を吐き出している
だしぬいて
宇宙が空にせり出していた
愛しいとは悲しみの轍のよ ....
星が粗野に散らばっている
オリオンぐらいしかわからない俺は
星と星を線で結べなかった
晴れのちレインの光を集めて
天体の住む街をきょうもゆく
忘れた人生を忘れた指でなぞっ ....
100525
木漏れ日が地上に撮すのは
我らが太陽
吉祥寺が叫ぶ
渋谷はその名の通り渋い顔
しかたなく新宿に向かう
途中の明治 ....
お葬式が終わるまで
隣の部屋で待っていた
テーブルの上に焼き魚があった
ラップがかけられていて
冷たくなっていた
誰かがお葬式に来れなくなって
余ってしまったんだろう
僕は早 ....
ぼんやりと浮腫んだ月が
夜空の底から覗いていた
見透かしたような月光が
書きかけの溜息を嘲っていた
出かけたっきり帰ってこない
セツナサを待ちあぐねていたら
黙りこくったキーボードを
飼い猫が悠々 ....
きらきらと
光が降りている
あれは神さまが
写真を撮っているのだ
という話を
君としたかもしれない
木漏れ日の下で
あの日僕らは
どんな生き物の姿で
....
歌を聴くならヘッドフォンを買うべきだ、今すぐにでも。
耳を覆うタイプがいい
それを装着したなら
あの歌をかけて
目を閉じて夢想するといい
(ノスタルジックなギターの音色に合わせて
女の ....
{引用=姉の子供が遊びにくると
正直こわい
加減を知らない無邪気なキック
ちょうどみぞおちにくる頭突き
誰から教わったのか知らないが
姉の技に良く似ているのは確か
「遊 ....
クサマヤヨイの絵が好きだ
とくにカボチャのが好きだ
死班のようにも
病んだ精神の血痕のようにも
見える
クサマヤヨイの水玉が
クサマヤヨイのドットが
カボチャのかたちをして居心地よく座っ ....
つばめは
どしゃぶりの中を飛んでいった
ヒナにエサを与えた後で飛んでいった
雨の中でもとりが飛ぶことを
知った ぼんやりした頭で
ひっそりしている巣の中に
命があることを想う
....
ワイシャツにアイロンをかけているうちに
見知らぬところまで来てしまった
さっきまでいっしょにいた妻や娘の姿も見えない
どこか淋しい感じのするグラウンドで
赤勝て
白勝て
子ども ....
街路樹の葉はひらべったくなっていた
この街にはもう新緑はなかった
木々や草が精子のような匂いを送り出していた
女が買い物にいくのを女の部屋で留守番した
低層階だから木々の先端がガラス戸ごし ....
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