カナリア
千波 一也


聴きたい言葉があるから
言葉を選り分けがちだから
わたしのうたは
時々停まる

勝手気ままな振る舞いなのに
まわりは優しく熱してくれるから
溶けて、冷えて
溶けて、冷えて
わたしはまがいのガラス細工
思い込みのガラス細工

気まぐれにうたっては歓ばれ
気まぐれに停まっては寄り添われ
見えないケージが
固まって
しまう

よほどの嘘も
そうして綺麗になる

この世に毒はありやなしや

明白すぎる解ゆえに
わたしはますます長けてゆく
さえずることに
やんわりと

この世に毒はありやなしや

蜜とよく似た色味を帯びて
カナリアはもう離れない
わたしの浅瀬に
静かに憩う

届きたい空があるから
届いてはいけない空があるから
わたしのうたは
時々停まる

見えないナイフが
優しく突きつけるまで
わたしの悲鳴は終わらない
始まらない、とも言える

都合の良すぎるケージのなかで
うたい慣れてしまった
代償に





自由詩 カナリア Copyright 千波 一也 2023-08-06 17:37:50
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