俺はどうやら異形の者になってしまったようだ
俺の不具の左腕は
不自然なかたちで捻れている
その苦痛とともに 無理矢理
腕を正常な位置に戻そうとしていると
俺は俺の異形を否応なく感じざるを ....
ただ広いだけの野に
一つの観覧車が淋しく建っている
観覧車は時とともにゆっくりと回り
様々な風景を人に見せる
観覧車に乗り慣れた人は
見慣れた風景をまた見ることになるが
そうでない人にとっ ....
ただ広いだけの野に立たされて
私たちは呆然としている
野は広いだけで
本当に何もない
こんな場所で
何も持たされずに
何の約束もないままで
いったいどうしろと言うのだろう
私たちの戸惑 ....
舞い上がれ大空高く
透きとおった風となり
自由の天地を目指して
鼓動は久遠の鐘を鳴らし
晴れやかな未来図を描こう
詩の言葉というものは時代を映し出す、そのことは谷川俊太郎の詩を見るとよくわかる。よく知られているように、谷川俊太郎の第一詩集『二十億光年の孤独』は三好達治の序文を付して刊行された。現在長期入院中で資 ....
決まりきった一日が繰り返されるように
決まりきった生が繰り返される
そうして生の脚韻を踏みながら
人は少しずつ あるべき真理へと近づいてゆく
(2024年12月)
かすかな気体が母音をまねて
つつましく
遠くの空をながめる子
瞳に映る季節、また季節
繰り返される慈しみ
陽射し
向こう側へ手をふる
帰れないと知っても
魂は旅をするかしら
平行 ....
ずっとむかしの
波しぶきの化石を並べて
もう聞こえない声の数々は
糸を曳くように飛び交う
白く露出した骨は
もう痛みを感じないから
少しずつ折り取っていく
日記みたいな作業
遠 ....
昨年十一時に谷川俊太郎さんが亡くなった。個人的に喪失感のようなものはあまりなく、それよりもこれでいよいよ現代詩も危機的状況になったなという感じの方が強い。なぜなら、現代詩村が外部の世間一般にアピール ....
私は何者なのか
その疑問からまずは始まる
私は この世界のなかで奇矯な存在だった
ずっとそう思っていたが
実は世界そのものが奇矯であり
私はそこに迷いこんでしまっただけなのではないか
....
わたしのおじいちゃんは山が好き
山に入ってはいろいろ採ってくる
ハツタケマツタケイグチにヤマドリタケ
時にはマムシにキムシにハチノコも
一緒に山に行くと
おじいちゃんはよく木々の間に消え ....
街に雨が降っている
いくつかの記憶が断片のまま転がっている
僕は君に呼びかける
かえってくるものが自分の谺にすぎないと
知っていても
それは君がいなければ
生まれなかっ ....
笑いながら
泣きながら
ゆったりと話した時間
互いの未来図を広げ
幸せになることを誓った
貴女は私と同じことをしている
私は命を盾に
夫を何度も何度も脅した
仕舞いに、夫は疲れ果て、絶望した
それでも尚、愛して欲しいと望むのは
砂漠で歩き疲れた私を
ずっと背負って倒 ....
去年の十月十五日に自室で倒れた。夜中から朝までずっと起き上がろうとしたが身体が動かず、なんとか這いずり回ってトイレに行こうとするも出来ず、そのまま自室で大小漏らしてしまうという失態をやらかした。とに ....
冷たい雨の中
{ルビ真紅=しんく}の椿が凛と咲き
冬ざれた街かどを{ルビ細=ささ}やかに飾る
一輪挿しにしたら
殺伐とした部屋も和むだろう
虚無の庭に
僕らは佇む
灰色の日時計のかたわらに
でもこの場所は
光源のさだかでない光が
ぼんやりと漂っているだけだから
日時計は時を示すことができない
忘れない というクリシェを
....
何もかもがあるべきところにない夜
君は月の鳥になって訪れる
冷たく冴えた光を浴びて
その羽の光沢はほのかな虹色
君はうたう
はるかな過去からのように
はるかな未来からのように
その調 ....
{ルビ朧=おぼろ}に深まってゆく夜
鏡に映るのは諦めをつなぎ合う僕ら
幾重にも繰り返されたパラダイス・ロスト
進むほどに歪んでゆく羅針盤
僕らの無邪気の夢はとうに喰い尽くされた
誰かに ....
僕らは階段の話をした
かいだん、と言う
君の発音が好きだった
一日中、階段の話をして過ごした
街では日々
階段は増え続け
壊され続けたから
話が尽きることはなかった
このまま二 ....
調律をしをえたばかりの
おとぎばなしは
こぢんまりとした
こどもの耳の中で
ふたたび輝く
なまえのない宝石を
空にかざす
君がなまえをつけてくれ
ささくれたブランコに留まる
....
やまいだれ疒とは、面白い言葉だ。「疾病」など主に
病気に関する漢字に使われる部首のことだ。
いま、俺の脳内にやまいだれが垂れ下がっていて、脳
の底にぽたぽたと病の元を滴らせている。また、やま
....
約束を守れるならば行っていい
まな板の上の鯉ですわたくしは
信じると約束したから信じます
私という現象は何処から来て
何処に往くのでしょうか
月の女神に聞いても微笑むばかり
いま私は銀河を超えて
星巡りの歌をうたいます
唱名を行う時
ひとりの声に二人重なり
二人の声に
多くの声が重なっていくのが好きでした
男女混声の唱名は
本当に、とても美しく
空気を貫いて真っ直ぐに
宇宙にまで届いているという確信 ....
雨樋を解体する音
水球を続ける少年たち
耳の奥底にある
何もないところで
あからさまな私語は
途絶えていった
水飛沫の色彩に
少年の一人が目を瞑ると
黙祷のように
放課後は終 ....
君は淡いたそがれを纏って
窓にもたれていた
蜃気楼も虹も流星も
いつか共に見たその窓
その面影が
いまもこの部屋を染めている
君の言葉の記憶が きれいな水の雫のように
滴り落ちて 私 ....
{ルビ空=そら}っぽ {ルビ空=そら}っぽ
お空はどんな色?
あおい色ではない
涙色でもない
それは永遠の色
吸い込まれてしまいたい忘れじの色
ぽっ
空っぽ 空っぽ
お日さまは ....
闇路など辿らなくていい あなたには 優しい光が満ちて輝く
涙の夜に沈んでしまいました
何かを伝えようにも声がでません
銀盤の月だけが頬笑みをくれました
冷えた肩を抱き締めながら
暗い{ルビ闇路=やみじ}をたどります
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