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こわくない
冬なので
こわくない
ビタミン剤あるから
ぜんぜんこわくない
花柄の靴したを
いつもばかにされても
構わないで履きつづけていた
ななちゃんは9歳だったのに
勇敢だ ....
腰ふる星ふる
猫が背伸びしてお迎えの時間
アスファルがキラキラと光る
夜の影がユラユラと揺れ
ぼんやりと町は水の中
今ね少しわかるよ
君が雨を好きだって言ったこと
摂理という美の魅力によって
自然は不思議という概念を創造した
ある石は固く曲がることはない
ある石は蒟蒻のように柔らかく曲がる
甘い蜜でしたたかに誘う花もあれば
容赦なく殺す毒を持つ ....
猫背の猫、
あたらしいグランドピアノ
その黒鍵よりくろいひかり
猫の、目の、奥がものがたる
誰も見たことのない、できない
猫の詩、
白鍵を選び歩く
猫の、足の、裏がかなでる
雪より白い ....
魚上氷
うおこおりをいづる
冷たい水底で
来る日も来る日も
あわぶくの羅列を眺めてきた
滞りがちな
私の中の遅い水は
妄想だけを鰓の内側に沈殿させた
待つのは慣れて ....
一と言う字を書いた
それはゴールテープ
真っ先にあなたが通り抜けて
一は消えた
東の果ての一
海と空の境界から
太陽が覗き一日をはじめるとき
あなたの舟が一の中へ消えて行く
....
太平洋の荒い波が
かつてひとつであった石さえも
みっつに分断させたのよ
小説家志望の女の子の戯言が
ここでなら
信憑性をもって
語りかけてくる
干潮時にだけ現れる
海の通路を渡り ....
夏がもこもこしている
海に砂漠がない
大雪の翌日
退院間近の幼い息子を迎えに行けるように
シャベルを握り、腰を据え、無心になって
門前に降りつもる雪の{ルビ塊=かたまり}を、掬って、投げた。
玄関から顔を出した、姉さん女房 ....
公園で母と子が手をつないで歌を歌っている
私は5歳の時
3ヶ月間入院生活を送っていた
当時の大学病院の小児病棟は
母親が付き添う様になっていた
私には3歳と生後5ヵ月の2人の妹がい ....
割れたガラスを見て永遠なんてないわと思うわたし
そんなんあたりまえやけ!
と、けとばしてみる
アナウンスが流れる
線路内に鹿が入り込んだため
列車は3分遅れて隣の駅を発車しました
その鹿はどうなったのだろう
寒いホームに
誰もが無言で
同じ方向をむいて並んでいる
....
妊婦の多い病院で父が死ぬ夢
音は雪に食べられてしまい
部屋は
かえって生きものの息づかいでみちている
台所の戸棚のなかで
じゃがいもの芽が伸びてゆく
張りつめた胸の皮膚のしたを
薄くなった血がめぐっている
....
言葉の針に意図を通すのは難しい
何を繕うでもなく
きれいなシシュウを夢見ては
チクリチクリと傷つける日々
《針子のトラ:2014年2月11日》
空もなく
風もなく
光もなく
雨も降らない
季節がない
そんなところに命があるのだろうか
あるよ。
声がした
家の建つ
ベタ基礎コンクリートで
固められた
土の中から
芽吹 ....
語弊があるような言い回しは避けて
誤解を生むような表現は消して
本当に伝えたいことだけを
傷つけないように
耳を傾けてもらえるように
心を開いてもらえるように
気分を損ねな ....
あなたはそれを
必然だと言う
わたしはそれを
偶然だと思いたい
あなたはそれを
どうしても運命にしたいらしい
わたしはそれが
無数の枝分かれの末端にしか見えない
この世界で ....
真冬の太陽がみえますか
季節外れは何処にでもやってくるもの
移り変わりを気にし過ぎてはいけません
星空は近いですね
朝がくれば部屋は暗く
引きこもりなら誰にも負けない自信
昨日誰かが笑 ....
ちいさな錯覚
のぞんだものはちいさな錯覚
祝福も花束も要らないちいさな錯覚
それだけで良かったのに
ありふれた水も飲み干せてしまうような
不安定な曇りの昼下がり
虚無の ....
挨拶したのに
ぼくを見て
顔を横にして
何もいわない人の
その一瞬が
ぼくのこころに
小さな傷を作る
返さない人の
こころのうちは
苦しくはないのだろうか
その人のことを
....
夕暮れの中で長い坂道を
ゆっくりと下っていく僕は
幽霊のように曖昧な輪郭で
揺りかごの記憶だけが頼りだ
草臥れた靴が愚痴をこぼすのを
僕は無言で見下ろしている
口を開け剥離した季節の断 ....
「ああ,嫌だ」
彼女は台所の隅でぬか床を愛撫しながら言う
手を入れるたびに 「さくっ,さくっ」と音がする
重みに耐えかねた雪が どさっと落ちる
たまの大雪くらいで大騒ぎできるほど平和だ
....
試食用だと思ってた
ちょうちょをまるくむすんだ
冬の下総台地の端に
小さな家一軒
剥き出しの枝と幹だけの
梨畑の中に
小さな家一軒
落葉高木の梨の樹
畑の樹は灌木のようで
海軍レーダーのように
針金が渡されている
白い季節 ....
雪が降った!
私の住む町で
こんなに雪が降り積もるのは
何年振りだろう
熱いコーヒーを淹れて
窓辺に立って外を眺める
まるで紙吹雪みたいに
ひらひらと空から落ちてくる
ひら ....
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