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長谷川七郎八十二歳の詩集『もうおしまい』
くもり空の伊豆高原で祝いの酒宴をはった
そこには詩人のぶあつい生の風景が舞い
夏の夜はたのしい談笑のうちにふけていった
女流反戦詩人の膝枕はやわら ....
人間はいつもゴキブリの飛翔におののく。
りっぱな羽根があるんだから、
ゴキブリにしてみりゃ、
飛ぶのは当たり前なんだが。
ゴキブリ自体は、
単に飛びたいときに飛ぶ。
問題をややこしくす ....
+
忘れていたことすら忘れていたのに
嗚呼、忘れていたことを思いだしてしまった
思いだしてしまったことをいつかまた忘れられるだろうか
++
花の絵を描いて ....
幾度も季節は過ぎ行きて
過去に残せし我が心
舞い散る枯葉は
千夜一夜の我が夢か
咥えし煙草も燃え尽きて
儚く灰になりにけり
空の彼方を待ちわびて
夏の背中も今遠く
星の無き夜の ....
非番の日
みえこは赤ン坊をつれて外出中
(退屈なので)ぼくは
近所のスーパーに出かけた
食品を手にしてはいちいち
(退屈なので)
表示内容を大声で読み上げた
「着色料に発色剤 合成保存料 ....
寝起きはネコのようであり
うつぶせで顔をあげると
アザラシのようであり
つかまり立ちしてキョロキョロすると
イタチのようであり
よつんばいで這いあるく格好は
イグアナのようであり
ゲジゲ ....
平成元年五月六日午前八時三十八分
きみはこの世にあらわれた
なんて真新しい
しわくちゃないのちなんだ
嫉妬と羨望 そして羞恥から
たちなおるための時間を少し
ぼくにくれ
そのあとでなら ....
くもり空のおもたい朝
欠伸をしている川獺
頭にかぶっている笠
ぷんと鼻にかおる野糞
きみの眼のまぶしい若さ
よれよれになっている裾
てのひらにあふれる乳房
白い毛の犬がのそのそ
....
ずっとずっと まわりで
小さな音が鳴り止まない
バスから降りて バスに乗る
またバスから降りて またバスに乗る
いつのまにか隣に
歌がふたつ 座っている
小さな支えを失っ ....
君は僕を
まだ待たせる気なんだね
今まで20年も待っていたのに
更にあと30分も
博士。あなたがあちらに行って何年になるのでしょう、
数えてもしかたないけれど。
あれから、人間は全く進歩しておりませんが、
技術は立派に進歩しております。
治るようになった病がたくさんあり ....
つちのかたまり
きのかたまり
一つ一つ刃を入れて
ぬのをまきつけてひとをつくる
ななだんかざりや
さんだんかざり
硝子のなかのふたりきり
いちまさんはひとりきり
ほそいまなざし
....
それにつけても おやつは
フランシスは、口に運ぶと クルンと自分の体を抱えた
ひとりっきりの台所で
「今日も遅くなるから」のメモを見つめながら
いつも通り
....
きみにとってぼくがそうであったように
ぼくらにひとつの指針が ....
君の化石を
掘り起こして
眺めてみる
化石が
語りかけてくる記憶は
良かった思い出だけ
悪い思い出は
時が洗い流してしまったのか
角が取れ
丸くなった化石
化石は
生 ....
風まじりの雨模様に海はのんびりひろがる
はてもなくさわがしい世間をのがれて
ぬれた花崗岩に足をすべらせおもしろがる
生きてきたそれぞれの体型に目がなれて
だまっていてもあたたかい空気にふれ ....
今年の鮎う ちっこおてえ、
{引用= 夕方
小さい頃から毎年聞かされてきた
親父の秋を告げる声
ここ数年は}
空港工事で もう釣れんわいね
{引用= と続く
....
箸を持って近づいてみたら
じいちゃんの骨はほとんど残ってなかった
焼き時間を間違ったんだって
ママとママの姉弟は泣き崩れて
火葬場の人は床につくくらい頭を下げていて
あたしは用事のなくな ....
熱海といわれても
有名な温泉地という以外
実はなにも知らないのだった
このお題、絶対残るよなと思いつつ (※)
毎週書きつぶしていったけれどやはり残りつつあって
途方にくれながら飛行機で ....
おとついのおかあさんは にんげんだった
たまにようじを すこしわすれた
きのうのおかあさんは にわとりだった
さんぽあるいて ことばをわすれた
きょうのおかあさんは はとぽ ....
さよならをトントン捨て
今日までのトランプで山のようだ
順番どおりに配っても
さよならトランプが山のようだ
幸せだったね、幸せだったね
トランプの数のさよならが
数の合わない神経衰 ....
こうず まさみ
校長室の片隅に
二つ切り大の洋画が 掛かっている
その絵には画面いっぱいに
二頭の犬が 描かれている
描き手を信頼しているのか
寝そべっ ....
感想標本の不安夢から醒めると
巨大な甲虫が窓の外に駆け出す
君は羽毛に覆われた本を持って
電波塔の近くまで僕と散歩する
それらは全て解っていたことだ
椅子の上で男が訴えているのは
もう ....
歌うために作られた口が開きっぱなしだ
それもそうだろう
その目に映る多くの人達が
この街に生まれ来る子供達のために
何を残してゆけるのだろう
なんてぐらい難しそうな顔をしながら
....
「きんぎょ」
かすかに覚えている
ものごころついたとき洪水があって
まだ泥だらけの
でも復興しかけた町で{ルビ市=いち}がたって
母に手を引かれ買い出しに行った
長靴が泥でじゅぽじゅ ....
ガラス窓に黄色い熊
緑の幕ゆれる昼間
なんとおおきな図体だ
夏の青空にうかんだ
「全員参加で施設の点検
一人一人の五分間
始業前点検
終業前片付け復旧」
三ヵ月 ....
吹雪の中を歩いていると
灰色の世界に浮かぶのは
手が届くような白い太陽
北には日本海
南は山ばかり
ひょっこりと氷壁登頂家が
足元から現れたのは
本当にびっくりした
二人して
....
みえこが
おなかの赤ちゃんに話しかけ
仮の名を呼んでいる ....
ときどき風も停滞して、さ
いかにもなんか考えてるふうに
....
50億年前
宇宙が出来
45億年前
生物が誕生
ポンと叩かれ
ふっと生きはじめ
夢中で生きて
死んでも生きる為
生殖した
いつも疑っていた
誰がポンと叩いたか
それは解か ....
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