プルーンな夜
ワタナbシンゴ

夜の品川の端っこから、東京タワーが見える。
覗き込んだビルとビルの隙間に、ぽっかりと、
なんだか場違いな感じ。背高のっぽが窮屈そ
うに、泣き笑い顔で困っている。春の夜の棘
はやわらかいきみの匂いを覚えてる。嘘のよ
うなほんとの声で、大げさでいながら躊躇い
がちな顔で、ぼくは名を知らぬきみに何度で
も出会いたい。限られたじかんの多弁に臆病
になったのはいつ以来だろう。触れられない
距離をそっと掬って、語り切れない言葉を沈
黙に託した。あなたの前では、ただ抱きしめ
る、と比喩を燃やす蛮勇が欲しい。桜と共に
来るつもりが、待ちきれず訪れた夜から、あ
なたの暮らしが幸せであることを願ってプル
ーンを探したり、つまりはそういうことにぼ
くは救われているのです。



自由詩 プルーンな夜 Copyright ワタナbシンゴ 2020-03-05 00:27:21
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