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空の蒼い日
乾いた独房に
ひとふさの春が投げこまれる
赤錆びた格子窓の向うから
透明な一枚の手によって
そこには誰も居ないので
やがて、壁の ....
びいどろの中に
浮かぶ泡
気泡があるのは
不良品なのか
値下げの札がつけてあった
かなしい音が
とこしえに
びいどろに
刻まれた
唐草文様
ふるさとの野辺に咲く
名も ....
僕は病んでる自分を疎ましく思ったり
でもいとおしくもある
診察券にはだいぶ慣れてきたし
人間て病んでて当たり前なのかも知れない
検査着に着替えて腹部CTをとる
さ ....
あ という間に時だけが経ってゆく
から、寝て起きるのに
生きるのが 駆けてゆく
思うことはたくさんあるのに
からだは痣跡だけをのこし
かさぶたあとはなかなか消え ず
甘ったるくし ....
朝の微睡みの中
腹に行儀良く座っている黒猫
薄く開けた眼の先には
彼女の瞳がある
夢と現うつつを行き来するうち
そのまま抜け出した僕の意識は
彼女の瞳の中に落下する
{画像=120316123953.png}
月の光が燦ざめく
まだ春浅き夜更けのこと
女が独りで死にました
誰にもみとられず
たった独りで息絶えて
時計の針は零時で止まったままに
....
小柄な人なら入ってしまうような
大きなコインロッカーを
開ける時
必ず怖くなる
屍体を隠しておくには
ちょうどいいと
どこからか
声が聞こえて
息をとめて
扉を開く
{引用 ....
おやすみなさい
わたしたち
しんだいしゃにのる
とおいどこかから
とおいどこかへ
たびだつため
ねむりのなか
たびがある
とまることなく
しんだいしゃはどこまでも ....
自転車のか細いペダルが
今日は博物館の
涼しい庭にまで届く
始まったばかりの夕暮れの中
まぶたの絵を描き終えて
少年は柔らかな繊維になる
丸くて小さい
カラフルなチョコレート
1つ1つ食べる度
これは?と訪ねる小さな子供
赤だよ
あか?
黄色だよ
きいろ?
橙だよ
だいだい?
....
ぼくは沸騰するスープである
ジャガイモが崩れていく
ぼくは真っ赤に茹で上がる毛蟹である
苦しさに前脚を伸ばして泡を吹く
底から熱せられていて
二重の蓋がかぶさる
重くてもちあがらないで ....
さよならと
手をふる時は
指と指の間を
すこし開けて
すきまを作る
かなしみが
そこから
上手に
逃げていくように
美しい水を
手にためる時は
指と指の間を
ぴたりと閉 ....
毒のない棘
蜜のない花
種のない実
は
罪ですか
咎のない嘘
咎がない故
咎でない
のは
悪なのか
情状酌量
情状酌量
情を量るにゃ
何が要る
....
割り切っている
良くも悪くも割り切るのが早い
僕は
公式なんかすっ飛ばし
一か八かの
答えだけ弾き出す
便利な簡易計算機です
愛してました
哀しみました
落ち込みました
....
たとえば塵のように
グラスの中で
わたしの怒りの澱が
舞っては沈む
気泡の中にそれぞれの
口に出しかけてやめた言葉を
閉じ込めているのが
足の速い風味に伝わる
ガラスのように澄 ....
新しい、新しい、と未来ばかりに手を伸ばし
追えば追うほど、幸いの虹は逃げてゆく
{ルビ古=いにしえ}の魂の形象を宿すものこそ
今・ここに新しい
古の魂をそっと胸に納め
自ら ....
君に捧げた花束が枯れた頃
約束した季節の巡りがやって来る頃
君の筆跡が薄れてくる頃
僕の影ばかりが遠くに伸びて
ぼんやりとした輪郭のままに生きてゆく
もう一度問い ....
ビーフシチューのネジが外れた
あっけなくばらばらになった
あんなに美味しかったのに
いろいろなパーツに分かれて
味もわからなくなってしまった
大切なものはいつか壊れる、なんて
....
ママの手は
てんごくのにおいがすると
五つの子が
うっとりとして
わたしの手を離さない
てんごくも
じごくも
絵本のなかに
出てきたね
てんごくに
匂いがあるなんて
知ら ....
トンネルの途中でせんせいが朝が来たよと言った
どこに来たのかなんてこわくて訊けなかったよ
それよりもiPodの電池が切れそうでおそろしいのです
地上のあの子の爆発がおさまるまでもつだろう ....
桜の木は
こっそりとばんざいをしている
みなが不安がる空いっぱいに
枝を伸ばして
切り裂いて くうを
咲いてやる
桜はきっと
その命を燃やすのだろう
私はまたすきになる
桜の花を ....
小学生の弟が
怒って泣きながら帰ってきた
友達と喧嘩して
自分のものを壊されたらしい
そんなことで…
って呆れた顔で彼を見ていたけど
そういえば
私は最近
泣くほど ....
12色のビー玉が入った瓶を
逆さに持って
机にこん、と落ちた一つは金色の
きらり、と光る玉でした
もし、空の上に
あなたを主役にした作家がいるなら
筋書きの無い物語を
....
魔法が解ける言葉 ソツギョウ #poem24
惚れた女の夢占いは「アンタ卒業したら死ぬ」 #poem24
校長の悪趣味な桜の木を切った #poem24
おっぱいを卒 ....
切り立った崖の上で咲いている
スミレのために
俺は立ち上がった
国境で銃を構えて365日
誰も来ない
守るべきものは何一つなく
攻撃することばかり
はらわたの命令にしたがって
海だ ....
えいえんの空間のなかのこの場所
むげんの時間のなかのこの時
この時 この場所に
こうして二人でいるということは
なんという驚きだろう
ぼくたちふたり
格別話すこともないけれど
ぼ ....
家を出る時に
ちらほらと
降り出した雪が
そう時間をおかないうちに
吹雪いてきた
三月もなかばだというのに
フロントガラスに
積もってゆく雪を
ワイパーでどける
ラジオか ....
〇さっき
甲板でその花は無理やり咲いていた、それを、わたしはみていて、本当に生きていたいのだなあ、と、潮風やしぶきや嵐にさらされても、ひとりぼっちでも、咲くんだなあ、それを、わたしはみつけることがで ....
夢見ることが
ちょっと億劫なのです
ピアノをポロんと弾くように
言葉がこぼれます
僕を待っているものがなんであろうと
きっと仲良くなれます
暦の明日に色 ....
てのひらをぱっと開いたら
ああ、なんだか少しさびしくなったみたいだ
たくさんのかわいいものや
泣けるくらいのおいしいもの
ああ、これらのものを
今でもきっと想ってるん ....
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