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仮名の桜は星害によわい。もう少し適した土地に植われば善かったのだろうが、残念ながらこちらの星には、系の恒星となる日廻りによる明白とだんだら闇が存在する。明白のあいだには仮名桜は水を吸うことしかできず ....
唸りを上げる鉄塊よ
轟音を上げて泣け
窓にびっしりと憑依した
発話する羽蟲と
奴らを随え歩む詐欺師達の
ただ
憩いの熾火のために
燃やされた男の
一握の遺灰を
精密に組み上げた先 ....
生きているからこそ喉が渇く
生きているからこそ腹が減る
生きているからこそ寂しい
生きているからこそ腹が立つ
すべては生きているからこそ
死ねば
火葬場のけむりとな ....
I
インインと{ルビ頻=しき}り啼く蝉の声、
夏の樹が蝉の声を啼かせている。
頁の端から覗く一枚の古い写真、
少年の頬笑みに指が触れる。
本は閉じられたまま読まれていった……
....
聴きたい言葉があるから
言葉を選り分けがちだから
わたしのうたは
時々停まる
勝手気ままな振る舞いなのに
まわりは優しく熱してくれるから
溶けて、冷えて
溶けて、冷えて
わたし ....
話をすればそれらは
すべて白紙になる、例えば
真冬の薄暗い水面を航行してきた
一艘の空気自転車が
小さな港に着岸する
凍てつく畑を耕す幼いままの父や
瓶の底に落ちていく身体
擦り ....
煙りのなか、ただ どうしようもなく佇んでいる。
煙り、のなかに、ただ、どうしようもなく
灯りはある、そして機械がある。
機械的に機械するわたしは機械ではない。
....
顧客の正気を失わせろ!
弱ったところが狙い目だ!
欲望羨望焚き付けろ!
enogh じゃない、moreだ!
不安を煽れ!
要らないものを買わせろ!
古いものは捨てさせろ!
ま ....
砲口のまえで、
つねに張りつめている、
灰色のくもり空のした、
まなざしは玉結びのように、つねにかたく、
未開にもひとしい、山道を、
まるで履きなれない軍靴で、
踏みしめて、
ゆくように ....
土の中の箱の中に
しまい込められた
あの頃の未来の絵は
もうとっくに
古くさい世界で
そう
あなたはとっくに
幸せになってるはずだ
風の知らせで ....
忘れ物 に なったハンカチ
あわいもも色 うさぎを飼って
駅の向こうから来る
おんなの子を見て
つれていって
と、輪をかいた
石のむれをしずめた 海と
とおい空 かすれた ....
降りしきる砂に埋もれてゆく
さまざまな過去が現れては消え
羽のない水色の鳥は
ぼんやりとした想いの空をとびつづけた
ここが幻だとしても
今は見ているものが現実だった
砂に埋もれてゆくからだ ....
猛暑とよばれる森のなかで
わたしはいつしか
魚になった
あまりに場違いな
魚になった
だれも皆
自らの汗を拭うことに
気をとられ過ぎているから
辺りはいっそう
潮にま ....
潰れた店のカラッポが
熱風に歪むコンビニの
道向こうに広がっている
イートインにて独り
アイスコーヒーを啜りながら
そのガランドウ見ているじぶん
じぶんの虚ろがガラス越し
ビル一階一室の ....
夏の水の力を借りて
包丁を研ぐ
冷たい石の周りで
世界は沸騰し騒騒しい
蝉は
悲しみを
果てまで
追い詰めて鳴く
時折
人差し指で
刃に触れて確かめる
すり減りながら
鈍色 ....
○「有難い話」
猛暑の中
ふだんどおり仕事をしている人たちがいる
先ほどゴミ収集車がいつものように来た
こういう人たちのおかげで
世の中がまわっているのだ
有難い!
有難い!
○「 ....
月の猫の尾を追い掛けて
形而上の色を弄る
ご機嫌な足取り軽やかな
夢に顕れる可愛いghoul と繋ぐ掌
(片手には鋭利な……)
喪服の似合う
少女の唇は黝く
列なる扉の奥に棲む静謐な安息 ....
雨が降っている
雨だと思う
すべてが細くなる
無い言葉
はずれた草花
消えていく庭は
町工場のところで
途切れてしまった
ノートの中にある
わたしの罫線
罫線に隠している
....
虹色アゲハをご存知ですか
あなたの夏を
叶える蝶です
虹のたもとには
たどり着けない要領で
どこにも留まりません
その蝶は
伝説だとか
まぼろしだとか
ひとは気づ ....
○「田舎暮らしに欠かせないもの」
草刈り機
かゆみ止め
香典袋
朝夕のあいさつ
○「薬代」
薬を食べているような人たちが
いる
薬局で薬代を
4万5千円ぐらい払っている人がいた
....
人の心って
考えてわかるもんじゃない
考えれば考えるほど
不信がわいてくるものなのだ
結局
自分が信じるしかないのだ
わからなくても信じる
疑わしくても信じる
人の心って
....
それは、柔らかな貨幣だった
ともすれば解け崩れそうな輪郭を
丁寧な所作で一口大に切り分けては
どうとも表現のし難い、営みの味を転がして
手垢にまみれたそれを飲み下した
{引用=あなた ....
髪の後れ毛が
もやしのひげのように
蒸れた風とけっ託して
汗と貼りつく
ぽにーているならぬ
わたしのひとつ結びは
ねこのしっぽでありたい
脊髄のさきにあるまでの、感情
あな ....
月の夜だった。欠けるところのない、うつくしい月が、雲ひとつない空に、きらきらと輝いていた。また来てしまった。また、ぼくは、ここに来てしまった。もう、よそう、もう、よしてしまおう、と、何度も思ったのだ ....
○「有難い実家」
今度娘が
二人の孫と一匹の犬を連れてきて
10日もいると妹が笑う
実家に泊まれない人たちもいる中で
誠に有難い実家だ
○「中古車不正問題」
急に中古車が
事故車に ....
ついにわたしの頭から木こりは離れなかった
そこでわたしは木にいった
「切ってしまうぞ」と
しかしそれはわたしのもっともお気に入りの四季であり
秋だった
....
夏の日には祭りがありまとまった休日がある
夏はいつも遠い記憶を作る
だから夏とは愛であり
私はその中を生きる
かき氷でも食べて涼しくしよう
海辺や川辺でのんびりしよう
夏を壊さないで
完 ....
遠イ遠イ雪ノ山
降リル事ナゾ思ハズニ
タッタひとりデ ノボルノデス ト
誰モ ダーレモ
女ガひとりノボッテイルコトナゾ
知ラナイノデス ト
止ンデイタ雪ガマタ
サ ....
剥がれた分度器を
落ちている人のように
並べていくみたいに
拙い息継ぎが
街の柔らかいところに
終わっていくみたいに
コンビ、ニエン、スストアで
スストアで
淡い方の手を近づけ ....
○「ふれあいの旅」
千葉へは仲間とのふれあい
上高地へは自然とのふれあい
どちらも感謝感激の旅だった
○「ユーモア」
「どちらまで行かれたんですか」
とすれ違った山ガールが
可愛く尋 ....
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