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戦争が終わらない
真夜中は
戦争を始めるため
回避するため
会議室で行われている
夜更け
戦争のための戦争は
繁華街に移行され
朝まで続く
眠らない街に
灰になって積もっ ....
わが家にも念願の街が出来た
これからは部屋の名前を
町名で呼ばなければならない
陽だまりヶ丘一丁目
そこに僕がいる
居間の窓際の辺りだ
二丁目から三丁目
キッチンが見える街まで ....
「ビバ、カリフォルニア!」
三つ指をついた仲居さんはニコリともせずに呟いた。
奥の廊下を茄子の一夜漬けが遠慮がちに通り過ぎる。
冬の窓は凍っているかのように静かに向こう側を映している。
....
昨夜、遺伝子と数回にわたって交合したけれど
最後まで、ぼくが触れたのは
ぼく自身の器官だけであったので、
結局のところ どんな言葉でも形容できない
感性や知性を、すべて破壊したい
....
フリーズ、
見たことのない、遠い地で
顔のない男がつぶやいて 直後に
先端が、わたしの中心を穿つ
貫かれた体内へと
ぬるい、分泌物の侵蝕が始まるのを
指折りかぞえるあいだ、ずっと ....
私は死におびえている
新宿アルコット 地下三階へ降りる階段で
伊勢丹ガールズのレストルームで
「緊急地震速報が流れたら伏せるなどの安全な体制をとってください」と
女の人の青白い声でアナウンスさ ....
死んだ後のことばかり
考えている
それでひ孫が救われるのなら
構わないけれど
変わらなければ
と心に決めて
決めているふりをしてる
自分が嫌い
昨日と違う空を見上げたら
昨 ....
真実に化粧をして
嘘のしみを隠す
わたし
みえない虚像の「顔」をして
日々を歩く
わたし
もう みえない「顔」に
馴れてしまって
虚像の世界を
生き語る ....
新じゃがは
つぶさずに
サラダにすると
美味いです
つぶしてしまうと
生まれたて特有の
水分が邪魔をして
ほくほくしません
だから大きく
コロコロとしたまま
サラダにすると ....
エレベーターが
捨てられていた
たくさんの
手向けの花を積んで
吹いている風には
少年の掌のように
静かな水分が含まれている
花を一輪
もらって帰り
小瓶に活 ....
自動販売機だけが明るく光る
夏でも冬でも
こんな山道でも、ちゃんと明るい
誰もいないのに、ちゃんと明るい
私が買わなくても、やっぱり明るい
ここの景色にはもう、自動販 ....
雲間から
虹の手が
世界にのびてくる
わたしは
君の手を
掴もうと
空に手をのばす
だけど
意地悪な風が
わたしの手を
かきけしていく
軈て
....
{引用=
ここに硝子の器があります
珈琲を、{ルビ淹=い}れました
それは「食器」になりました
水とメダカを、入れました
それは「水槽」になりました
百合を一輪、挿しました
....
春になったばかりの頃
白い帽子を追いかけて
春風の中を駆けて行った
草原の若い草からは
真新しい緑の匂い
南の方からは
温かい日差しがさして来る
空が青くて
眩しくて見れない
....
ゴツゴツ落ちつかないバランスの崩れた車
その中で聴く二十歳のためのロック
その青臭さが自分のものではなくなって久しい
十年前に書いた詩を読み返しながら
失ったもの表現できなくなったものを知 ....
くたびれた足を引きずって
いつもの夜道を帰ってきたら
祖母の部屋の窓はまっ暗で
もう明かりの灯らぬことに
今更ながら気がついた
玄関のドアを開いて
階段を上がり入った部屋の ....
美しさは
人見知りするのだろうか
いつもつつましい
声をかけられるまで
犬小屋でかくれんぼしている
驚きは
宇宙人なのだろうか
いつも未知との遭遇で
出会ったと思えば
突然消えて ....
赤い銀がみを
しわを広げて
羽織り
巻きつけてみたら
わたしはすべてが
チョコレートになった
はちみつのような夢
蜂の巣を探す君
探しつづけている
わたしは流しで
洗い物を ....
一枚の雨
窓しかない列車が
なくした足を探していた
わたしがいたら
遊園地がある
その先端の細っこいところ
かわいそうな叔父さんの観覧車は
とても鮫だらけなので
わたしはひとつひ ....
魚よりも自由に水の中を泳ぎまわりたくて
馬よりも自由に草原を駆け回りたくて
狂ったように吹き荒れる窓の外を眺めながら
ずっと煙草を吸っているよ
鳥が自由じゃないのは知ってるし
死ぬまで泳 ....
繋がって
また
諦めた
歯がゆさで
ワンマン電車が走っていく
わたしの
肯定を知りたい
たくさんの競争心を
おぼえたふりをしていたらしい
甘やかされている時間にはふと
だれ ....
ひとの気配に気付き上体を起こしてみると
逆光に髪の長いおんなの姿を認めた
それがあのひとの妻美佐子さんとの最初の出逢いだった
彼女について何かとあのひとから聞かされていたのと
私に用事があ ....
鉛筆の匂いをさせて
あなたは春になった
尖った芯が
しだいに丸くなって
やさしくなった
声、かもしれないものを
たくさんスケッチした
知ってる言葉も
知ら ....
家から少し歩くと公園がある
公園と言っても小さな広場にベンチがあるだけで
駅の側だし隣はパチンコ屋だし
おまけに向かいはコンビニがあってネオンがまぶしく
つまりは大変に騒々しい
気持 ....
蟻が十匹でアリがトウ
そうお伝えください
冬は好きですか
そうお伝えください
口元にご飯粒ついてますよ
そうお伝えくだ ....
陸上競技の大会で
入賞した
優勝ではなかったけど
おにぎりが
少し塩辛い気がした
母さんが少し
変わった気がした
僕も
晴れわたる空
というわけではなかったけれど
い ....
しっぽを空へ
ぴーんとのばして
ここにはいない人たちと
話していた
わたしたちには
そんな時代があった
ところがある日
しっぽをのばすどころか
しっぽを持たない
人に出会っ ....
{引用=*地下の風}啓蟄
三月の風が吹いている
この風は
地下の何処まで届くだろうか
春一番ともなれば
地下一階ぐらいまでは届くのか
台風の日
風とともに地下が
水浸しになってしま ....
沈丁花の、
高音域の匂いがした
夜半から降り出した雨に
気づくものはなく
ひたひたと地面に染み
羊水となって桜を産む
きっと
そこには寂しい幽霊がいる
咲いてしまっ ....
たとえば今日
寒い風に吹き晒されているとして
さらに明日は
寒い雨に凍えているかもしれない
それでも破れ傘を差して
ボトボト歩いていくだけだ
たとえば今日
温かい陽射しに抱きしめ ....
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