拝啓、冷蔵庫様

長い間ご苦労さま
十六年間、寝食を共にした
おまえが逝ってしまい
わたしはとても寂しいよ

突然のお別れだった
何だか、冷えが悪いと思っていたら
冷凍食品が自然解凍 ....
{ルビ処女=おとめ}はその森に入ってはならない
森に入ればきっと出会ってしまうだろう

そして血よりも紅いその薔薇を手折ってはいけない
薔薇を手折ればきっと恋に落ちてしまうだろう

それは ....
君は一杯着飾っていたね
着けるだけ飾るだけ幸せになれると

友達も言っていた

君には複雑な鮮やかな柄が似合う
肌着はもっと暖かい真っ赤が良いよ
もっともっと着飾った方が

君はいつ ....
時間を つぶすと言うのか
やっと生まれて来た この
小さな 幼気な時間をあえて
つぶす と言うのか

梱包材のつぶらな可愛いプチプチを
訳もなく指先でつまんで破裂させるように
このささや ....
まだ若い老人であったころ
同僚と紅葉の山麓へドライブ旅行にでかけた
秋空のもと 静かな集落を抜けるとき
前方遙かに 背をかがめた人が横切るのを見た
同僚はスピードをやや落として言う
「老人は ....
激しい夕立は
突然やってきて
落雷で鉄道が遅れている
小さな駅舎で
雨宿りをしながら
駅の改札で恋人と
待ち合わせをしていて

豪雨は短いうちに
まるで屋根を
ひっくり返したように ....
 
あなたは、今もあなたで

わたしは、今もわたしで

それでいいんだけどね、でもなんだか、なんだかね


 
祭り太鼓の音があちこちの集落から
田面に流れ出すと
こどもたちたちは宿題も魚取りもすっかり忘れて
祭半纏をはおって祭宿に駆けつけ 
出迎える獅子頭を連れ出して
集落内を練り歩く 

ぼく ....
山を駆け下り開けた浅瀬に出ると
ゆるゆると草を揺らしながら往く
水の膨らみは千変万化を繰り返し
陽射しに微笑みを返すのだ

小学生の女の子ばかり六人
紫外線から完全に身を守った女の先生と一 ....
都心を射ぬく沈黙のバスを執拗に尾行する
半分にすり減った横顔のまま

ビルの狭間にこうこうと深く冴え渡る闇の遠くで
連動する疲弊の連鎖に眉を震わせ

容赦なく目に斬り付ける
横殴りの光の ....
汗に濡れたシャツをはだぬぎ
わたしは暗闇のなかを
帰るふりをして 逃げたのだ
七月の 台風の 雨のなかを
精一杯生きようとして 逃げたのだ
咎められることは何もない
そのほかのことは知らな ....
一瞬で
りんごもにんじんも正論も砕かれ攪拌されてどろどろのジュースになるみたいな
彼女だけの鋭いミキサーのすいっちは日常のいたるところで押されるのだった

あるいは一瞬で
女子なのにおおかみ ....
盤面に行儀良く並んだ歩兵
敵の攻撃を真っ先に受け将を守る
時には味方にも無視され
時には邪魔もの扱いされる歩兵
敵陣深く突入して将となるも
あっさり討ち死に
そして 次には
味方だった将 ....
「求めてるものは何ですか?」
テレビレポーターが
街の人に訊いていた
「求めてるものは癒やしです」
街の人は答えていた
コングロマリットなんだ
この世はコングロマリット
人と人は
同志 ....
木々があいする木漏れ日のこと
川がめでるせせらぎのこと

雨が求めるつちの渇きのこと
太陽がほしがる水溜まりのこと

夕日があこがれる水平線のこと
朝陽がのぞむ暗やみのこと

 ....
(あを。あを。あを。彼らを)
(僕らとは呼びたくない。海を見た事の無い僕)
(たったさっきまでひらがなを綴っていた。)
(塩水を海水と呼びたくもなる。瓶が卓上に敷く陽光の)
(シートの下に掌を ....
友達はいないし恋人もいないし誰にも助けを呼べない都会

何もかも自分でやらねばならぬこと 誰も近くにいない寂しさ

「大丈夫?寂しくないか?」と母が訊く 「寂しくないよ」と強がってみる

 ....
キャスターが告げるGWの始まりに壁の暦がもてあます明日

人様の都合を聞かぬこの星を苛めるために振りかざす鍬

白米に気色の悪い虫が湧く結局おんなじように生きてる

要するに食物連鎖のくく ....
そうしてすべてがすり身となるのだ
肉も魚も豆も米も野菜も一切合切
ミンチよりも細かくなめらかに
均一のペーストに
そうして型成される
ソーセージのような蒲鉾のような
なんとも名状しがたい食 ....
日々のおおまかな動線や微細な素描に
こころの絵の具の淡彩で色をちらしてほっとする

ビュッフェのようなリトグラフの陰翳の鋭い世界も良いが
ちょっと太陽のぬくもりをもらったような
なにげない淡 ....
時が経っても たぶんきみはきみのままで
あたしは ラッシュの人波に流されて溺れて
年老いた患者の愚痴を聞きながら
磨り減って 川下の石みたいに 丸くなる


そうして彩色されていく
 ....
 
花見の客もいなくなった公園に

八重桜が ぽつり

月夜に ぽつり



 
公園の遊具が拘束を解かれ
子供たちを纏い始めると
桜は突然咲くのだ
短い季節に燃え上るいのち
追いかけてはみるものの追いつけず 
去り往く姿 あっというま
廻り来る姿 あっというま
あっ ....
八重よ、八重、
お前はどこからやってきた?
海の向こうの和の国の
家族がお前も恋しいか?

八重よ、八重、
お前はいつからそこにいる?
出逢った時からお互いに
白髪も相当溜めてきた
 ....
ビルが朝陽にかじられて
吐き出された陽光は窓をすり抜け
昨夜の恥部を暴き出す

人々は慌ててカーテンを閉じ
ベッドを隠し
朝を始める

わたしと来たら
病室のカーテンを開け放ち
 ....
右の頬が激しく打たれた
しかし左の頬は無事だった

額がスズメバチに刺された
でも後頭部は無傷のまま

左目に火の矢が突き刺さると
右目はとっさに視線を逸らす

耳は恐々 欹てるだけ ....
ときどき、神さまについて
考えてみることがある
私は無宗教だが
神さまを侮ったりはしない

イメージは漠然として
先祖の霊だったり
大自然の力だったり
稲荷大社の狐だったり

見え ....
靴を履いて出掛けるたびに 冷蔵庫が肥っていく
月を眺めて暮らしていると 冷蔵庫が痩せていく

月が見ている私の距離は 靴で行けない夜の国
そこは 冷蔵庫のいらない世界
そこは 腐らな ....
君が詩を書いていると知って
私も詩を書いてみたけれど
書けば書くほど
言葉を見つければ見つけるほど
君のためにできることが
ひとつもないと知りました。
何のために書いているのでしょう
難 ....
青葉に光る水滴
そっと覗くと水滴の中に青空と赤い薔薇が見える
丸々と太った蜜蜂
小さい虎のパンツの細い蜂
バラの花に羽音のハミングが響く
赤・白・黄色
虫たちを誘う花の装い
甘い香りが漂 ....
北大路京介さんのおすすめリスト(19150)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
【_拝啓、冷蔵庫様_】- 泡沫恋歌自由詩20+*15-5-7
妖精の森- 未有花自由詩11*15-5-7
幸せは物足りない- 宣井龍人自由詩16*15-5-6
ツブスナカレヤ- ただのみ ...自由詩15*15-5-5
年を取る取るとはこういうことかー振り返るー- イナエ自由詩11*15-5-5
水滴を巡る追憶には- りゅうの ...自由詩10*15-5-4
なんだか- 殿上 童自由詩11*15-5-4
村祭と従妹- イナエ自由詩7*15-5-3
愉快な午後- ただのみ ...自由詩17*15-5-2
白い月- Lucy自由詩12*15-5-1
- 伊藤 大 ...自由詩915-5-1
すいっち- そらの珊 ...自由詩17*15-5-1
「歩」の少年- イナエ自由詩10*15-4-30
コングロマリット・アイスエイジ- ゴースト ...自由詩1*15-4-30
君に触れるということ- かんな自由詩24*15-4-30
あを。あを。あを。- 竹森自由詩415-4-30
ゴミ7- メンヘラ ...短歌115-4-29
GWの始まりに- 亜樹短歌315-4-29
ショク文化大革命- ただのみ ...自由詩18*15-4-29
迷子のうた- 梅昆布茶自由詩15*15-4-29
卒業写真- 藤原絵理 ...自由詩9+15-4-26
八重桜- 殿上 童自由詩14*15-4-26
春ぼんやり- ただのみ ...自由詩16*15-4-26
八重よ、八重- 夏美かを ...自由詩24+*15-4-26
ビルが朝陽に囓られるとき- イナエ自由詩17*15-4-25
ガガーリン- ただのみ ...自由詩11*15-4-25
【_ときどき、神さま_】- 泡沫恋歌自由詩21*15-4-24
月と靴と冷蔵庫- 為平 澪自由詩9*15-4-23
誰にも何にも影響を与えない散文詩- 左屋百色自由詩915-4-23
ぶぶんぶん蜂が飛ぶ- 星野つば ...自由詩415-4-23

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