手賀沼やキラリ水面に春来たり

菜の花や見舞いの窓に陽の光
あなたの重心が蛍のように揺れ動く度
私は喉の渇きを覚え、疾駆しては立ち止まる

世界が傾き星空は額縁を脱ぎ捨てる
遠い地平から、心臓を灯火に祈りを捧ぐ一群が
集合無意識の亀裂を修復しようと{ ....
はじめて宿泊した日は
洗いざらしのシャツとジーンズで
いつ帰るか予定のないひとり旅だった
大きなリュックを背負い
フロントまでの階段を登った



しばらくして
宅急便 ....
寝てる間に僕は
バージョンアップされているらしい
知らないうちに新情報がインストールされている
過去と未来の脈絡もなく
誰かと入れ替わったことにも気づかず
昼夜を問わず
意識にのぼる暇もな ....
短い夢の中で
大声で泣いた
会いたかった
探した
追いかけた
夢の中では
心が息を吹き返す

例えば
一日の疲労にゆらゆら身をまかせ
バス停まで歩く道
夕焼けでもない
うす曇り ....
激しい頭痛に酔って
電柱に頭突きして
奥歯がカチって鳴った

目の前には
泥まみれの天使
泥まみれの天使が私を見上げている
泥水溜まりの中から
泥まみれの天使が私を見上げている
泥ま ....
エルニーニョで死んだ
イグアナの尾
きみは追いかける

ぼくは受け容れることができない

魚は
タンパク質と脂肪を
全世界に提供する

電流の仕事は熱するだけではないばずだ
 ....
言葉の繊維で細い白く光る糸を紡いでゆく
ゆっくりと一日かけて語彙と語感とを撚り合わせて
染色を施して様々な色の糸に仕上げてゆく
それはやがて布地に織り上げられ
誰かの肌を覆い隠してその人自身の ....
まだ夏という季節が
迷いのない子ども
(のよう)だった頃の
残り香だけを頼りにして
つりがね草の
茎の中を歩けば
規則正しい配列の褥で
寝返りをうつ命たち
不完全な器を抱え
危ういバ ....
たまねぎの
ちゃいろの
うすかわを剥く
のり、で
はったわけでもないのに
なかみのかたちに
ぴたりとはりついて
かわいてしまった
うすかわは
もう
うすかわ以外の
何者でもない
 ....
初めておばさんと呼ばれたのは
娘を保育園に預けて働き始めた頃だった
仕事が終わって迎えにいくと
小さな子どもたちが
今度は自分の親の番かと
わくわくしながら遊んでいる

時間外保育の部屋 ....
今日は日曜日だから
病院の屋上で
ふんわりかすんだ景色と
ゆったり過ぎていく一日を
眺めていよう

近くを流れる川岸で
竿振る人がいて
逆さになった山の
頂上をめがけて振り降ろし ....
表通りはこんなにも穏やかなのに
私の心は悲しみの連鎖に怯えている。
残された時の歩みの中で、
一体何が出来ると言うのだろう。

愛する木々のさざめき、予感の連続。
ひと月。永遠のひと月 ....
この宇宙は
無から生まれた
無は
何もない真空のエネルギーとなった
真空のエネルギーは
10の80乗個の原子と
無限の未来に広がる力を生んだ

我々の身体や心の中にも
真空のエネルギ ....
赤血球のヘモグロビンが
その炭素原子を吐き出す
特別な意味を持った炭素原子

見知らぬ酸素原子にまとわりつかれて
二酸化炭素になって出て行ってしまった
あたしの炭素原子

どうして ....
              140323


粗忽な女なんか存在しないと
その男は思った
粗忽者はすべて男なのだと確信した
山間に住んで次第に山男のような風貌となり
里に下りてこなくなっ ....
苔むした三色ねじり棒が
時折脈動しながら回っている

脳天の禿げた主人は
「皮脂がいかんのですわ、皮脂が」
と、言いながら
頭髪の洗い方を指南するが
なぜ実践しなかったのだろう
と、不 ....
あのやまのかなたには

既にあるものがあるだけだ

定点はじぶんの肉体にあるのではなくて

こころを生み出す

脳のなかにあるのかも知れない


昼と夜の長さがほぼ同じなのだ

春分の日なのだ

なに ....
フラフラと
朧月の生温い宵に
プラプラと
妄想の尻尾をぶら下げて
ブラブラと
調子っぱずれの自律神経をナビにして

此岸の縁をそぞろ歩く

フラスコの中の
フラストレーション
 ....
「会社が潰れるかもしれない…」
夫が青白い顔でポツリと言う

「そう。じゃあ、じたばたしても仕方ないわね」
私は、パッションフルーツ入りの
プレミアムヨーグルトを食べながら答える
視線はス ....
夜の闇は恐ろしい
目の前に何がいるかもわからないのに
自分がここにいることだけがはっきりしている

いっそ
自分も含めここに何がいるのか
誰も何もわからなければ
よかったと
闇の中 ....
この公園には獣がよく来ます

あの石積みの崩れは
イノシシの仕業
あなたの足下のぼこぼこした土
それは狸の厠
先ほど あなたの踏んだ黒い豆
シカの落とし物ですよ

昼間花見客で賑わう ....
 壁を見つめて壁に書いた
 壁に眼で書いているから
 誰も気が付かないだろう

 もうこの壁ともお別れだ
 明日は別の壁の前に居る
 じっと壁を見つめた日々

 壁の前に机を置いている ....
                     140321

本末転倒のお話しなんですが・・・、と
怖ず怖ずと切り出した男の眼が今にも飛び出しそうにけいれんするように震えている
そんなに怖い眼に会 ....
月が満ちた午前零時
引力は拮抗する

三角関数が
どうして重要なのかを
知りたくないですか?

月のひかりは
海底までとどかないから

微弱な引力の波動を
感じているしかない
 ....
               140321
母国を拒否する現在の遊牧民は
国境を意識しないではいられないから
母国も異国も敵対するもののように感じられてしまうのだろうか
遊牧どころか
犬を飼 ....
押しても引いても現実は容易には動かない
しかし個々の事象は絶え間なく瞬時の変化をとげてゆく
成長とは産声をあげた瞬間からの死へのあゆみ

明日はわからない
でも希望はそのやわらかな隙間に生ま ....
呆けた{ルビ斑=まだら}の歌声に
後ろから捕えられ
目隠し外せば 春は
    娘姿の老婆
千代紙から蝶
切り抜いては 
    ふうっと 吹いて

この肥大した冬には 
心の資産全 ....
川伝いに伸びる
でこぼこ道の向こうから
菜の花がきれいね、と
懐かしい人が
光をまとってやってくる
どこかで硝子製の呼び鈴に似た
澄んだ鳥の声が響く

あなた、
ずいぶんともう
大 ....
クロレッツを二粒
鼻腔を流線形が疾走する
春よ来いの大合唱
彼女は鼻腔に猫を飼っている

空には翼を持った豚
犬と羊が阿呆面で見上げる
五輪は四輪より速い
すべては風の前の塵に同じ ....
北大路京介さんのおすすめリスト(19150)
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