すべてのおすすめ
表札を掲げるのは
自己確立のためと
現在では思われている
だから地球上の
どこに表札を掲げても構わない
流木の表面に掲げても
氷山の軒下に掲げても
番傘の柄に巻き付けても良い ....
夜
知らない住宅街を
自転車で走っていたら
なんだか怖くて
気がついたら
みんなが家の前に座っていて
ああ困ったな
困ったな
そう思いながら
わたしはペダルをこぎ続けて
前から
....
ひどくどうでもいいものが僕のもとに返却された
「僕は、こんなにゴミみたいなものを貸していたんだ…」
「やっぱり気づいてなかったんだね?」
二人とも、肩の荷が下りて
世界が透明になった
あ ....
背負うものが
不確かなものなら
その重さは
自分で決めていいらしい
うちあけることは、むつかしい
しろながすくじらが
{ルビ吼=ほ}えるとき
わたしは
ちいさく「え」と鳴く
しろつめくさが
幸せを茂らせるとき
わたしは
亡霊とかけ落ちする
....
はかりしれないほど
スィートな加速度で
ぼくたちは走っていたので
日々の円周ばかりを、何十回とまわり
あしたの記憶だけ
どこかに置いてきてしまった
クラクションが、鳴ってる
....
改04.05.16
原爆が落ちていらい
腹が立ってならない
土の色をした指が嘆く
野菜クズを畠に蒔いてヒマをつぶす晩秋
巫山戯 ....
囲みを破って
無体な輩が
やって来るので
怖くなり
横丁に逃げた
横丁は
猿の群に占拠され
ご隠居さんは
ズダズダに引き裂かれ
食われて ....
そこから先には進めないときがある
そのたびに思い出す風景があって
背中の方から温もりを感じながらも
とても不安そうな少年の瞳に
問いかけられた言葉
飲み込めないまま
風にも ....
はっぱをめくればなめくじ
みんなにきらわれて
しおをまかれたりする
おまえなめくじ
うまれてからずっと
からだじゅうでないている
おれだっておなじ
みんなにきらわれて ....
仕事人は夜、
瞼のうらで明日の仕事をしている
目をこすると
蛙が鳴いているような
胸がすく音がして
ただ、流れる雫は軟らかい
五月雨ー、それは光沢のある色。
雨
降るのかしら。
今
先のことなどわからないから
ただ ありのままを見つめる
内側で降る
血の流れが
どうしようもなく
わたしを形作り
{ルビ廻=めぐ}る
こんなにも
....
「まな板給夫のいる」は高架線下の天使と賭けをする。
手札の伏せてあるカウンターが震える。頭上に
ぶら下がっていた彼女の戦利品の数々。
その一つ、オレゴンの絵には
黄色のテント内、
突き出した ....
何度目かの電話の奥で
口笛が聞こえた気がする
鼻歌だったのかもしれないけれど
もう遠くて追いつけない
近づいてくる海岸線からは、遠くは見えない
近くなら、というとそうでもない
指先はど ....
街は停電していた。僕等は街外れのバッティングセンターへ向かっていた。
夜だというのに「竜巻が渦巻いているせいだ」という友人はヤンキーで
彼が走らせる車は、真っ暗な交差点に渦巻くいくつかのそれをか ....
この世は河であると教える坊主を川へ叩き込んでやったら
喜んで魚になったので悲鳴を上げて倒れた僕は
いつの間にか全身にバターを塗られ
毛並みのいいマルチーズが耳打ちする
「それは百年金縛りだ ....
郵便受けに溜まった新聞が日焼けしていた
古い日付は、風に晒されて
更に風化した遠いあなたの
背中に張り付いて
帰ってこない のに
201号室の、窓から入る西日を受けながら
忘れて ....
アルマジロな午後。
僕は転がる。
あるまじき僕は正午。
ごろごろとアルマジロと転がり、
ヒジキを食べている。
ヒジキはあるまじき美味しさで、
もぐもぐとアル ....
濡れた鉄塔を越えて
そのままの振動で
ゆがんだステンドグラスを割らないように命は膨張する
このふしだらを運転する技師は
都市にいる幼児のみに聞こえる歌を
アドリブで歌う。
朝刊を配 ....
気が付けば、漂流している目覚め
手を伸ばすその先
十センチメートルで
落ちるばかりになっていて
とりあえずここに、漂っている
どうやら
世界の端は滝になっているらしい
落ちてしま ....
夜闇。暗さに光線、たとえばただアスファルトの隆起したひとかけらを照らしている。点は(このままだよ)とささやき、いつしか光の粉をまいて。すふすふと積もり、埃のようにけむりながら少 ....
ギンズバーグ
の となりの背表紙がのけぞっている
店員は面一にもどした
週間誌、参考書、就職コーナー、コミックと周回する ふと気になって
ギンズバーグ
の となりは暗く抜かれている
ローレ ....
ため息をつきながら
君が死体の話をする
少し笑ってる
ホルマリン漬けの臀部はね
鳥のささ身の紅茶煮にそっくりなんだよ
そっか
今夜作ってみようかな
二人で食べよう
大丈夫まだ生きてる
....
わたしの恋人は
痩せていて
あまり食べないの
お酒と
煙草と
お刺身が好き
映画と
音楽と
こどもと
カメが好き
たぶん
わたしのことも好き
初潮という言葉と海とのつながりとかを
ぼんやりと考えていた頃に
おまえの家は紙の家だとからかわれ
私は学校へ行けなくなった
私は紙のにおいが好きだった
鼻をかむ時のティッシュのに ....
やがて、それはゆっくりと始まる
誰も気付かない視点の高さ
から、夜は上昇していく
もう僕らは沈み込んでいる歩幅
もがくよりも深く落ち着いたリズム
呼吸はあちこちで燻っていて
平面に広げ ....
いつからか
{ルビ誰彼=たれかれ}のすがたもなき その水
その{ルビ夜=よ}のもとの {ルビ黝=あおぐろ}き{ルビ躯=むくろ}
うごかずうごく
四肢の{ルビ肉=しし}
― … ヒツギには ....
ゆびさきを闇にひたして
子宮の中に帰ろうとこころみる
背の高いくすのきがわらい
絡まる根でわたしをとらえた
蝉のねごとが聞こえる
綿毛のくしゃみが聞こえる
トマトの放出する酸素が見える ....
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で
蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
その街に風は吹きますか
手紙のようにそっと遠くから
坂道で靴は鳴りますか
生みたての音楽のように
どれだけの名前を覚えていますか
カタカナの響きに変わっても
この哀しみは君 ....
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