すべてのおすすめ
まだボケる余力がある
わたしはわたしの中に
夜を溜める
そしてその夜を醸してゆく
深くなるように
やわらかくなるように
わたしはわたしの身体に
花を鳥を
風を月を沁みこませる
わたしの中の夜が
やさし ....
前の家のばあさんが死んでしまった
腰より低く背を曲げた八十いくつのばあさんだ
息子夫婦は遠くに住んで
干からびたみたいな平屋に一人で住んでいたが
隣近所に迷惑のかからないように
死んだら近親 ....
梅雨のぬるい日日
あたまが豆腐になっている
天気予報が世間並みに外れたので
好天のそとに出てみた
道を歩いていてさて
右に曲がるか左に曲がるか
人生はまるでロシアンルーレット
きょう ....
すてきな溝があったので
かたほうの耳をそこにあずける
夏草は風にこすれ
虫たちが{ルビ清=さや}かな羽音をたてる
日の光のなかですべては
ひとしく ....
目覚めても
夢が続くのか
岩穴に
風が吸いこまれていく
のぞく眼に
洞窟の奥でうつむく子どもが映る
近づけば
幼いままのぼくだ
小さいからだを
剃刀の風が
音を立てて
通 ....
辺りは静かで仄暗い
細かな気泡としなやかな水草だけが
照明の光を蓄えて揺れ動く
水槽の中を泳ぐアロワナは
夏の夜行列車に似ている
いつまでも眠れず、読書も捗らなかった
車窓に触れたゆび ....
簡単なものをつくる
それがほんとうはむずかしいのよ
そんな風に言いながらつくる
おいしい?
素早くきいてみる
返事をまたない
からっぽになっていたら
泡であらう
ぜんぶあら ....
開いて
閉じて
開き直る
胸のちょうつがいを
ギシギシ言わせて
自分の扉を開け放つ
隅から隅までよく見てみやがれと
立ち塞がった戸口の後ろで
気弱な本体が震えている
....
投げキッス横取りされている
ある日クローゼットを開けると
床の上に散らばったネクタイの塊が
視界に飛び込んできた
どうしたものか…?と一瞬迷ったが、
とりあえずそのまま扉を閉めた
数日経って再びクローゼットを開ける ....
冬の到来を告げる鐘の音が、枯れ木の山に木霊する。
一日の仕事を終えてヒュッテに戻った老人が、冬支度に勤しむ。
老人は冬が大好きだ。ことにこの雪山においては。
誰も訪れず、誰とも喋らず、ゆった ....
はなかざりを編んでみたかった
いまはただ、そう思う
ガラス箱のような草のうえで
僕は声を持たない子ども
冷たい妹の胸に耳を当てて
見上げた空には白い斑が散っている
だれか、あの青いガラ ....
梅雨に入ってやっと国が心に添ってきた
木の葉にも花花にもしずくが
わたしの心と同じように
窓ガラスにもほら
頬に伝うのはこれは雨
なみだじゃないよとやっと言える
空のあなたにいまこそ笑 ....
踏切の横の空き地は草ぼうぼう
傾いた陽光が
影と日なたに草はらを分ける
通り抜けるものの風圧と
しつこい音の点滅にせかされ
ひとあし 踏み出そうとする
幼時の一瞬に接続しそうな時間の震 ....
耳のなかに
あらぶる海波が音をたてて打ちよせる
波うちぎわがあって
すぐにきえる影をつくって
雲の列車がゆく
武器をにぎりしめている
ビルのうえには
どこにも ....
それから、ぼくたちは
かくれんぼをした
十数えて目を開けて
探したけれどきみはいなくて
それなのに、例えば
ぼくの腰近くまで伸びた草だとか
時折何かがはねているせせらぎとか
どれ ....
Aカップの拇印
しずかな つばさの抑揚に
呼吸を あわしながら歩きます
しろさの きわだつ蝶を
追うとき わたしの 肩甲骨も
空を感じてました
「おたんぽぽしてるの
ふうてん とばそ」
....
あんパンを頬張る
午睡のなかでぼくは
とうめいな壁になっていた
どこか遠いところから
木魚の澄んだ響き
井戸の水に棲むたくさんの微生物
午睡から醒めてぼ ....
なんだかわからない(イチモツ)を持ち、
浮かない顔で、うす暗い町を漂っている。
病のような、玉のような、見えないもの―
コイツを断ち切れたら、どんなに{ルビ晴々晴々=せいせいはればれ}
....
いちごとたまごサンドの具
いちご1パックを買い
5、6個出してセロファンを戻し
3ドア冷蔵庫最下段の野菜室に入れた
2、3時間後
冷凍庫を挟んだ最上段の冷蔵室が
いちごの香りでいっぱ ....
目が、後ろから、僕を視ている。
空気に溶けた、透き通った目
の
声がする
(負けないで…)
なんでこんなにもじんわり
ハートに滲み入るのだろう
(どくり…どくり…どくり…) ....
風は雲を押し流す
雲の願いは
移動すること
あるいは変異
低い雲は
厚く
光を遮って
高度を増すにつれ
透けて
かすれて
雲は迷いだろうか
それとも
願い なの ....
そよいでみるか
みどりのさくら
みじかいはるに
もやしてみるか
みえないものの
たゆたうながれ
みえるようにと
そよいでみるか
そ ....
ゆくすえは
どこまで見まもることが
できるのだろう
吃音のことで
それほど悩んでいたなんて
知らなかったけれど
親は子の悩みを
まるごと肩代わりすることはできないし
してあげたいけ ....
生まれてからぼくは
姿のあるものに名札をつけてきた
手に触れるものや 目に見えるもの
目に見えない小さなものにも
ぼくの周りの森羅 ....
ストーカーじゃない あれはFBI
雨が車窓をたたいています
だから明日そちらは雨でしょう
月曜の深い夜のさびしさに
ぼくは子供の頃を思い出します
てるてる坊主ゆれています
灰の心が雨にたたかれています
....
零れる光の碧(みどり)の中を
お散歩するわたしは
待っていない
もう、
不安や警戒とは
距離を置いたのだ
「森林浴の効能」なんて詩
書いたっけ
....
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