やっさん
やっさんは九州から中卒でやってきた人だった。
工場に勤めて、結婚しそこなったまんまで55になった。 なんかの副職長という肩書きがついていたけど、給料は安いまんまで、九州から出てきたとき入 ....
もう長いこと
あなたと暮らしてきたけれど
もし今日が
はじまりの一日だったなら
僕はあなたに何を言えばいいだろう
と考えた
暮らしてきた日々とひきかえに
これからも暮らすための ....
書き留めていたはずの詩が
一晩のうちに
家出をしてしまったらしい
枕元にあるのは
真っ白な紙の切れ端で
紙を失くして
彼らは
ばらばらになってしまわないだろうか
雨が降 ....
何かをはじめるためには
何かを終わらせなければならないと
手紙に書いた
何かの本で読んだ言葉だ
と書いたけど
嘘だった
けれど
そんな気がしてるだけで
本当は言葉なんて
き ....
なんだか灰色の空だな
シャブ中で捕まっている夫とくらしていた家はおじからかりていたもので
おじは今母の働いている透析の病院の院長先生をしていて
このお正月にすべてからっぽになったその家をみに ....
{引用=*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語 ....
エントロピーが増大しない方向へ
コマを進めようということになった
博士の愛した数式は
イコールでだけ 息継ぎをする 走りながら
走りながら 本当のふりをした 走りながら
....
小さいながら我が家の庭には
大きな松の木が植えられていた
初夏の頃には松ぼっくりをつけるその木は
祖父によるとヒマラヤスギという種類だそうで
松ぼっくりのできる杉ということが
当時の私にはと ....
コロンと鳴った 耳の下の方で聞いた
なんで気が付かなかったんだろう
ハネた髪の毛が鏡に映ったりして
食パンの焼ける匂いを嗅いだりして
振り向かなかった 振り向かなかったんだ
行ってき ....
箱庭の蓋が
ぴったり閉まらない
出会った頃は
普通の箱と蓋だったのに
一緒に暮らしてると
角が立ってしまうこともあるから
そのせいかもしれないわねと
妻はまるで
人ごとのよう ....
090108
ミズーリー州を
ミシシッピー河が
とうとうと流れてゆく
流れていくのは水で
河ではないと
理屈をこねる
ぼくたちの前を
気をつけをし ....
ああ、雨リア
風を吹いてゆけ雨リア
泥だらけの足は
土の匂いは
毎朝欠かさず
しみこませているよ
長いということは
古いということともちがう
近いということは
親しいというこ ....
あの空は
ぼくたちにとってのどんな色で
何かを忘れないための色になったりするんだろうか?
つきぬける青に白い雲ひとつ
思いかえせば、
この変わらない空の下を
ながい間、 ....
夕焼け時刻には出歩かない
気持ちが恐くなるから
真っ暗に包まれてあんしんになったら
そしたら、帰る
終わりがあることに救われて生きている
ただ、その瞬間を待っている
帰り道のわ ....
ふれると
消えてしまうものばかり
見てきました
ふれる
ということは
案外
傷つけることかもしれないと
知ってしまってから
ただ
見ていることしか
できなくなっていま ....
ぬらりひょん
つかみどころなんてあってたまるか
若い頃の苦労はすぐに質入れしたし
長い物は巻かれるふりして帯にした
真っ正面から当たるなんてドジは踏まない
折れない柳は風を知り尽 ....
090107
くるりくるりと
繰り返される
怖いことを
だぼ鯊の眼で
見つめていると
潮が満ちてきて
平らになって
異国の地は
遠くなって
山からの風が
....
そらを切り取る限界線
雲のはじまりとおわり
みえていることだけが
ほんとうのように
ほんとうのような青空
バックライトで透過され
綺麗なレースがひかれ
いくつもの鍵で守られ
夜に自 ....
雑踏ならば天使みたいな昼間のキミのキス
は磁石みたいでこわい
最悪感でひろがるのに
何度もやめたくなくてくりかえす
後ろの座席で友達がねてるのに
寝てないフリをしている
たぶん
たぶ ....
あなたは書かれた事のない手紙
いまだ出された事のない手紙
封を切られないまま
大切に言葉をしまい込んで
わたしはそっと考える
その言葉がどんなに心を震わせるかを
わたしは夢を見る
....
ビニイルの中から
米をとる
まだ少し
土のついた米に
虫が寄り添う
カップにゆっくりとり
一杯ずつをかみしめ
炊飯器がそれを食らう
そうして
ぼくの部屋は青くなる
静かにとぐ ....
090105
九官鳥を起こしてから
夜具をたたむ
昨夜、飲み過ぎてしまい
エスカレーターで蹌踉けて
危なく転落するところだった
すぐうしろの ....
薄暗い街灯を避けるように
Davidが
深夜の公園で立っている
ように見える
満面の笑みを浮かべて
いや
満面の笑みを浮かべている
ように見えて
Davidは ....
幼稚園のときおれはヒーローだった
椅子取りゲームでは最後まで残り
跳び箱はおれだけが六段まで跳べて
お遊戯会では最後の取りで
三人でやる踊りでセンターを張っていた
小学校のとき ....
いつのまにか 僕は 僕を 殺して
僕じゃない 僕が かわりに笑っていたんだ
いつのまにか そんな 日常が
楽になっちゃって
あの人もこの人もその人も
もしかしたら 君までも
だまし ....
冬の夜小さく光る星の隙間から夕空が落ちて
いたので
拾って
帰りました
夕空はすっかりくたびれてオレンジもすっかり擦り切れて青ざめてまるで
紫の
宵っ張り
みたいです
所々に張 ....
ろくろ首
それにしてもあなたを待ちすぎました
わたしの断ち切れぬ想いはあの日の
あなたのうしろ姿に縋りついたままで
身体だけが狂おしく軋みながら
いくつもの夜を越えて来たので ....
インターネットにより
世界は発散に向かっていたが
戻ってきた土地は
歳を重ねて
背が丸くなり
収束していた様子だった
私の空間は
止まっていた
拡大するでもなく
収束するでもなく
....
砂丘から砂が流れて来たら
それは夜の始まり
私は眠る準備を始める
天井を通る赤い水流を
電灯から白い汁として引き込む
煤けた電球の先から、光りながら
とめどなく溢れる白い液は
黄色い ....
今にも落ちそうな
線香花火の最後の赤が
すっ
と
手元で息絶える
嗚呼
恋は終わるのだ
こんな風に
化石になって
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