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1
毎年この日の夜には
上原君の星が話しかけてくるはずなのに
今年は何も聞こえてこなくて
見上げても光が揺れることもなく
なあ、もう忘れちゃうよ
と、小さく嘘をついてみた ....
「背側側頭窓」からチーズケーキがみえる。
その表面にはいくつものき孔があいている。
が、たべてもおいしいだけで、孔の味は発見できない。
バレッタを留めた君の髪の毛が
よそ見をしながら遊んだ日
うなじの模様に惹かれたら
心にも同じアザができてた
痛くはないけど少し恥ずかしい
こんな気持ちのままじゃ帰れない
いつまで待てるだろ ....
波間で
花びらを
持とうとする
すごい 忘却の速さで
水のように
貴方の部屋にいた
そのことのすべてを
分かろうとするけれど
とても ....
瞳の中を走るタイヤが
パンクしたのだと思う
つまづいたのはきっと
誰かのきらきらしている爪
僕は頬を引っ掻かれたような
何かに置いて行かれたような
フルーツパフェを食べられなかった
晴れ ....
雨の午後、僕は水を得た魚座の青年になる。
乾燥肌が和らぎ、滑らかな動きで筋トレをする。
391
桜
咲くな
まだ散るな
392
そうしたら今でもって
僕らは僕らに戻って
月はまた月になる
393
えん っていうのかな
すぐに ....
何かが終わる人も始まる人も
無条件に襲われた風を結んで
肩から掛ける鞄を持っている
初めて身体が側にあることを
ひとりになって分かるまでは
花の形が匂いを近付けて
だるまさんのように転んで ....
プレパラートと実験室
ハサミの形をしたコウモリが
逃げ出した。
そいつは
闇に馴染みながら、
すいすいと夜を裂いた。
研究者たちは
議論するばかりで
探し出そうとは
しなかった。
....
つづら坂のてっぺんが赤く燃えて
曲がり角のそれぞれに暗がりが生まれる
それがくねくねと蛇のように眼下の町へ
影法師が一組
手前の角の煙草屋の暗がりからあらわれて
穏やかな夕日にそっと目を ....
行きの道ばかり考えて来た
あなたが帰る時を知らないまま
白い手紙に色を混ぜる朝
私の気持ちが青空になる
会えないのに手を振って
目を合わせたような光は
先のことなんて照らさなかった
あ ....
熱を舐める
終電すぎ 汗のすべりが
愛の五月蝿さをおしえてくれる
置いていった本のように心が
かなしくひかる
こんなにも
あなたの
ばかげた
世のなかが晴れていた
ことばが ぼくの目のなかで
すばやく動いて よくは見えない
たいくつな愛のように夜がきてほしい
あなたの胸にいつしか溜 ....
雨のコンパスで描いた唄が
手の甲に乗せた鎖のように
水溜りを増やしていく
半径をどのくらいに広げても
踵に当たるメロディが好きだから
優しい言葉でなぞる世界に
いつの間に追い付けたのかな
....
柔らかい肌に触れる手は
心でカーテンを揺らして来て
余った風で話すような声が
誰かのファスナーを探そうとする
それはどこかで折れた翼を
支え切れない背中のワンピース
傷口を塞ぐことで消えて ....
私が初めて付けた口紅
まだ子供の頃だったのに
あれから少しも減っていなくて
お母さんどこへも連れて行って
貰えなかったのかな
確かお父さんが空港の免税店で
買って来てくれたもの
きっと大 ....
黒い布で顔を覆い隠した女が
まるみをおびた重いはらをかばいながら
前から、後ろから早足で通り過ぎる人々に
おびえるような足取りで市場を歩いている
ときおり女の腰のあたりにぶつかっては
”ベバ ....
僕は夜明けをあまり知らない
けれど夕暮れならたくさん知っている
薔薇いろから菫いろへとグラデーションする夕暮れ
金色の雲が炎えかがやく夕暮れ
さざ波のような雲が空を湖面にする夕暮れ
不吉 ....
31
そのときはじめて
おじいの顔つき変わって
おかえりいいうた気がした
32
なあんお前
それぐらいのボルト交換もでけへんのか
飯は喰ったんかいな
3 ....
渋谷・RUBYROOMのカウンターで
白ワインを飲む
今夜は嬉しいことがあったから
先月はここで
赤ワインを飲んだ
この店では月に一度
「SPIRIT」という朗読会が行われ
今夜 ....
空には嘘を付けない気がする
ネックレスの鎖が切れても
また繋ぐような水色の風に
出会ったことがあるから
人の間に生まれる絆も
ずっと信じて良いのかな
雲の切れ間に鏡を持っていて
互いを照 ....
1
そして今僕が見ているのは
雲から降ろされる光のはしご
指から零れ落ちる
2
あの日の雨は
もう降らないのかもしれない
もう降っているのかもしれない
....
愛と平等という
矛盾に気づいた深夜に
冷蔵庫は唸り出す
絶えることのない
沈黙にも似た説教に
何一つ解決策は見出せず
労働者は眠る
冷蔵庫の不眠不休
労働者の不平不満
実 ....
焼け焦げた影がひとかたまりついてくる
無敵の人
いきがかりの道なりは非論理が連なり
明日まで継がれた暗がりは八方塞がらず
もう疲れた帰ろうかと思いこもうとする
体力をゲー ....
白いブラウスの襟を
真っ直ぐに戻す時は
紙ひこうきみたいに
指先から離れて飛ぶ
空に少し傷跡を残す
翼が迷った代わりに
私の唇で閉じていく
思いも願いも込めて
音のない最終滑走 ....
躰のほとんどを
ねじれた袋におさめて
わたしたちは泣いていたね
はんぶん透けて
はんぶん凝ったような
美しさ 見えかけの 東京の月
造ったものを埋めようと思い
草原を掘っていたら
本物が出てきてしまった
その土偶に
隣のミヨちゃん
という名前をつけて
博物館に送った
ねぇミヨちゃん
僕は あといくつ
....
ある冬夜、僕を布団に残し、俺は家を飛び出した。
持っているなかで最も武骨なジャンパーを羽織って。
転校生は心の内壁に小さな刺青を持っている。
転校生は誰も、そんな秘密ゆえに転校してくる。
古着の青いネルシャツ、兄に黙って借りた記憶。
もちろん僕に兄はいないし、だけれど必ず返さなきゃ。
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