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春はたまごの眠り
たまごの中でまどろみながら
イースターエッグの夢を見ている
{ルビ復活祭=イースター}の朝が来たら
ウサギが隠したたまごを
子どもたちが探しに行くよ
春になったら ....
母ちゃんと旅に出る
鞄に歯ブラシ、着替え、切符と
最後にわくわくを詰めて チャックを閉める
朝一番のバスに乗り込んだ
母ちゃんと座席に並んですわる
乗り物酔いの薬あるよ
切符は持ったか ....
わたしのなかで
剥がれおちたなにか
そのなかにある
あかいかたまりのなかの
あかいわたし
剥がれ落ちたわた ....
学園都市線の高架下
灰色の橋脚に二羽の鳩が仲睦まじく
寄り添ってはキスをして
激しく身をよじってはまたキスをして
やがては重なり 羽ばたきながら
気の早い春が固い雪を緩め
茶色く水っぽ ....
父が潜水艦を買ってきた
またこんな大きなもの買って
と母が愚痴をこぼす
兄は鴨居の下で自分の腕を触っている
犬は昨日、何も食べなかった
きみを
たいせつにされていない時間をくべて
かなしい町にしよう
はじまりしかない町
わたしが保証されるほど
糸が切れていくようなので
まちがったままでいいのです、
す ....
橋の上から 川を見つめていると
川の水音がザァァァッとして
風は音に染まり
ますます
澄んでゆく悪意の無い視線
そんなに見つめないで、冷める風光の翳り
(あの遠さの)
命の万 ....
赤ちゃんは
眼が見えるようになると
まず
人の顔を認識するらしい
丸の中にふたつの小さな丸があったら
それだけで顔だとして
笑いかけるように
出来ているらしい
そうすることで
世界は ....
やんわりと
はるのかぜが
わたしをことわる
ほおをかすめ
しめったかんしょくを
のこして
あのひとは
だれだったのだろう
わたしがふれた
はるのかぜは
....
吸い込まれていくその先は
さいぼうの隠れ家
手を振る、手をふるう
ぼたんになる、頃になる
おや、もうあんなにも遠くに
浸透してしまった窓のつらなり
わたしは遅れた足取りで
ひとつ、ふたつ ....
したい何かを数えていくほど
したい何かが見えなくなる
まるで
皮を剥ぐように
剥いで剥い ....
ゆっくりとした花の先端から
二人で汽船に乗る
生き物の物真似をして過ごす
生きていて良かった、と時々思い
絵葉書の側で時々笑う
古い友達から
手紙が届いた
郵便事情の遅れで
32年ぶりに届いたのだ
郵便屋さんが
汚れた手で
すまなそうに制帽のつばを下げた
ひらいてみると
まるで読めなかった
ハングルは雪の ....
太陽を食べながら
冬晴れの冷気を泳いで行く
空に笑いかけて
わたしは噴水のように歌っている
土地っ子のヒヨドリも
旅行者のツグミも
わたしとともに歌っている
白樺も我を失うほどだ
....
{引用=根底から
ひかりがすべり落ちている
ぐるりと結わえたひとつなぎのくさりが
少しずつ希薄になってきている
そこが温かいと机に伏しておもう
おもう?
うなずく
好きな ....
1
白く熱い道を
白いカッターシャツの高校生が
自転車でくる
7年ぶりに会った息子、きのうのこと
美しく花開いたのっぽのあの子
その道を今日も彷徨えば
また出逢った有り難さ
足 ....
白菜68円だったからさー
怒髪の女房に蹴り出されちゃって
憔悴とコンビニ弁当かこつ弟にも鍋いいじゃないと
思ったわけよ
一族のレプラみたいな私でも一応お姉ちゃんじゃん?
て呼ばれたこと一度も ....
いつだって ゆうやけこやけが聞こえるまで
遊んで僕ら 走って帰る
足りないものだらけで
ほしいものだらけだったけれど
野球選手にだって
スパイにだって
ヒーローにだってなれた
....
家の前にバス停をつくった
路線バスが一台通過した
乗客はすべてペンギン、もしくは
ペンギンの姿形をした他の何かだった
虹の下をくぐって行った
忘れ去っていく言葉よりも
あなたのいのちの清さにふれて瞼が閉じる
いつまでも文字にならない
あなたの悲しげで透明な息づかい
反復するあなたの鼓動が
休もうとしている風を揺るがす
あ ....
はるは
すぐそこまで
きています
ほらそこの
まがりかどを
まがったら
はなたばをてに
りょうてをひろげて
まっている
かがやくような
えがおをたたえて
....
雨が降っているのかしら、と
君がつぶやく
君のつぶやきは
答えを求めている時と
そうでない時があるので
それを聞き分けるのが
とても微妙であるけれど
肝心なのは
語尾のニュアンスで ....
降り続く白い冬
いまはただ
うつむいた雪が
降り積もってゆく
脊髄が 錆びついてくるのを感じる
骨が膠着し 何も言わなくなると
ますます冬は
冷たくよそよそしくなる
寒さが喉で固ま ....
からからからと
風は吹いて
真っ青な空に
よどんだ雲
冬のにおいに
春の予感もまじっている
さむいなあ
さむいな
からっぽだな
からっぽだ
からから
からと
風は吹いて ....
僕の目指す
ドラミングは
どっしりとしたリズム
それでいて
軽やかに転がっている
隙間に ぴたっ とはまった
かと思えば
メロディーの上で踊っている
ビートを刻 ....
容疑者の写真がニュースに流れている
月が北東に隠れようとしている
あれは北西なのかも知れない
月が容疑者のように
どちらの方角にも気配を撒いている
三日月ぐらいの形を見つ ....
不思議
深く眠りながら
果てしなく醒めている心地
見えない舟が 横たわる僕を乗せて
透きとおる彼方へと 漂ってゆくよ
夜は青く
あえかな香りが僕を包む
この流れのほとりには 何処まで ....
同級生がまた一人、先に飛び込んだ
いろいろあったものね
今となっては想像でしかないけれど
今年で四十五歳
空っぽの四十五歳
ひとりで生きられる
生きられない
それとも、ひとりで生きざるを得ない
わたしってどれなんだろうね
※
無責任ってわけじゃないけど
ちょうど
満員電車のなかで誰かに寄り ....
ためしに握ってみて
けっこう冷たいでしょ
手が冷たい女は
心が暖かいなんて嘘
かじかんだ指が
しだいにほどけていく
甘いアイスバー
口に入れて溶かすみたいに
たくさん舐めてね
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